Last Update 2017.12.14

#5 レコードの日 イベントレポート&土岐麻子さん・イラストレーター本秀康さんミニインタビュー

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Record People TV 第5回目は、アナログレコードの魅力に触れてほしいという想いから3年前に制定された11月3日(金・祝)の『レコードの日』にちなんで、都内各地で催されたイベントを特集します。インタビューでは最新アルバム『PINK』のレコードを発売された土岐麻子さんのサイン&握手会に潜入。イベント終了後、土岐さんにレコードにかける想いを伺いました。さらに、新宿高島屋の特設会場で3日間にわたり開催されていた「MUSIC JACKET GALLERY 2017」では、トークイベントに登壇していたレコードファンにはおなじみのキャラクター「レコスケくん」の作者であり、雷音レコード主宰でもある本秀康さんにお話を伺いしました。レコードに思い入れのある方々から、楽しみ方やその魅力について、レコードが発売された特別な日ならではの想いを語ってくれました。

 

取材/文:冨手公嘉
写真:スペースシャワーTV

 

■HMV record shopコピス吉祥寺店

 

まず朝一番に向かったのは、HMV record shopコピス吉祥寺店。開店前にも関わらず既にそこには人だかりが…。それもそのはず、メジャー/インディー、邦楽/洋楽問わず80以上のタイトルが、この日レコード作品となって発売されており、生産が限られる貴重な盤を求めてレコードファンが詰めかけていたからです。開店するやいなや、すぐに売り切れてしまうタイトルもありました。

 

■土岐麻子サイン&握手会@ディスクユニオンお茶の水駅前店レポート

 

その後、我々が向かったのは、ディスクユニオンお茶の水店。今年1月に発売された土岐麻子さんの最新作『PINK』が、アナログ盤でこの日発売となったことを記念して、サイン会が開催されていました。詰めかけたファンは購入したレコードを手にサインをもらいながら、土岐さんとの談笑の時間を楽しんでいました。イベント終了後、土岐さんご自身が10代の頃から親しんできたレコードについてお話を伺いました。

 

——レコードの日に『PINK』のLPが発売されたことの率直な感想を教えてください。

私もレコードというメディアは原体験というか…音楽に触れた最初のモノなので。その形態で出せるということが嬉しいです。お客さんの中には、「今日はじめてレコードを買いました。これからアナログプレイヤーを買いに行きます」という方もいて。私のレコードが、きっかけになれたということもあって。そういうのも嬉しかったですね。もちろんレコードファンで「今日はレコードの日なので、これから色々見て回ります」という方もいらっしゃって。共通の趣味の話ができるような感じがして、すごく楽しかったです。

 

——10代の頃からレコード文化に親しまれていた土岐さんにとってレコードの魅力とは?

まず、音としての魅力は“フォーカス感”がありますよね。「いかに再現性が高いか」「いかにノイズがないか」「いかにつぶさに聴こえるか」みたいなところでどんどん技術が開発されていて。そういうのももちろん好きなんですけど。…レコードって、言ってみたら癖のある音が特徴で。その“癖の魅力”みたいなものがあるなぁと。まあ、私が子供の頃から聴いていたからかもしれないけど、それが落ち着く音なんですよね。後は、モノとしてかさばる魅力っていうのがあると思うんですよ(笑)。どんどんコンパクトになったり、実態のないものになったりと、かさばらない方向に行ってますけど。やっぱりこの大きさだからこその、モノとしての魅力があるなぁと。仕様にもこだわれますし、『大きいことは良いことだな』って思いますよね(笑)。

 

——土岐さんはどんな風にレコードを嗜んでいましたか? レコード初心者に向けて、楽しみ方のアドバイスがあればお願いします。

私は小さいときはジャケットを手に取って、じーっとジャケットを見ながら音楽を聴いていたんですね。例えばこの『PINK』のジャケットだと、街の写真が含まれているんですけど。ジャケットと音楽の連動性を楽しむというか。海のイラストの作品だったら、旅をするイメージで音楽を聴いていたので。ジャケットを見ながら、….凝視しながら聴いてほしいな(笑)。あとは、今配信とかCDで発売されていない昔のレアなレコードでしか聴けないモノってたくさんあるので。その発掘を楽しんでもらえたらなと思います。

 

 

■下北沢レコードマーケット@下北沢ケージ

 

お昼過ぎにやってきたのは、下北沢ケージ。今日は東京都内の20店舗ものレコード店が出展するイベント「下北沢レコードマーケット」。会場には、家族ぐるみでイベントを楽しむ姿や掘り出し物のレコードをDIGする人達の姿が。比較的若い世代のお客さんが多く、各ブースには黒山の人だかりができており、中を一周するのにも一苦労するほどの賑わいぶり。また、スペシャルフリーマーケットも行なわれておりDJ KRUSHさんの私物レコード販売や、主催者にゆかりあるアーティストの方々が出展するブームもあり、アーティストご本人がお客さんとお話する姿も見られたりと大盛況な雰囲気でした。

併設されたブースで同時開催していたのは、VIDEOTAPEMUSICとDJサモハンキンポーが主催するイベント「Sweet Memories」。こちらにはお酒を片手にユラユラとレコードから流れるDJプレイに耳を傾けながら身体を揺らす人たちの姿がありました。

三連休の初日ということもあってか、会場の賑わいに吸い寄せられるように、たまたま近くを通りかかった人達も出展されたアナログレコードやフリーマーケットのアイテムを手に取る姿も見受けられました。未だレコード文化に親しんだことのない人にとっても、この日のイベントは新鮮で発見のあるものだったのかもしれません。

そんな下北沢レコードマーケットを企画していたココナッツディスク代々木店の横尾さんに開催概要についてお伺いしました。

 

 

——イベントの概要について教えてください。

今回下北沢ケージで開催している下北沢レコードマーケットは、今年の5月に1回目を開催していて。それが好評だったので、今回第2回しているをレコードの日に合わせて開催することにしました。

 

——今回の見所について教えてもらえますか?

