Last Update 2022.4.22

Interview

わたしを作ったレコードたち 第4回 / 西内徹

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21年10月20日、西内さんが還暦を迎えた誕生日に渋谷クラブクアトロで行われた記念のライブ〈テ祭 2021〉には、西内さんのキャリアの幅広さと人柄を示すように、近年西内さんがサポートしている坂本慎太郎をはじめ、すごいメンバーが集まった。バンドセットの西内徹&Yamande、大所帯のチンドン屋編成の西内隊。2部構成でたっぷりと行われたあの夜は、ぼくの21年のベストライヴのひとつだ。

そして、好評だった西内さんのセカンド・アルバム『西内徹&Yamande』から、女性シンガーARIWAをフィーチャリングした人気曲「知らぬ間に心さわぐ -You Brought A New Kind Of Love-」が4月23日の〈RECORD STORE DAY 2022〉に7インチでリリースされる。そのタイミングで、2度目の西内さん取材が実現した。

じつは、ファースト・ソロアルバム『西内徹バンド』が出た2012年に一度取材してるんだけど、そのことを伝えても、いつも「まったく覚えてない」という答え(ぼくも「やまんです」を何度も聞いたという印象が強すぎた)。

まあいいか。坂本さんのツアーを通じて西内さんとは砕けて話せるようにもなったし、ものは考えようで、西内さんが本当に初回の取材を忘れてくれているのなら、「はじめまして」みたいに好きなレコードの話をたっぷりと聞ける。

では、まずは1杯目のビールと、乾杯代わりの「やまんです」から。

取材/文:松永良平
撮影:松下絵真
撮影協力:QUATTRO LABO

 

──ひさびさ更新の連載第4回。今回はサックス・プレイヤーの西内徹さんをお迎えしました。西内さんのレコード史、めちゃめちゃ興味深いので、曲を聴きながらいろいろ話していただけたらうれしいです。

 

西内 やまんです。

 

──西内さんの音楽歴って、どこから始まってるんですか?

 

西内 小学生くらいで聴いたフォークとかですかね。姉の影響で、吉田拓郎とか。アルバムでいうと『元気です』(1972年)あたりですね。自分で初めて買ったLPは『氷の世界』(井上陽水/1973年)でした。

 

──サックスはいつ頃から?

 

西内 それは大学(北海道大学)に入ってから。

 

──そうなんですか。中高で吹奏楽部とか、ではなく?

 

西内 (吹奏楽部は)ダサすぎて(笑)。無理無理無理無理!

 

──どうして大学生ではOKになったんですか?

 

西内 それはあれですよ、ポップ・グループとかを聴いたから。あれくらいだったらサックス、すぐ吹けそうじゃないですか(笑)

 

──ポップ・グループの衝撃は大きかったですか。

 

西内 そうですね。枠を壊してくれるというか。パラダイム・シフトだったような気がします。スロッピング・グリッスルも、キャバレー・ヴォルテールもそうだったし。あんまり演奏できなくても、リズムボックスとか使えばできちゃう。

 

──そういう情報はどこで知ってたんですか?

 

西内 雑誌だと『ミュージック・マガジン』とか、あとは札幌市内のレコ屋。ジャケ買いとかで。当時だと〈レコーズ・レコーズ〉って中古屋と、〈ディスク・アップ〉っていう輸入盤屋……、〈CISCO〉もありましたね。

 

──音楽サークルには入ってました?

 

西内 一応入ってたけど、ぜんぜん行ってないですね。いろいろ音楽の話をしてたのは、北村(エマーソン北村/北海道大学の同級生)くらいですかね。JAGATARAとかは北村に教わりました。彼はフリージャズも詳しかったですね。

 

──では、このへんで最初の1枚を聴きましょうか。どれにします?

 

西内 最初は……やっぱりこれで。

 

①The Pop Group / For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder? (Rough Trade 1980)

 

──セカンドですね。

 

西内 パンク・ニューウェイヴだとバズコックスとか(セックス・)ピストルズも買ってたけど、「自分を作った」ということになると、サックスも入ってるし、やっぱりこれかな。

 

──ちなみに、初めて買ったサックスは?

 

西内 買ってなくて。大学のときに友達と「人生ゲーム」で賭けをしてたんですよ。そいつがサックス持ってたんで、勝ったときカタにもらったんです。

 

──賭け「人生ゲーム」の戦利品!(笑)

 

西内 ヤマハのカレッジ・モデルでしたけど、すごい吹きやすいやつでしたね。そいつもニューウェイブ好きで、なんとなくおしゃれグッズとしてサックス買ってはみたもののぜんぜん吹いてなかったから(笑)

 

──すぐに音は出ました?

