Last Update 2017.5.22

Interview

yahyel(ヤイエル)インタビュー&ライブレポート(WARPAINT来日公演 オープニングアクト)

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ライブレポート yahyel(WARPAINT来日公演 オープニングアクト) @リキッドルーム 2017.2.28

 

2017年2月28日(火)、リキッドルームで行われたウォーペイントの来日公演。そのオープニングアクトを務めたのは、昨年ファーストアルバムをリリースした話題のバンド・yahyel(ヤイエル)だ。サウンドやヴォーカル、MVやアートワークからは日本のバンドと判定することが難しい、謂わば「匿名性(このワードについては、後のインタビューを読んでいただきたい)」をコンセプトに持つ彼らのパフォーマンスは、想像以上にエモーショナルでフィジカルだった。それと同時に、終始映し出される映像によって彼らの匿名性を際立たせることにも成功しているという、相反する要素が共存するものでもあった。

高音、低音共にスモーキーかつ伸びやかな声を持つヴォーカル・池貝は、時にマイクスタンドから離れ、感情を押し出すように歌い上げる。その後ろでは、無機質だが確実なビートを刻むドラム・大井が構える。横に並ぶシンセサイザーとサンプリング、コーラスも担う杉本と篠田は、時に観客を煽る。こうした静と動を包括するようにVJ・山田が繰り出す映像の最後に「yahyel」というバンドロゴが大きく映し出され、余韻を残して5人が消えていくのが印象的だった。

映像は、彼らのライブ・パフォーマンスにおいて非常に重要な役割だと感じた。「Alone」のようなダンサブルなナンバーから「Black Satin」のように、染み渡るようなヴォーカルが印象に残るナンバーまで、統一感ある印象を与えるのは、映し出される映像が、5人が我々観客とは違う空間にいるかのように見える不思議な空間を作り出しているからだろう。

こうした、特異性のあるライブを行う彼らが、今後どんな音を作り、ライブをしていくのか、大いに注目していきたい所存だ。(文:相澤宏子)

 


 

さて、そんなヤイエルが昨年に発表したデビュー作『Flesh and Blood』のアナログ・レコード化(2017年3月3日(金)発売)にあてた渡辺裕也氏によるインタヴューを先日行った。その模様を、お楽しみいただきたい。

 

「今のシーンを追っていたほうが、絶対におもしろい」yahyel(ヤイエル)が語る現代のリスニング・スタイル、そして海外シーンとの同時代性。

 

取材/文:渡辺裕也

撮影:豊島望

 

ドメスティックな傾向がますます強まる日本の音楽シーンを尻目に、突如として現れた謎の新鋭ーーそれがyahyel(ヤイエル)だ。今回はデビュー作のアナログ化にあてたインタヴューということで、その先端的な音楽性のことはもちろん、彼ら自身のリスニング・スタイルについても伺ってみることにした。果たしてこれがヤイエルという新世代のアイデンティティを浮き彫りにするような話となったので、ぜひ最後まで読んでみてほしい。サンプリングなどを担う篠田ミルと、シンセサイザー担当の杉本亘に話を訊いた。

 

ーーお二人は普段、主にどんなメディアで音楽を聴かれているんですか。

篠田 ここ1~2年だと、やっぱりストリーミング・サーヴィスで聴くことがいちばん多くなりましたね。それ以前にしても、音楽に関してはインターネット上で探すのがメインだったし、レコード・カルチャーにはさほど触れてこなかった、というのが正直なところで。

杉本 僕も今はほとんどApple Musicですね。それに、いま思うと小さい頃にiPodを買ってもらったのはすごく大きかったような気がする。その頃の僕は小6だったんですけど、それを機にiTunesを利用するようになったおかげで、音楽をネットで買うっていう習慣がおのずとついたので。レコードに関しては、友達からもらったターンテーブルが家にあるから、たまにそれで聴くことがあるくらいですね。

篠田 実際、メンバー全員がそういう感じだと思います。みんなプレイヤーは持ってるし、勿論レコードもたまには買うんだけど、それがメインの試聴形態ではないというか。僕らの場合はそれよりも「とにかくたくさん聴きたい」っていう気持ちのほうが強いんだと思う。もちろん、こうして自分たちの作品がレコードになるのはものすごく嬉しいんですけどね。

 

ーーその「たくさん聴きたい」と思う対象って、基本的には新譜?

杉本 そうですね。僕はほぼすべて新譜です。

 

ーーでは、実際にここ一年くらいはどんな音楽を掘っていましたか。

杉本 えーっと、なに聴いてたっけな(といってiPhoneを取り出す)。

篠田 こうやってiPhoneで自分が聴いてた音楽を思い出すっていうのは、やっぱりそういうことですよね(笑)。

 

ーーまさにストリーミング世代って感じですね(笑)。

篠田 去年でいうと、僕は相変わらず現行のインディー・シーンとか、海外メジャーのR&B/ヒップホップを掘り続けてたんですけど、それ以外だと韓国のR&B/ヒップホップがずっと気になってたかな。

杉本 XXX(エクスエクスエクス)とかね。確かに俺もあれはめっちゃ聴いてた。

篠田 アンダーソン・パックが韓国系というのも含め、コリアンとアメリカンの密接なつながりが面白かったし、そこには見習えることがすごくあるような気もしていて。あとは僕、あんまりゴリゴリのテクノとかハウスを聴いてこなかったんですけど、最近はそのへんもちょっと勉強してます。

杉本 そういえば、一時期は俺らのなかでハウスのブームがあったね。ていうか、僕らはその時々でハマっている音楽の移り変わりがホント激しいんですよ。ただ、基本的にはいま流行っているものにしか興味がないんですけど。

 

ーーつまり、みなさんにはトレンド・ウォッチャー的な側面も少なからずあるってこと?

