Last Update 2017.12.14

#3 DJ JIN(RHYMESTER)

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Record People TV 第3回目のゲストはRHYMESTERのDJ JINさん。言わずと知れたレコードマニアのDJ JINさん。9月6日に出したニューアルバム『ダンサブル』がレコードの日にアナログ盤としてリリースされます。ご自身も普段からよくいらっしゃるというHMV渋谷店で「過剰に踊れる音楽」というテーマで超濃厚かつマニアックなお話を伺いました。

 

取材/文:小田部仁
写真:スペースシャワーTV

 

 

ーーDJ JINさんがレコードに初めて触れた体験を教えてください。

レコードやカセットテープで音楽を聴くっていうのが僕らの場合は当たり前の時代だったんで。うちの親がクラシックの音楽をやっていたり、好きだったってこともあって家ではそういうレコードや歌謡曲が流れてましたね。初めて買ったレコードは、どれだったかあんまり覚えてないんですけど。自分で貸しレコード屋さんで借りた盤は覚えてて……今日、実は持ってきてるんですよ。

 

ーーえ、そうなんですか?

細野晴臣さんの『ビデオ・ゲーム・ミュージック』ですね。これは僕が初めて、自分で能動的に聴きたい・所有したいと思って借りに行ったレコードですね。僕が借りたのは伊勢佐木町の『オデオンビル』に入ってた「友&愛」ってお店で。超大手ですよね。小学校高学年だったと思いますけど、当時は借りるのに親の承認が必要だったんですよね。自分はあんまりアイドルとかは通ってないゲームっ子だったので、思い出に残ってますね。この当時のゲーム音楽のクリエイターで大野木宣幸さんという方がいるんですけど、その方の作品もすごく好きで影響を受けてます。

 

ーー帯付きですごく状態がいいですね。

帯付きがポイントなんですよね。普通にビニールのカバーなしで保管しといたら帯は破けちゃったり、取れちゃいますからね。書かれてる文句もいいんですよね。「脳みそクラクラ、みぞおちワクワク、下半身モヤモヤ!」って(笑)。

 

ーーレコードを集め始めたのは、いつ頃でしょうか?

高校生の時に、ヒップホップに触れてDJになりたいと思って。そこからヒップホップはもちろん、R&Bやソウルのレコードを集め始めた感じですね。機材はお金もなくてまだ揃えられなかったので、とりあえずレコードを買ったり聴いたりして音楽の知識を増やしてました。

 

ーーヒップ・ホップの文化に触れたのは、クラブやディスコですか?

横浜に『Circus』ってディスコがあって。まだ、風営法とかもユルかったから全然高校生の頃から遊びに行けてちゃってたんです(笑)。当時はユーロ・ビート系のディスコが全盛だったんですけどそういう遊び場とは違ってCircusはヒップホップ、R&B系の箱で雰囲気が全然違うんですよね。その夜の雰囲気を作っているのは誰なんだろうって観察してたら、それがDJだってことがわかったんですよね。

 

ーーその後、早稲田大学に入学されてRHYMESTERのメンバーと出会うわけですね。

そうですね。「早稲田大学ソウルミュージック研究会ギャラクシー」というサークルに入ったんですけど、そこにRHYMESTERのメンバーがすでにいて。ヒップホップとかR&Bが好きな人たちはすごく少なかったので、数少ない好き者同士が集まって情報交換してって感じでしたね。

 

ーーその頃が、一番音楽を聴いていましたか?

今も聴いてますけど、学生時代はとにかく時間があったので。今みたいにネットで調べられないから、情報を手に入れるのが勝負でしたね。TOWER RECORDSの輸入雑誌のコーナーにヒップホップの雑誌が入ったって情報を手に入れたら、すぐに急行して(笑)。どこそこのレコード屋さんに80年代ヒップホップ・クラシックのデッドストックが入ったって聞いたら駆けつける。ヒップホップの匂いを嗅ぎつけて集まる獣みたいな(笑)。

ーー無粋な質問かもしれませんが、レコードの魅力って何だと思いますか?