中古も新品も扱っている都内を中心とするレコード店20店と参加してもらっているんですけど。そのほかに、スペシャルフリーマーケットと題して、DJやラッパーだったりといった10組のアーティストさんに私物や個人の商品を出してもらっています。例えば、DJ KRUSHさんにはストック品として、サイン入りのレコードなんかもあったりして。掘り出し物がめちゃくちゃあるので、そういうものを売りにしていますね。

 

 

■MUSIC JACKET GALLERY 2017 〜Talking Music & Listening 〜@新宿高島屋 1階 JR特設会場

 

最後に訪れたのは、新宿・高島屋。外の特設会場に設けられていたのは「MUSIC JACKET GALLERY 2017  〜Talking Music & Listening 〜」という企画展。音楽メディアのアートワークとサウンドに触れる3日間というテーマで、音楽を観て、聴いて、楽しむイベントが11月3日から5日まで3日間開催されていました。

展示はいくつかのブースとセクションに分かれていて、日本盤のレコードの特徴である帯の魅力について触れるコーナー、最新の機材を用いたアナログレコードやカセットテープの聴き比べコーナー、「レコードの日」にアナログレコードをリリースしたアーティストらが選んだお気に入りのレコードジャケット展など、様々な切り口でアナログレコードへの楽しみ方を再提案されていました。

 

 

またイベントでは3日に渡り音楽界で著名な方々を招き、無料のトークセッションも行なわれていました。訪れた時間帯はビートルズ研究家・藤本国彦さんと、レコードファンにはおなじみのキャラクター「レコスケくん」の作者であり、雷音レコード主宰でもある本秀康さんの対談が行われていました。

テーマは「ビートルズのジャケット&レコーディング革命」。Technics「SL-1200GR」をはじめとするオーディオ機材を用いて「Tomorrow Never Knows」を『リボルバー』に録音されていたバージョンと初期デモトラックを聴き比べを実践。藤本さんが研究しておられるビートルズに関するエピソードが披露されたほか、ジャケットを眺めながら、レコードで聴いたアルバムの印象を答えるお2人に客席も熱心に耳を傾けていました。本さんはジョージ・ハリスンを偏愛しておられるようで、童心に返ったかのような純粋な言葉で、レコードとビートルズへの愛を語っている姿が印象的でした。

静かな熱狂に包まれたトークセッション終了後、ご自身が主催するレーベル雷音レコードから、発売となった2枚の7inch(キイチビール&ザ・ホーリーティッツの『パウエル』と℃-want you!「Don’t Touch Her!』)を引っさげて、レコード文化やレーベルをはじめた経緯について本秀康さんにお話を伺いました。

 

■本秀康さん

 

——本さんが雷音レコードを始めた経緯について教えてください。

僕がレコードレーベルをはじめた時は、レコード文化が下火になっていた時期なので、
レコードを買う人はマニアックな人しかいなかった。それをなんとかしたいなと。若い人にもレコードを買いやすい状況を作りたいなと思ってはじめました。なのでうちの7inchレコードは1000円で設定して発売するようにしています。

 

ーーその頃から比べてレコード文化は豊かになったの感じますか?

そうですね。レーベルを始めた当初は安いからプレイヤーを持っていないけど、グッズとして買ってみよう、って考える人が結構いてくださって。それはそれで嬉しいんですけど、どこか悪いことしているような気持ちもしていたんです。最近はブームになってきたことで、何枚かアナログレコードを既に所有している人たちのなかで聴きたいなと思った人たちが出てきてくれているようで。ブームになったことで、ようやくレコードプレイヤーを導入しはじめている人がでてきたみたいで。グッズとしてしか見てもらえなかったライオンレコードのレコードを音楽として楽しんでもらえるような状況になったことが嬉しいですね。

 

——本さんはレコードの魅力はどこにあると感じていますか?

所有する魅力ももちろんありますけど、僕自身がジャケットを見ながらレコードで音楽を聴いてきた世代なので。ストリーミングのジャケットがない状態で音楽を聴いてもどうも頭に入ってこなくて(笑)。やはりジャケットがあって、モノがあってという方が、音楽の魅力が倍増するんじゃないかな、と思っています。

 

——トークイベントではビートルズの『リボルバー』のジャケットを見てアルバムを聴いていたので、音楽自体もモノクロの世界観で解釈していた、というお話もされていました。

そうですね。そういう楽しみ方ができるのもレコードの魅力かなって思います。

 

——最近レコードを聴き始めた人たちにどういう風に楽しんでもらったらいいと思いますか?

7inchで聴くと確実にアナログの暖かい音がして…CD音源で聴くよりも、音楽の魅力が広がると思うので。自然とレコードを集めたいという人がどんどん増えていくといいなと期待しております。

 

 

■レコードの日公式サイト
http://レコードの日.jp/