篠田 確かにそれはあると思います。僕らは今こうして同じ時代にいて、同じ枠のなかでなにかを表現しようとしているんだから、基本としてトレンドくらいは踏まえておかないと、みたいなところはあると思う。

 

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ーーなるほど。こうしてお話を伺っていると、主にみなさんの関心は欧米の音楽シーンに向けられているようですが、それは音楽活動を始めた頃からずっとそうなんですか。

杉本 いや、そんなことはなくて。それこそ中学校の頃とかに聴いてたのは、エルレガーデン、アジカン、ラッドウィンプス、銀杏BOYZとか、そんな感じでした。

篠田 あとはミッシェル、ブランキー、ゆらゆら帝国とかね。実際、僕は高校の軽音部でいま挙がったようなバンドのコピバンをやっていましたし。

杉本 いいね。うちの高校には軽音部なかったからさ。僕は高校の頃にアコギで音楽をつくりはじめて、それで音楽にどんどんのめり込みすぎた結果、大学受験に全部落ちてしまって。浪人が決まったところで、なにか新しいことを始めようと思って、それから宅録を始めるっていう。

篠田 あはは(笑)。個人的なところだと、僕は中学生のときに「ロック名盤500」みたいなディスク・ガイドを本屋さんで手に取ったのが、わりと大きなけっかけでしたね。その本に載ってるものをとりあえず片っ端から借りてきては、よくわからないなりに文章を読みつつ、年代やジャンル別にディグしていくっていう。

 

ーーその頃から体系立てて音楽を聴いてたんですね。

篠田 そうですね。もともと歴史的ないし社会的な視点で物事を考えることに興味があったんですけど、それは音楽についても然りで。

 

ーーじゃあ、篠田さんの音楽的なバックボーンはその時期に培われたんですか。

篠田 どうなんだろう…。たとえばYMOとか、トーキング・ヘッズみたいな、何かしらのコンセプトを立てて作品を組み立てていくようなバンドに興味があったので、当時はそういうところをよく掘ってたんですけど、それがヤイエルの音楽性にどこまで関わっているかっていうと、それほどでもないというか。もしこれが普通のバンドだったら、各メンバーが集まって、それぞれのルーツが整合性をもつことによって音楽性が培われていくんだと思うんですけど、僕らはそういう感じでもないから。

 

ーーというのは?

篠田 2015年にヤイエルをやろうとなったとき、まず僕らは自分たちがオンタイムで聴いていたものを分析してみたんですよ。で、そこから逆算していくことで、バンドの音楽的な引き出しを増やしていったというか。ルーツを逆説的に構築していったような感じといえばいいかな。

杉本 そうそう。僕らはまず話し合うところから始めたんだよね、曲作りの方向性は、いつもそうやって話し合うところから決めてるんです。

 

ーーその3者の話し合いとはどういうものだったのか、もう少し詳しく教えてもらえますか。

篠田 はじめてこの3人で集まった日の夜に、たしか池貝(=ヴォーカルの池貝峻)がアコギでつくった曲をネタとして持ってきたんだよね?

杉本 そうだね。「こういう曲があるんだけど」って。

篠田 その曲をみんなでDTMに落とし込んでいこうとなったときに、「じゃあ、このアーティストの音源を参照してみようか」みたいなことを逐一やってみたんです。で、そのときに挙がったものを相対的に見ていったら、いわゆるインディR&Bとか、ポスト・ダブステップと言われるものが多くて。

杉本 たとえば、僕はその頃にHONNE(ホンネ)をよく聴いてたので、ああいうヴォーカル加工を自分でもやってみたかったんですよ。で、その池貝が用意してきたアコギのデモを聴いたときに、その個人的にやりたかったアイデアがうまくハマりそうだなと思ったんです。それと同時に、ミルくんからは「ドロップのところでもっとベース・ミュージック的な刺々しい音色も入れたい」みたいな意見が出てきて。そうやってアイデアを持ち寄っていくなかで最初にできた曲が、あのアルバムに入ってる“Midnight Run”だったんです。

 

ーー池貝さんの用意したアコギのデモをとっかかりとして、そこに各々のアイデアを詰め込んでいくと。しかも、そのアイデアは現行のポップ・ミュージックをヒントに生まれてるってところがミソですよね。

杉本 そうですね。海外でいま起きていることに対してそれぞれが敏感だったからこそ、僕らは話が合ったんだと思う。

篠田 それこそ集まった当時から、チェット・フェイカーとか、ホンネとか、ジェイムス・ブレイクとか、そういう音楽を僕らは共有していたので、少なくともバンドの活動初期に関しては、そこがなによりも重要だったんだと思います。

杉本 僕個人でいうと、トラック・メイカーとしては、たとえばエイフェックス・ツインとかの影響もあったりするんですけど、それでも基本的にはやっぱり新譜ばっかり聴いてますね。それこそYouTubeやSoundcloudを掘るのは、もはや自分の趣味ですから。

篠田 実際、聴きたい音源はほとんどネットで聴けちゃうしね。もちろん僕もディスク・ガイドを読んでたくらいなので、歴史をさかのぼっていく中で「ああ、ここで時代がひとつ更新されたんだな」みたいなことを理解したときの面白さは、よくわかってるつもりなんです。でも、やっぱりそういう意味でも、今のシーンを追っていたほうが、絶対におもしろいんですよね。だって、その時代の移り変わりをみずから体験できるわけですから。《つづく》

 

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