Last Update 2023.12.27

Interview

Record People TV #1 オカモトレイジ(OKAMOTO’S)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

 

※こちらは2017年8月~2018年1月まで、SPACE SHOWER TVにて放送されていた番組「RECORD PEOPLE TV」のインタビューになります。
 

Record People TV 第一回目のゲストはOKAMOTO’Sのオカモトレイジさん。物心ついた時にはすでにレコードが生活の中ににあったというレイジさん。8月2日にリリースされる7枚目のアルバム『NO MORE MUSIC』もアナログ盤が出ることが決定しています。渋谷宇田川町にあるマンハッタン・レコードでお話を伺いました。

 

取材/文:小田部仁
写真:スペースシャワーTV

 

 

——レイジさんが初めてレコードに触れたのはいつですか?

普通に家にターンテーブルがあったので、その物自体にまず夢中になっていました。機械がカッコよくて。それが4歳か5歳ぐらいかな。聴いていた思い出があるのはラッパ我リアの『スーパー・ハード』。音楽でイントロ、アウトロってあるじゃないですか? 「中トロ」という曲があって(笑)。リリックの中に「ロケットランチャー」って言葉もあったりして、バイオハザードやTVゲームも大好きだったので歌詞カード見ながら喜んで聴いてました。

 

——自分のレコードプレイヤーを手に入れたのはいつ頃か覚えてますか?

プレイヤー自体は中学二年生ぐらいです。おばあちゃんの家に母が使っていたポータブルプレイヤーがあったんです。菊池桃子のステッカーが貼ってあって(笑)。ザ・ナックの「マイ・シャローナ」や、ベイ・シティ・ローラーズなど70年代のヒット曲のドーナツ盤がバーっとあって、それを持って帰って来て聴いてましたね。初めて自分で買ったのは中三だったと思います。ストゥージーズとスタイルカウンシルを買いました。レッドホットチリペッパーズが好きだったので、彼らがカバーしていたストゥージーズを知って。

 

——じゃあ、もうずっとレコードは生活の中にあったんですね。

そうですね。なので、別にブームでもなんでもないと思っています。そもそも百年以上もずっと残っている音楽の記録メディアは今のところレコードだけですから。中学生のとき、俺はずっとMDもiPodも買ってもらえなくて。だから親が使っていたテープレコーダーを使って、自分の声録音して、再生速度をあげたりして遊んでました。あとはラジオを寝るときに録音しておいて登校中に聴いたりもしてました。iPodを買い与えてもらっていたら、レコードやカセットには興味を示さなかったかもしれませんね。

 

——レコードに関する思い出で、心に強く残っていることってありますか?

初めてアメリカツアーで7箇所廻ったときに、シアトルに行ったんですよ。それでレコード屋を覗いたら、シアトル出身のザ・ソニックスというガレージロックバンドの7インチが売っていて。しかもめちゃくちゃ安かったんです。好きなバンドのゆかりの地でそのバンドのレコードを買うという経験は大きかったですね。

 

——ちなみに、お気に入りのレコード屋ってあります。

去年47都道府県ツアーをまわったので、日本全国のレコード屋に行きました(笑)。名古屋のバナナレコードなどは東京じゃ見ないような面白いものが置いてある印象です。あとは、昔からお世話になっていますが、広島のステレオレコーズも良い。熊本のウッドストックは店内も小綺麗でおしゃれな感じになっていて、いいサウンドシステムが入っているんです。店の半分がカフェになってるので、レコード掘るのに疲れたら一回休憩してみたいなことができる。しかもレコード屋もカフェも片手間じゃなくて、どっちも本気な感じなのが良かった。ドリンク一杯無料みたいなサービスもやっていたので8時間ぐらいいましたね。全部の棚を見ました(笑)。

 

——レコード屋の楽しみ方って何かありますか?

レコード屋は俺からすると検索エンジンなんですよ。店が書いているキャプションとか、Googleじゃ辿り着けない偶然性。「もしかして……」より明確なサジェスチョンが棚を見ることででてくる。レコード屋に行って、とりあえず見てみるということは俺にとって、新しい音楽に出会う何よりのツールになっています。

 

——レイジさんが考えるレコードの魅力ってなんですか?

最近思ったのは、やっぱりレコードでリリースするのは儲からないですし、ぶっちゃけ色々面倒くさいし手軽なことではないですが、そこを通過してリリースされているということは、音楽がきちんと好きで音楽を作っている人の音楽なんだろうなっていうことの証明なんだと思える気がします。思い入れが違うというか。

 

——レイジさんはDJをするそうですが、心がけてることはありますか?