いろんな理由がありますけど。DJとして、ちゃんとセッティングされた音で、爆音で鳴らして一番心や身体に響くような音が出せるのはレコードなのかなって思いますね。デジタルでもいい音が出せる箱もあるんですけど、何でかレコードは一晩聴いていても全然疲れないし、ずっとフロアで聴いていたいなって思うのはやっぱりレコードなんですよね。

 

ーー気持ちいい理由が解明されていない。

そうですね。レコード針がレコードの溝をトレースしていく……摩擦していく感じがいいんですかね……。俺の知り合いのレコード大好きなど変態DJが「夢がある」って言ってたんですけど、身体をめっちゃ小さくしてレコードの溝にハマりたいって。こんな幸せなことはないだろう!って(笑)。

 

ーー確かに、ど変態ですね(笑)。RHYMESTERのライヴではレコードを使ったオールドスクールなスタイルでDJする恒例の一幕がありますよね。

最初にRHYMESTERをやりだした頃は、レコードでライヴを全部構成してたんですけど。だんだん、デジタルでDJをやるってなっていって。でもやっぱり、レコードで出せるものは出したいって思っていて。時代の変わり始めの頃は「JINさん、まだレコードですか。プッ(笑)」みたいなのがあったんですけど、ずっとやり続けていくと希少価値が上がってきてオリジナリティになっていくっていう。未だにRHYMESTERのライヴでレコードを使うのは、うちらにしかできないステータスみたいなところもありますよね。

 

ーー今、もはやデジタルでしかDJできないアーティストもいるんじゃないかな、と。再生ボタン、ポチみたいな。

この間、KICK THE CAN CREWのイベントが武道館であったんですけど。その時も2枚使いでしっかりライヴやったんですけど。バックステージで「武道館でレコードっすか!」って言ってきてくれたりして(笑)。レコードの針先ってミリ以下なのに、そこから武道館を揺らす音が出るっていう。「ミクロから、マクロ!」みたいな。

 

ーー先ほど帯に対するこだわりもお話ししていただきましたが、レコードに対するフェティシズムってどこに一番感じますか?

黒光りしてるところですかね(笑)。カラーヴァイナルも可愛いなって思うんですけど。使うにあたっては、やっぱりブラックヴァイナルが一番ですね。チャラくない。溝が見やすいとか、実用的にも便利なので。最近は7インチレコードだけでDJやる人も多いですけど、自分は特にこだわりはないですね。

 

ーーレコード屋さんでの掘り方を教えてください?

まず、壁レコ(壁に面だしされているレコード)を見ますね。今日もザーッと見てたら、自分がすごく苦労して手に入れたレコードがいとも簡単に売られてるってことにすごくショックを受けました(笑)。HMVさん、いい品揃えですね……。一通り見たら、自分が欲しいジャンルのレコードを探していきますね。レコードの底が抜けないように「ストン」って落とさないことを気をつけてますね。

 

ーーよく行くレコード屋さんはどこですか?

そうですね……HMVもよくきますし。ごく当たり前にDISK UNIONとかJET SETとか JAZZY SPORTとか。あと、高円寺にUniversoundsっていうソウル・ジャズ系のレコードを取り揃えてるお店があって、そこはよく行きますね。

 

ーーかなりの枚数を毎回買うんですか?

子どもが二人いるんで、昔みたいに好き放題レコードを買えるってわけじゃないんですよ。行き過ぎは本当にヤバイんで……(笑)。気をつけないと、家庭が崩壊してしまう(笑)。昔はレコード屋さんで当たり前のように1回10万円ぐらい使ってたんですけどね。

 

ーーなるほど(笑)。レコードを扱ううちに会得した特殊技能とかありますか?

