ザ・クロマニヨンズ インタビュー
――(笑)。CDだけの制作になった後、またレコードも一緒にリリースすることになったのには、何かきっかけや発想があったんですか?
甲本 発想も何も、しばらくしてからはもう、CDはよくないんじゃないだろうかっていうモヤモヤがずっとあったよ。それに気づいたきっかけはオーティス・レディングだったんだ。
――というと?
甲本 これからはCDの時代なんだったら、ちょっとずつ自分の好きなものを買い直していかなきゃなんないなあと思ったんだよ、切実に。で、オーティス・レディングのCDを買ってきて聴いたら、あんまり感動しないんだ。そのとき僕は、自分がすれたと思った。俺も大人になったんだ、いろんな経験もして、すれっからしで、オーティスじゃ感動できない奴になっちまったのかと。俺、音楽そんなに好きじゃなくなったんだなぁって、ちょっとさみしいような感じになったんだよね。そんで、CDはあんまり聴かないで置いといたの。で、ある日、レコードプレーヤーで同じものをかけたら、もうね、水道の蛇口をひねったくらい泣いてんだよ、感動して。あれ? そんなに好きじゃなくなったはずのオーティスで泣いてる!と思って。CDで泣けなかったけどレコードで泣いてる。よくわかんないけど、これはもしかしたら何かあるぞ、と。そこからです。レコードの方がいいんじゃないかってモヤモヤし出したのは。両方出すべきなんじゃないかってね。
真島 CDは音がいいっていう触れ込みだったけど、むしろ悪いんじゃないかと思ったよ。僕はビートルズの『サージェント・ペパーズ(・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド)』がきっかけだったんだけど。87年くらいかな? まわりの騒ぎようがすごかったんだよ、「ビートルズがCDになった!」って。「アナログでは聴こえなかった音まで聴こえる」とかって言っててさ。だから「それはCD買わなきゃな」って(笑)。でも、買ってきて家のCDプレーヤーで聴いたら「あれ?」ってなって。で、ちょうどレコーディングをするときにスタジオで爆音で聴かせてもらおうと思って『サージェント・ペパーズ〜』を持って行って聴いたんだけどなんかピンとこなくて。やっぱりアナログで聴いたときの方がくるんだよね、音が。CDはボリュームを上げても上げてもこないんだ、全然。だから、そんなに大騒ぎするほどのものかなっていう感じはあったかな。レコードで十分だし、レコードの方がもっと生々しく聴こえるし。
ステレオ録音でもモノラル録音でも、
自分たちが聴いてカッコよければ何でもいいんだ(真島昌利)
――アナログ制作を復活したのはいつでしたか?
真島 僕らは……ハイロウズの1枚目じゃないかな。
――当時の状況としては、アナログレコードを出すのは大変でしたか?
真島 うーん? そんなに大変じゃなかった気がする。
――でもまわりは出してない頃ですよね。
甲本 ほとんど出してない。でもクラブユースのレコードは出てたから、アナログ盤が廃れてたわけじゃないんだよ。こすりまくってた時代だからね。
真島 ある意味、ヒップホップの人たちが救ってくれたのかもしれないね。
甲本 あの使い方を見たときに、「おいおい、大事なレコードをこすっちゃって」って思ったけど、あれがもしかしたら(レコードの)命をつないでくれたのかも。
――やっぱりアナログを出したのはいい体験ですか?
真島 うん。帯の宣伝文句を考えるのが楽しかったよ(笑)。
――帯の宣伝文句、そういえばクロマニヨンズではないですね。
真島 あ、そうだねぇ。
――どうしてなくなったんでしょう?
甲本 これは統一感(笑)。1枚目でやってればずーっとあったはずだけど。
――なるほど。
真島 子供の頃、僕らけっこう帯の文句にやられてるじゃない?
甲本 帯裏も大事なんだよ。よく、レーベルメイトの宣伝が載ってたじゃない? パンクのレコード買っても全然関係ないバンドの宣伝が載ってたり。ああいうのもハイロウズの頃はやってたよね。
真島 やってたねぇ。
甲本 ローリング・ストーンズの広告とか載せてたもんね。
真島 スモール・フェイセズとか(笑)。
――ありましたね!(笑)。
甲本 それに対する宣伝文句も勝手に考えてたからね(笑)。
真島 ストーンズとかフェイセズとかの宣伝文句を俺たち考えてた(笑)。
甲本 よく許してくれたよね、あんなこと。
真島 ストーンズのファーストとかさ、<奴らが転がり始めた>とか(笑)。
――へぇー! 面白いですね(笑)。
甲本 隅々まで楽しめるよ、アナログ盤は。