あくまでもパーティーの盛り上げ役だと思っているので、基本的には盛り下がらないようにしたいと思っています。ただ、アナログメインでプレイしていることもあり、選曲に限りが出てきちゃうので、どの現場に行っても盛り上がれるだろうと思う曲をUSBに入れて持っていくようにしています。この間はチェインスモーカーズをかけましたよ(笑)。あの曲をかけた途端にフロアのみんなが全員で集合写真を撮り始めて、俺がぶち上がりました(笑)。

 

 

——今回、8月2日に7枚目のニューアルバム『NO MORE MUSIC』がリリースされますが、この作品もアナログ盤が出されるんですよね。

今回はアナログで聴くとすごくいい感じの曲順にできたと思っています。ここでA面が終わって、裏側に返してまた始まる……という情景を想定して組んだので、ぜひレコードで聴いてもらいたいなって思います。家でアセテート盤を聴きましたが、「すげえいいアルバムじゃん!」って自分で思っちゃいました(笑)。

 

 

——『NO MORE MUSIC』ってショッキングなタイトルですけど、これは?

アルバムに同名タイトルの曲が入っているんですけど、これはうちのヴォーカルのショウが曲も詞も書いていて。彼曰く「アルバム制作のために曲をひたすら作っていて、でも世にでるかもわからないような曲ばっかりだし、電車の中でもみんなイヤホンして何かしらを聴いてるけど、CDは売れなくなってる。俺はなんのために曲書いてるんだろう」と思った瞬間があったらしくて。

俺は俺でApple Musicなどでは発売日に最新の音楽が聴けるし、どんどん音楽はリリースされている中で結果、あれも聴きたいしこれも聴きたいけど全然追いつかなくて何も聴けてないという様な状況に陥って。それで、一回全てのミュージシャンが1回リリースをやめてほしいと思ったことがあったんです。作り手側の「NO MORE MUSIC」とリスナー側の「NO MORE MUSIC」がバンド内で混在していて。これは2017年の人の生活と音楽の距離を一言で表せているんじゃないかと思いました。

 

——前作『OPERA』が非常にヘビーで濃厚な作品だったので、今回の作品はいい意味で自然体かつOKAMOTO’Sの内面のヒリヒリとした部分が出た作品になったんじゃないかと思います。「等身大」という言葉が似合う詩とサウンドですよね。

今までの俺らは少し背伸びしていたというか。「この若さでこれ知ってるの渋くね?」といった方法を選びがちだったんです。「誰もワカンねぇだろうけど、俺らこれやってます」みたいな。でも、今回は東京生まれ東京育ちの26歳がバンドをやって音をだしたらこういうサウンドとリリックだよな、という印象になりました。何も考えてないアルバムと言ったら、そうかもしれないんですけど、前作でロック・オペラっていう誰が喜ぶの?という作品をきちんと完成させることができたから。今回は素直にやれましたね。

 

——大文字の「東京」ではなくて、生活している人の実感というかローカルな「東京」が歌われているところも個人的にはすごく響きました。歌詞の中に「小田急線」という言葉が使われていたりとか。

ショウは「今までは自分をステージに上がった時にスターにしてくれる歌詞を歌ってたけど、そうじゃなくて今回はものすごいパーソナルなこと、背伸びせずに自分の生活のことや身の回りのことを具体的に歌うようにしたら、それがすごい楽しくなっちゃった」と言ってました。すごく良くなったと思います。

 

——新しいモードに突入したんじゃないかと思います。今後、バンドとしてはどうなっていくと思いますか?

健やかに老けていくと思います。ただ、今回の作品で若返ったというか等身大になった気もしますけどね。26歳らしいというか。聴いている音楽も、俺なんかは最近K-POPばかりですし。ただ最近、女の子たちの顔と名前が一致しないんですよね……おっさんになっちゃったなと思いました(笑)。でも、K-POPばかりじゃなくて、古い音楽も新しい音楽もとにかく沢山面白いものを聴ければいいなって思っています。健康第一ってことですね、病んじゃったら音楽聴いても楽しくないですから(笑)。

 

■お気に入りの三枚

① THE ROOSTERS — THE ROOSTERS(1980)
② FILMS — MISSPRINT(1980)

