Record Store Day開催記念 レコードショップ担当者&松田chabe岳二 スペシャル座談会
ー全然売れなかったってやつが、その後輝きますよ。アナログはー
ーー作って終わりじゃない、ってことですよね。
ココナッツ矢島 レコ屋に来てもらう日、みたいな意識ですかね。RSDって。
chabe 何千人かきたら、その中でそれが日常になっていくっていう人も出てくるはずで、それは確実に増えてると思いますね。
ココナッツ矢島 増えてると思います。10年前と比べると増えてる。
chabe 若い女の子がDJをレコードだけでやってるとか、増えてますよね。ユニオンの10Fいく人とか増えてるようなイメージはありますね。それこそココナッツの各店舗の特色で、私はここが好きとか、色々あるんでしょうね。水原希子、佑果姉妹がココナッツディスク代々木店に来て、DJしたりとか。よくこんなの持ってるな〜っていうのを、すごい気持ち良さそうにずっとかけてたり。
DU池部 自分の働いてるフロアは古いロック専門のフロアだったりするので、お客様の層自体は40〜50代の方が多いのですが、その中で女性とか若い方は少なからず、昔に比べたら増えてるとは思いますね。でもやっぱり、90年代が青春だった人たちが、その当時CDで聴いていたものをアナログで買い直すみたいなのは増えています。ここ数年、90年代ロックの中古市場の上がりっぷりは尋常じゃないですね。
JET SET中村 Discogs以降ですよね。USのオルタナ系は海外のニーズがすごいですものね。
ココナッツ矢島 結構年配の人でも、90年代のロックをLPで買ったりしてますね。あっ!!っていう感じで。ニルヴァーナとか。逆にリアルタイムじゃないというか。生まれてるけど当時は聴いてなかったけど遡って聴いたりとか。G.LOVEとか「こんなのあったんだ」みたいな。アナログ好きな50代だけど、90年代はスルーしてて、意外と90年代のものをアナログで聴くと良いな、みたいな感じで結構買ってたりとか。オリジナル盤崇拝みたいなのあるじゃないですか。ニールヤングをファーストプレスで買うみたいな。その流れが90年代の作品にも来てる。ニルヴァーナとかオアシスとか初回盤が欲しいみたいな。それが値段上がると欲しくなっちゃうみたいなところがあると思うんですよ、その世代の方って。今までうちで出してても見向きもしなかったけど手が止まってたりとか。レディオヘッドとか。
JET SET中村 全体的にレコードの買い方は昔とかわっていますからね。僕らみたいに90年代のアナログ・ブームの時に買いはじめた人たちと、今の若い子たちとは買い方が全く違うじゃないですか。今の若いお客さんはこれっていう1枚を決めて買う感じで、僕らの世代みたいに毎月20枚も30枚も買ったりとかしないですよ。chabeさんがDJやっている子とかも多いって言っていましたけど、JET SETで買い物している子たちは、ほとんどレコードでDJしようって発想はしていないと思います。普段はストリーミングで聴いているけれども、大好きなアーティストのこの1枚はフィジカルで持っていたい、そういう時の選択肢になっているのかなと。だから輸入盤は顕著なのですが、一時よりはLPのリリースは増えている一方で、シングル・リリースが少なくなってきている気がします。ただ、そうなると難しいですよね。内容がまあまあのアルバムってほんとうに売れなくって。70点ぐらいまでのは買わない。85点以上じゃないと買わないみたいな。でも、そんな名盤、今年の年間トップ10みたいなものだけでは、お店の棚は埋まらないですからね(苦笑)。
ココナッツ矢島 その時売れなかったやつが後で売れたりするから。あの時あんな余ってたのになあ、買っておけばよかったみたいな。その時はすごいみんなが買ったから別に10年後なんてことないんだけど、その傍らで全然売れなかったってやつが、その後輝きますよ。アナログは。
JET SET中村 それで言うと僕なんかはアリエル・ピンクですね。2000年代前半の彼の作品を、いいなと思って買っていたのですが、人気が出てからの活動と一致していなくて。再発されるまで持っていることすら忘れていました(笑)。自宅のレコード棚を見ていたら、あれ?これこの前に再発していたやつだ、みたいな。
ココナッツ矢島 そういうところを伝えていきたいですね(笑) やっぱり目玉とか、下馬評とか、みんなそこいくじゃないですか。
JET SET中村 もう一番人気がなさそうなやつを買えばいいんじゃないですかね(笑) これはなんで出したんだ???っていう謎のやつを積極的に選ぶ。
