Last Update 2023.12.27

Interview

《RSD2017》RECORD STORE DAY 共同創設者 マイケル・カーツ氏インタビュー

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マイケル・カーツ氏 – レコード・ストア・デイ共同創設者

 

東洋化成は1959年に創設された、日本で最初の、レコードメーカーの出資を得ないインディペンダントのレコード製造メーカーです。現在では日本で唯一のレコード製造メーカーとなりました。
我々の特徴としては、カッティング・スタジオを工場内にもっているので、音決めの最終過程ともいえるカッティングから、メッキ(スタンパー製造)、レコードプレス、印刷に至るまで我々一社で行えることです。これにより音質の向上は勿論、商品の安全性も保障できるものです。
近年、レコード・ストア・デイのおかげで、アナログ盤にも注目が集まっていることを我々はとても嬉しく思っています。
そこで、我々が運営する当サイトにてカーツさんのインタビューを行わせていただき、創設者の思いを日本の音楽ファンに伝え、また、カーツさんから見た、今後のシーンの動向予想などもうかがえればと思います。

 

■レコード・ストア・デイについて

−−レコード・ストア・デイ十周年おめでとうございます。まずは、この十年を振り返って現在思っていることをお教えください。

レコード・ストア・デイが最初に立ち上がった時、私たちは、レコートショップや音楽といった文化を祝おうとしていただけなんです。その想いが、レコードの復活とイベント立ち上げのための努力へと繋がっていったのです。その時は、世界をより良い方向へ変えていくなんて、思いもしなかったですよ。このようなことを行うだけの幸運があったこと、大変恐縮ですし、感謝しています。

 

−−カーツさんの現在のレコード・ストア・デイでの役柄をお教えください。また、その役柄は具体的にどのような作業担当をなさるものですか?

私は、レコード・ストア・デイに関わる業務の管理者です。この業務には、アーティストやレーベル、特別なレコードを作ったり、レコードショップやお客さんのためのイベントを創るディストリビューターとの仕事が含まれます。また、オンライン上での管理や他の国々とのやりとりを管理する、私のパートナーであるキャリー・コリトンと密接に働いています。

 

−−レコード・ストア・デイはサンフランシスコにて立ち上がったと理解していますが、カーツさんは現在ニューヨーク在住ですよね? 

レコード・ストア・デイが最初に立ち上がった時、私はカリフォルニア州のロサンゼルスに住んでいました。そして、レコード・ストア・デイは同じくカリフォルニア州のサンフランシスコで立ち上がりました。カリフォルニア州に住んでいることで、日本へ飛んでいくことや、レコード・ストア・デイを世界に広めようとすることが容易くできたんだと思います。今は、NYC近くのハーレムと呼ばれるところに住んでいます。

 

レコード・ストア・デイのロゴ

 

−−創設の頃の懐かしい昔話、Back In The Days ~ちょっといい話なぞ思い出したら教えてください。

ワーナー・ブラザーズ・レコードに行って、当時の社長であるトム・ビアリー(Tom Biery)に私たちのアイデアを話した時のことを覚えています。彼はそれを気に入って、サポートすると言ったんです。その結果、メタリカに接触して、サンフランシスコにあるRasputin Musicで祭事をしてくれないか依頼したのです。メタリカのドラマー 、ラーズ・ウルリッヒに会ったとき、とても緊張しましたが、彼はとても礼儀正しく、親切なナイスガイでした。彼はファンをまるで王家の人々のように扱っていましたよ。

 

メタリカのRSDリリースアイテムのアートワーク

 

−−資料には21か国の組織がレコード・ストア・デイに参加しているとありますが、最新の調べでは何か国でしょうか?

コンスタントに新しい国を追加しているので、カウントするのは難しいですね。想像するに、今現在50カ国以上にのぼると思います。それぞれの国がそれぞれのやり方で、スペシャルなイベントをしたり、レコードのリリースを祝っています。

 

−−カーツさんからみて、一番盛り上がってる国、または推薦したいショップなどありましたら、お教えください。

かなり盛り上がっている印象があるのは、ドイツ、フランス、日本、イギリス、そしてアメリカです。アメリカだと、アリゾナにあるZia Records、アトランタにあるCriminal Recordsがお薦めのお店ですね。

 

上:Zia Records 下:Criminal Records

 

−−Save The Independent Stores というのがレコード・ストア・デイのスローガンと理解していますが、あらためて、創設以来、大事にしているスローガンをご説明ください。

正確には、「インデペンデントなお店を守ろう」ではなく、「インデペンデントなお店をサポートしよう」といった感じでしょうか。というのも、自分のホームタウンにレコードショップがあることがいかに大切なことか、というのを皆さんに再確認してほしいからです。私たちは、スペシャルでユニークことをしていると思っています。

 

−−秋にはBlack Friday も行っているとのことですが、アメリカではレコード・ストア・デイは年間通して催事を行っているのですか?