自分の身の回りのDJの間では知られてることなんですけど。7インチレコードっていわゆるヴァイナルっていう塩化ビニールで出来てるものと、スチレン製って発泡スチロールの元素材みたなもので出来てるものがありまして。この2種類の違いが触っただけでわかるっていう(笑)。この2枚持ってみてください。

 

ーー……? わからないです……。

持った瞬間に「あぁ、そうだな」って材質の違いがわかるんですよね。触感が違うんです。カラッとしてるのがスチレン、ツルッとしてるのが塩化ビニール。叩くとはっきりわかりますよ、スチレン製の音はカンカンって感じで。塩化ビニールはコンコンって感じで。みなさんには日常生活の中で全く役に立たない技能です。

 

ーー自分のレコード・マニアっぷりが行きすぎているなと思った時はありますか?

自分の生活経済の単位がレコードになってるんですよね。ファミレスとか行って、1200円ぐらいの飯を食ってると「12インチシングル一枚分だな……」とか。服買うときに値段が2万4000円とかだと「あぁ、あの欲しかったレコード1枚分だな」とか。「今日のギャラはレア盤何枚ぶんだな」とか、もう何が何だか(笑)。日本各地にDJしに行くじゃないですか? そしたらそこでもらったギャラは地元のレコード屋に落として行く。

 

ーー地方のレコード屋さんで気に入ってるお店はありますか?

うーん……これはあんまり言いたくないんですけど、もう沢山の人に知られているので。福島にLittle Birdってお店があるんですね。昔からの馴染みのDJ Marcyっていう方がやってるんです。そこは未だにウェブショップ出してないんですけど、全国からお客さんが来るから廻していけているお店で。「なんでここに世界に何枚しかないレコードがあるんだ?」っていう盤が一杯あるすごい品揃えのお店で。こういうお店だからレコード屋さんとの繋がりは結構あるんですけどその人たちに「Little Birdの品揃え、すごいよね」っていうと「どうなってんだろうね」って不思議がるほどなんですよ。未だにレコードの世界はいくとこまでいくとインターネットの情報じゃなくなってるんですよね。

ーー今年9月6日に出たニューアルバム『ダンサブル』がレコードでまたリリースされますが、このアルバムはそもそもどのようなコンセプトで作ろうと考えられたのでしょうか?

制作の一番最初の時に話していたのはフィジカルな要素を感じさせる音楽をやりたいってことですね。アップリフティングで、テンポも早めな自然と身体が動いてしまうようなものですね。自分がプロデュースしたのは“爆発的”って曲と「Don’t Worry Be Happy」って曲なんですけど。ハイテンションだったり気持ちいいグルーヴだったり本能にも訴えかける曲を目指しましたね。

 

ーーフィジカルという言葉がありましたが、まさに楽器の演奏の妙も楽しめるようなアプローチを試されたのかなという印象がある楽曲ですね。

そうですね。Jazzy Sport所属のcro-magnonっていう人力ダンスミュージックバンドと自分ーーDJ JINで組んで“cro-magnon-jin”っていうダジャレみたいな名前のユニットをやったことがあるんですけど。自分がディレクションして、ファンクミュージックを演奏してもらうっていう。自分がアイディアを持ってって、レコーディングの全部を見るっていうことで新しいものを作ったんです。今回は、その経験を踏まえて、Mountain Mocha Kilimanjarotっていう日本を代表するファンク・バンドの一つにお願いして一緒にやりました。

 

ーーより有機的なトラック作りをしていったということですね。

そうですね。DJなので、いろんな過去の音楽のアーカイヴが勝負というか。コード進行がどうとか楽理的なところはわからないんですけど、昔の音を聞いてきたその引き出しの中から「こういう展開のこういう音がいい」とかホーンのフレーズを鼻歌で伝えたりとか、アイディアを出して「JINさんの言ってることってこういうことかな?」とかミュージシャンの皆さんに想像してもらいながら作っていくやり方でしたね。

 

ーー実際、レコードになってみて聴いてみていかがですか?

11月3日、レコードの日にHMV PRODUCTSから出るんですけど。RHYMESTERはできるだけアナログレコードでも作品をリリースしていっているグループで。自分がアナログレコード派なんで自分の作った曲がレコードになるっていうのは感慨ひとしおですね。ついこの間、テストプレスが出来上がったんですけど。その時、針を落とすと「うぅっ!」って男泣きしましたね(笑)。

 

ーー今後の活動はどんな風に考えてますか?