DU池部 国によって違ってくると思うんです。日本てまだCDも売れる国で。アメリカとかはよりストリーミング化してる国で。まだいろんな中和する選択肢があるので。
2016年ディスクユニオン新宿ロック新品ストア RSD当日の様子
chabe 日本はゆっくり進行してるんじゃないですか、spotifyとか。今、高校生とかは絶対買わないと思うし、ほとんど月額制だと思いますよ。若い子の方がそういうものに対して馴染んでるから。50代の人は、「ものが欲しい、物として持ちたい」とか、そういう感覚がある。
JET SET中村 最近、ダウンロードすら、「え、ダウンロードしてるの?」みたいな感じになりますからね。
chabe 「メモリー食うじゃん?」みたいな。感覚が全然違うんですよ。特典のおまけが欲しくて、CD買って、お父さんのPCに取り込んだらCD捨てるって聞きましたよ。ブックレットはどこかに取っておいて。そうなると、家にすでにCDプレイヤーもなくなってる家庭が増えてるんでしょうね。
ココナッツ矢島 僕ちょっとわかりますよ。LPとかアナログにCDついてるやつとか、捨てたくなりますよ(笑) いらないから。
chabe CDでしか出てない新譜とか買ったり友達にもらったりとかしてPCに入れて、これあの人に聴いて欲しいなみたいなのは、持ってても仕方ないからあげたりはしますけどね。音楽の器として何がいいかっていう話で。レコードは全然別物で、器じゃないっていうか。CDはデータの器で、データって実体がないものだから。だから、最近の若い子には、CDよりレコードの方がフレッシュなんじゃないですか。そういう風に感じる子が多くなると良いなとは思ってますけど。BIGLOVEに若い子が集まったりとか。かっこいいと思う人たちもいるんでしょうね。まあ、東京だから、そんな人たちがいてもらわないと困ると僕は思ってますけど。
DU池部 海外のアーティストは新譜出たらCDとレコード、なんならカセットも一緒に出すじゃないですか。総じて日本のメジャーアーティストの新譜はよっぽどのことがない限りアナログで出すこともないし、そういうものを知る機会すらないんじゃないですかね。日本の音楽業界のシステムなのか分からないですけど、日本のアーティストがリリースしても、国内のみになっちゃってて、もう少し海外でも流通できるような仕組みができると、プレス枚数とかも増えるだろうし。
ーストリーミング世代にも興味を持ってもらえるレコードがリリースされないとー
ーー今話が意外な方向に進んでて、音楽が好きっていうよりものが好きって方向に行ってるような気がするんですが。
JET SET中村 ことRecord Store Dayっていう話で言うならば、レコードっていう物体が好きな人が集まっているんですよ。
chabe レコード屋さんとかDJが集まると仕方ないですよ。癖ですから。
JET SET中村 (ものがいらない時代っていうのは)極論で、実際はそんなに極端ではなくて。普段メインではデータで買っている子たちも、楽しめるインフラ環境さえあるのであれば、好きな作品をレコードで持つことは嬉しいと思うのですよ。きゃりーぱみゅぱみゅでもH Jungle with tでも、もちろんSuchmosでもD.A.N.でも、きっかけはなんでもよくて。
chabe それでプレイヤー買ったら、結構始まる感じはあるよね。プレイヤー買わせるところまで行ったら結構理想だよね。
JET SET中村 ストリーミング世代にも興味を持ってもらえるレコードがリリースされないと、将来にわたって仕事として継続できないわけですから。皆でレコードを好きになってもらえるあの手この手を考えているわけですよ。Record Store Dayも、そんな入口の一つとして定着していくと良いですね。
==今年も4月22日のRecord Store Dayがんばってください!
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ココナッツディスク吉祥寺店
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4/25 (火) 新代田FEVER
ABSOLUTE LEARNERS #16
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open 19:00 / start 20:00
ADV ¥2,800 (+1DRINK)
DOOR 3,300 (+1DRINK)
取材/構成:Record People Magazine 編集部
撮影:福士 順平
取材協力:Bar Blen blen blen (http://www.blenblenblen.jp/)