カクバリズムから7インチ・シングルを出したポニーのヒサミツが語る大切な6枚のレコード
David Bowie
『Heroes』(1977年)
「音楽的な影響はないけどとにかくカッコよくて大好き」
――想定外の1枚ですね。
「いや、音楽的には全然影響されていないと思います(笑)。すごい聴いていたんですよ。でも、とにかくアイドルとして「カッコいい!」って対象なんです。ハマったのは大学の頃なんですけど、人となりもカッコいいし、姿もカッコいいし。何やってもカッコいいし、どれ聴いてもカッコいい…って感じでずっと大好きなアーティスト。でも、でも、全然影響受けていない(笑)。少なくとも自覚はないですね」
――まあ、強いて言えば、ボウイはこのアルバム前後がベルリン録音をしていた時代。生まれた土地を離れて憧れの場所で制作した作品という意味では、ロブ・ノークスやリトル・フィートと共通しているかもしれないですね。
「ああ、なるほど。そうかも。ボウイって毎回作品を通して制作の自由さを伝えてくれますよね。越境していろんなことをやったりもするけれど、この人が歌うと全部デヴィッド・ボウイになっちゃう、という。あと、ルー・リードにもそういう感じはあるかもしれないですね」
――いわゆる、ロック史に残るような有名アーティストの名盤の類も割と聴いているのですか?
「いや、実はそうでもないんです。僕、ローリング・ストーンズとかあまりちゃんと聴いてなくて。曲単位では知っててもアルバムとしてはなぜか聴かずに今日まで来てしまったという。まあ、今はApple Musicとかで簡単に聴けるようになったんで、そろそろ何かのきっかけに聴いてみたいなとは思っています」
David Bowie「Heroes」
Hoagy Carmichael & Orchestra
「Hong Kong Blues / How Little We Know」
「SP盤は最近は蓄音機でちゃんと聴いています」
――20世紀初頭に活躍したアメリカのジャズ作曲家で、この曲は細野さんやマーティン・デニーもカヴァーした代表曲ですね。78回転のSP盤ですが、家ではどういうシステムで聴いているのですか?
「最近ようやく蓄音機を買って。それまでは78回転も聴けるVestaxのターンテーブルで聴いていました。盤自体は『ノアルイズ・レコード』で買ったり、オークションをチェックしたりですね」
――SP盤を聴くようになったきっかけは?
「やっぱり細野さんのラジオ番組です。あと、岡田崇さんがメチャメチャ詳しいので、そういう方々を通じて、ですね。蓄音機で聴くと、ホーンの入り方とか楽器の鳴り方とか、音の前後の関係とかが本当によくわかるんですよ。あと、録音当時の空気がそのままパッキングされているのも魅力ですね。そこで演奏しているのを聴いているような感覚になるんですよね……ワン・マイクでの録音とか、一度やってみたいですね」
――SP盤は盤のラベルとか外袋のデザインも魅力的ですよね。レーベル名のロゴがあしらわれていて、ちゃんと文字情報も載っていて。
「そうなんですよ。そこも好きなんですよ。そこでデザインが完結しているし。ここにしか情報に入れられるところがないですからね。そういうところも面白いなって思います。最近は昔の日本のSP盤も買ったりしています。海外の地名が歌の中に入っている曲……ハワイ歌謡みたいなのが好きなんです。「ハワイ航空便」(宇佐美清)みたいな曲です。」
――まだ見ぬ土地への憧れを想像で夢見て歌う感覚ですね。
「そうです。想像力ありきの。ただ、僕、あまり歌詞には思い入れというかこだわりがなくて。フィクションで音に合うものを歌詞としてつける…って感じですね。でも、いつか細野さんのトロピカル三部作みたいな作品を作ってみたいと思っていて。今、少しずつそういう空想で未知の国を考えるような曲も作っています」
Hoagy Carmichael & Orchestra
「Hong Kong Blues」
――さて、「羊を盗め」に続いては、まもなくリリースされるムーンライダーズのトリビュート・アルバム『BRIGHT YOUNG MOONLIT KNIGHTS -We Can’t Live Without a Rose- MOONRIDERS TRIBUTE ALBUM』にも「犬にインタビュー」で参加しています。「スカーレットの誓い」に続くライダーズ・カヴァーですが、前田さんにとってのライダーズはどういう存在ですか。
「ムーンライダーズは割とずっと聴いていて。アルバムごとの多彩性みたいなところでもすごく楽しめるし、メンバーそれぞれの個性と魅力がちゃんとあって……それこそビートルズの『ホワイト・アルバム』みたいなところもありますよね。一番好きなアルバムは……まあ、『火の玉ボーイ』はもちろん好きなんですけど、『アニマル・インデックス』『アマチュア・アカデミー』あたりは突き抜けてていいですよね。『マニア・マニエラ』って自分にはない感じなのが逆に面白いです。メンバーだと……声はかしぶち哲郎さん(「スカーレットの誓い」の作者でもある)が好きですね」
――ポップスとしてのカントリーに、若い世代の目線からどう現代の音楽の息吹を吹き込んでいくか、というところにさりげなく挑んでいるのがポニーのヒサミツだと思っているのですが、音楽家としての野望、指針などはどういうところにありますか。
「ド・カントリーに行けるものなら行きたいけど行けない…ってジレンマがまずあるんですよ。日本人だし日本にいるし。でも、今のメンバーと出会って一緒にやるようになった時に自然と落ち着いた場所が、このポニーのヒサミツで、それがすごくフィットしていて、今とてもいい感触なんですね。ただ、あんまり活発に動くようなタイプでもないし、マイペースにやってる。だから“よく寝る休日”みたいな感覚が歌詞にも出ているのかもしれないです」
――ああ、まさによく寝る“のび太感”!
「(笑)そうかもしれないです!」《終わり》
レーベル:カクバリズム
品番:KAKU-075
発売日:2016年11月5日(金)
フォーマット:7インチレコード
価格:900円+税
【収録曲】
A.羊を盗め
B01.Stomp Walker(Instrumental)
B02.スカーレットの誓い(ムーンライダーズ カバー)
ポニーのヒサミツOfficial Site:http://d.hatena.ne.jp/hisamitsu_house/
カクバリズムOfficial Site内のページ:http://www.kakubarhythm.com/newinfo/2016/10/7single.html
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