行なっている催事は4月のレコード・ストア・デイ、11月のブラック・フライデーです。

 

−−日本では、ここ数年、レコード・ストア・デイが有名になり、毎春ごと、盛り上がってきています。アメリカ、そして各国の状況をお教えください。

先にも言ったように、どの国も、それぞれユニークで、違ったやり方でお祝いをしています。パリでは都市全体で祝っていて、音楽ファンたちが日中はお店を回り、夜はフェスを行なっています。私が思うに、ドイツではレコード・ストア・デイで、かなりの量のビールが消費されているんではないでしょうか。

 

−−カーツさんから見て日本のレコード・ストア・デイや音楽状況についてご存知のことなどありましたら、コメントをください。

日本のレコード・ストア・デイ事務局と仕事をすること、どんな風に個々人がお祝いをしているのかを見るのがとても好きです。私個人としては、ベイビーメタルがレコード・ストア・デイに10周年としてリリースされると良いなと思っていましたし、それは不可能ではなかったと思います。次回、実現すると良いなと思っています。

 

マイケル・カーツ氏とお気に入りのベイビーメタル

 

−−レコード・ストア・デイといえば、様々なアーティストとショップ、レーベルがタッグを組んだ特別盤が人気の目玉と思います。日本ではここ二年ほど、大きなセールスを持たないけれど、確実なファンのいるアーティストの作品が多数発売され、大きな売り上げを誇るアーティストの参加はいまいちです。この傾向は、アメリカと比較してどうですか?

ここアメリカでも同じような状況です、新しいアーティスト、テキサスやセントルイスといった特定の地域で人気を集めているアーティストのリリースを数多く行なっています。プリンスやザ・ビートルズ、U2、フランク・ザッパといったアイコンになるようなアーティストのビッグ・リリースも大好きですが、レコード・ストア・デイのほとんどのリリースは、小さなインデペンデントなレーベルによるリリースです。

 

−−日本では、レーベルやマネジメント、レコードショップの本社機能が東京に集中している日本でのレコード・ストア・デイは、都市集中イベントではないか、という意見もあります。これについてはどう思われますか?

これもまた、アメリカも同じです。アメリカは、多くのエネルギーやイベント開催がニューヨークとロサンゼルスに集中しています。それは自然なことです。多くのアーティストが、そこに住み、そこで仕事をしているのですから。

 

−−日本ではレコード・ストア・デイ限定盤は、発売より2週間、ネット販売とお客様のネット予約を禁ずというルールを周知しています。これによるお店サイドのメリットとデメリットがあると聞いていますが、いかが思われますか?

レコードショップがアーティストたちをリスペクトし、単純にお金を産み出すためにレコード・ストア・デイのリリースを使うべきだと強く感じでいます。そうです、お金を産むことは大事なことなんです。ですが、この日の核心は、ローカルなレコードショップをお祝いすることにあります。

 

■アナログ盤復興について

−−ここ数年、日本の音楽シーンではアナログレコードが大きく注目が集まっています。アメリカではどうですか?

それは、ここでも同じです。ここ8年間でのレコードの総売上を、レコード・ストア・デイ1日で超えてしまいました。

 

マイケル・カーツ氏よりいただいたデータ-RSDでの売上と、アナログレコードの年間売上の推移表

 

−−日本の状況を推察するに、レコードを買っているのは、かつて買っていた世代が戻っている、40,50年代層、と、初めて触れる楽しさ、20、30代層に分かれていると(発売されるアイテムから)推察できます。アメリカではどうですか?

そうですね、レコードは常に年配のリスナー間で人気でしたが、今はより若い世代が、彼ら自身の独自のフォーマットとして主張しているようにも見えます。特に、女の子たちに言えることですね。

 

−−日本では、自身の作った音源をアナログで発表したいという、アーティスト主導で、とてもヘルシーなシーンになってると思いますが、どう思われますか?

私は、それぞれのアーティストが情熱を感じることをやるべきであると同時に、ビジネス上でも意味のあることをやるべきだと考えています。レコードは製作も流通も、より費用がかかるので、アーティストたちはレコードでリリースしようとするなら、より自信を持って取り組む必要がありますね。

 

−−また、CDやネット配信の伸び悩みの補填として、アナログも発売する(主としてメジャー)メーカーもいると聞きますが、この傾向はアメリカではどうなのでしょう?

ここでも同じですが、実際にリスナーたちはまだCDに対しても愛を持っていると皆さんに周知しておきたいですね。CDは音楽を聴くのに、本当に優れた媒体ですから。

 

−−日本では、新作アナログ盤を中心にeコマースサイトで購入する人が増えています。それに端を発してレコード・ストア・デイは立ち上がったと聞きますが、アメリカでのレコードの販売動向をお教えください。

オンライン上で購入する便利さを好むと同時に、レコードショップにも愛を持っているのではないでしょうか。買った時に笑顔になりたいのなら、レコードショップに行くべきだと思いますよ。

 

–ご質問にお答えいただき、ありがとうございました。今年も頑張りましょう!

 

 

取材/文:本根誠
構成/訳:相澤宏子
 
 

Michael Kurtz
RSD2017
RECORD STORE DAY
レコードストアデイ