THE ROOSTERSはずっと知っていたんですけど、FILMSを知ったのはつい最近です。THE ROOSTERSの帯をめくるとFILMSの広告が入っていて「うわー、ここ繋がるんだ!」と嬉しくなって(笑)。最近リイシューされましたが、帯を見たらこの広告がなくてテンションが下がりました。THE ROOSTERSはライナーもすごくかっこよくて。メンバーのアンケートが書いてあるんです。「好きなポルノスターは?」とか(笑)。FILMSはSFの様な歌詞の世界観ですごく切ない。酸素ボンベを背負ってみんなで外に出かけるとか。「T.V. PHONE AGE」という楽曲があって、電話をしたら君が知らない男と映って慌てるっていうシチュエーションで。テレビ電話じゃない時代だったら嘘をつけたのに……という歌詞です(笑)。実現してますね。

 

③ かまやつひろし — 我が良き友よ/ゴロワーズを吸ったことがあるかい(1975)

サイン入りなんですが、実はこれサインをステージの上でもらったんです。動画もバッチリ押さえて、インスタしました(笑)。かまやつさんが言ってましたが、70年ぐらい音楽をやっていてライヴ中にサインを書いたのはその時が初めてだったらしいです。「かまやつさんの初めてを奪った!」ってすごいぶち上がっちゃいました「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」の<できる事なら一生/赤ん坊でいたかったと思うだろう/そうさすべてのものがめずらしく/何を見ても何をやってもうれしいのさ>って歌詞ともリンクしてますよね。思い出の一枚です。

 

■お気に入りの邦楽盤

④ 玉置浩二 — キツイ(1989)

これは曲がものすごくかっこ良くて、DJでけっこうかけます。エピソードは特にないかなですね(笑)。聴いて欲しいな~、かっこいいんで。この年代の邦楽盤の、カンパニースリーブとペラ1っていうスタイルも潔くてカッコいいですよね。いつかこのスタイルでリリースしたいです。

 

■俺ジャケ

⑤ Dominique Lawalrée ‎– First Meeting (1973)
⑥ Manuel Göttsching — INVENTIONS FOR ELECTRIC GUITAR(1975)

Dominique Lawalré はニューヨークで買ったんですけど、ミニマル・アンビエントですね。73年の作品が今年リイシューされたみたいで。この人の顔が良くて、書いました。Manuel Göttschingも、顔なんですけど。まぁ、胡散臭いなっていう。このレコードはテクノとかの元祖といっても過言ではないと思います。ひたすらディレイのかかったギターで反復フレーズを弾いているっていう。それが20分以上あるんですけどお気に入りの一枚ですね。

 

⑦ Yamasuki Singers ‎– Le Monde Fabuleux Des Yamasuki(1971)

レコ屋のキャプションが良くて「ベルギー産 フェイクジャパニーズサイコキラー」みたいなことが書いてあって、パワーワードすぎる。ジャケもやばいですからね、空手というか振り付けというか図解されてますけどよくわからない。オリジナルの7インチを持っている人には自分以外にあったことないですね。YAMASUKIは流行る10年ぐらい前に買ったんです。やっと時代が俺らに追いついてきたなって思いましたよ(笑)。

 

※リピート放送日:8/5(土)25:55~、8/18(金)25:55~

 

 

■リリース情報


OKAMOTO’S 7th ALBUM『NO MORE MUSIC』
アナログ盤&CD 2017.8.2 ON SALE!!

 

■ツアー情報

10/30(月)恵比寿リキッドルーム
11/4(土)仙台darwin
11/5(日)新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
11/12(日)金沢AZ
11/17(金)浜松窓枠
11/18(土)京都磔磔
11/19(日)和歌山CLUB GATE
11/23(木)青森Quarter
11/25(土)札幌PENNY LANE24
11/26(日)旭川CASINO DRIVE
12/2(土)周南LIVE rise
12/3(日)熊本B.9 V2
12/5(火)鹿児島SR HALL
12/7(木)神戸VARIT.
12/9(土)松山サロンキティ
12/10(日)高松DIME
12/15(金)宇都宮HEAVEN’S ROCK VJ-2
12/16(土)長野CLUB JUNK BOX
1/13(土)岡山CRAZYMAMA KINGDOM
1/14(日)福岡DRUM LOGOS
1/20(土)なんばHatch
1/21(日)名古屋DIAMOND HALL
1/28(日)Zepp Tokyo

 

■OKAMOTOS公式サイト
http://www.okamotos.net/special/nmm/

 

スペースシャワーTV「Record People TV」
毎月第4木曜日 25:25頃〜25:30 リピート放送(レギュラー番組「JxJxTV」内)

http://www.spaceshowertv.com/program/special/record_people_tv.html