これからRHYMESTERのツアーをやったり作品のリリースに向けて、というのはもちろんありつつ。1DJとしては自分がプレイしているようなエッジの効いた古今東西のあらゆるグッド・ミュージックをもっと知ってもらえるような活動をしていきたいな、と。まだまだ道半ばなんで。人生が豊かになる音楽を伝えてきたいなって思いますね。簡単に音楽にアクセスできる時代だから、より体系立ててじゃないですけどいい形でお勧めできたらいいなって思ってます。

 

 

■過剰に踊れる3枚

① Incredible Bong Band ‎– Bongo Rock (1973)

この中に入っている“Apache”という曲がありまして。「ヒップホップの国家」と呼ばれている曲なんですね。70年代初め、ヒップホップの黎明期からいわばテーマソングとして愛され続けて。いろんな曲のネタにもなってますけど、ブレイクダンサーたちはこれで踊りまくるっていう有無を言わせぬ名曲ですね。過剰に踊らざるを得ない!

 

② Fela Ransome-Kuti and the Africa ’70 – Roforofo Fight(1972)

「過剰に踊る」っていうテーマだと、これですね。最高の一枚ですね。フェラ・クティというアフロ・ビートの帝王のディコグラフィの中でも特にテンポの早い一枚で。フェラですからね! 体と心の根っこから突き動かしてくるダンスビートっていうか。自分のDJでもここぞっていう時にかけたりするんです。お客さんたちの反応もめちゃくちゃ良くて、キラーチューンですね。

 

③  Inner Life – Ain’t No Mountain High Enough (1981)

ディスコ・ミュージックの名門、サル・ソウルレコードから出てるんですけど。ディスコのカタログの中では屈指の一枚ですよね。ピークタイムの一番アツい時にかけたいですね。長年愛され続けているフロアを頂点に持っていく一枚ですね。どのタイミングでかけても、過剰に踊らざるを得ない一枚ですね。

 

■過剰に踊れる邦楽盤

④ Suchmos – The BAY(2015)

みなさんご存知のSuchmosですね。曲もグループとしても好きなんですけど。若手で活躍してるミュージシャンが、ちゃんとこうやってレコードでリリースするっていうスタンスが素晴らしいですね。スペシャさんの教育がなってるんですね、これね(笑)。HMV SHOP PRODUCTSだし。いや、本当に好きなレコードなんですよ(笑)。ソウルとかファンクとかジャズとかを自分たち流に昇華してアウトプットしてるっていう、ナチュラルさが好きですね。ルーツ的なものを感じさせるけど、彼らなりの表現をやってるなって。

 

■過剰に踊れる俺ジャケ

⑤ Messengers Incorporated – Soulful Proclamation(1970)

自主制作のソウル・ミュージックで。ジャケのインパクトで全てを物語っているって感じがしますけど。棚に置いていても相当目立つという。高額盤なんですよ。好きな人たち、マニアは欲しい一枚ですね。いい状態で残っているものも数少ない。生臭い話、海外のオークションでは2000ドル越えとかで取引されたこともあるという。実に素晴らしいソウル、ファンクミュージックですね。DJでかけますけど、すごく大事に扱ってかけます(笑)。

 

※リピート放送日:10/7(土)25:57~、10/19(木)25:57~

 

■リリース情報

RHYMESTER『ダンサブル』
レコードの日アイテム!!
LABEL : HMV record shop
品番 : HRLP097
価格(税抜) : 3,500円
http://レコードの日.jp/items/149

■RHYMESTER公式サイト
http://www.rhymester.jp/

 

スペースシャワーTV「Record People TV」
毎月第4木曜日 25:25頃〜25:30 リピート放送(レギュラー番組「JxJxTV」内)

http://www.spaceshowertv.com/program/special/record_people_tv.html