 

西内 吹いたらすぐ。まあ、こんな感じ(店内で流れる「Forces Of Operation」)ですよ(笑)。何年か前に吹奏楽の映画(『スウィングガールズ』)があったでしょ? あの映画で竹中直人がデタラメなサックス吹くシーンがあるけど、あんなもんでした。

 

──でも、音が出ると快感になりますよね。そういえば、前に坂本慎太郎さんのツアー中のどこかで、西内さんとイアン・デュリーがブロックヘッズの前にやっていたバンド、キルバーン&ザ・ハイローズの話をした記憶があります。

 

西内 パブロック好きですから。

 

──キルバーン&ザ・ハイローズ時代からブロックヘッズに至るまで、イアンにはデイヴィ・ペインという相棒にして名サックスプレイヤーがずっといましたが。

 

西内 はい大好きです。その流れで次はこれを。

 

②Ian Dury & The Blockheads / Do It Yourself (Stiff 1979)

 

──お!

 

西内 ファースト(『New Boots And Panties!!』1977年)はあんまりサックス入ってないんですよ。このセカンドだと、B面後半の「Dance Of The Screamers」からのラスト「Lullabies For Franci/es」への流れが最高。でも、ライヴは見たことないんですよねー。

 

 

──本当ですか? (忌野)清志郎さんがブロックヘッズとソロ・アルバム(『Razor Sharp』1987年)作ったりして、80年代後半からまた人気が盛り上がった時期があったんですよ。何回か来日もしましたし、ぼくも何度か見た記憶があります。

 

西内 いいなあ。イアン・デュリーはかっこいいとしか言いようがないですよ。

 

──ポップ・グループもそうですけど、知らず知らずのうちに黒人音楽を音楽から教わってたところもあるような。

 

西内 でも、ソウルとかはあんまり聴いてないんですよ。むしろレゲエとの共通点が多い気がしてました。

 

──イアン・デュリーはスライ&ロビーとやったレゲエ・アルバム(『Lord Upminster』1981年)もありましたけど。

 

西内 あれ、あんまりよくないじゃないですか(笑)。スラロビが他の人とやっ他のでは、グレース・ジョーンズとか、ゲンズブールの(『Aux armes et cætera』1979年)はよかったけど。

 

──西内さんが感じるニューウェイヴやポストパンクとレゲエとの共通点って、どういうところですか?

 

西内 ポップ・グループだと、最初のプロデューサーがデニス・ボーヴェルだったりするし、ダブ処理や音色とかがおもしろかった。もちろん、(当時はやっていた)スペシャルズとかネオスカのバンドも大好きだし今でも聴きますけど、自分を作ったかと言われるとどうなのか、という感じ。

 

──UKレゲエもその頃結構日本にも紹介されてましたよね。ブラック・ウフルとかアスワドとか。

 

西内 ブラック・ウフルはそんなに好きじゃなかった。暗いから(笑)

 

──じゃあ、レゲエのアーティストでいちばん最初に好きになったのは?

 

西内 (取り出して)このへん(ジミー・クリフ『Harder They Come』)かな。

 

③O.S.T. Jimmy Cliff, etc. / The Harder They Come (Island 1972)

 

西内 これがいちばん最初に買ったレゲエのレコードですね。買ったのは78年くらいですかね。

 

──映画も見ました?

 

西内 当時はなかなか見れなかったから「どんだけおもしろいんだろう?」って想像したけどね。札幌に〈駅裏8号倉庫〉っていうサブカル的なイベントとかライヴをやる場所があって、そこで見て、超つまんなかった。まあ、下手なニューシネマみたいで、味わい深いんだけど(笑)。

 

 

──このアルバムはサントラだけど、レゲエの入門編として最高のオムニバスみたいなところがありました。ジミー・クリフ以外にもメイタルズとかのいい曲しか入ってない。

 

西内 おれ、なにしろオムニバスが好きなの(笑)。(オリジナル)アルバムだと結構つまんない曲も入ってるじゃないですか。

 

──確かに(笑)。

 

西内 オムニバスはいいですよ(と言いながら次のレコードを取り出す)。

 

④Various Artists / This Is Reggae Music (Island 1974)

 

西内 これはアメリカ盤なんですけど、ミックスかマスタリングがUKとは違うような感じがして。結構ドンシャリ(高音と低音が強い)になってるんですよ。ハットがね、デカくてバキバキなの。それぞれのアーティストのオリジナル・アルバムを聴くより、このオムニバスのほうが音がいいくらい。

 

──確かにすごく低音も強いかも。

 

西内 でしょ? でも、この流れだとレゲエばっかりになっちゃうから、こういうのも行っときますか。

 

⑤Various Artists / No New York (Antilles 1978)

 

西内 これも80年くらいに聴いたのかな。

 

──まあ、これもオムニバス好きという範疇に入るのかも。4バンド入ってるし。

 

西内 コントーションズ、DNAのふたつが好きで、あとのふたつはよくわかんない(笑)。本当はテレヴィジョンを持ってきたかったんだけど、こないだ人にあげちゃって。

 

──へえ! 『Marquee Moon』(1977年)ですか?

 

西内 いや、セカンドの『Adventure』(1978年)。あれはめっちゃいいですよ、穏やかで。(流れてきたコントーションズを聴きながら)これは相当影響受けたっすね。でも、そんなに何回も聴くような音楽じゃないから、今でも盤質がいい(笑)

 

 

──裏ジャケのジェームス・チャンスの顔に青アザあるのは、確か前の日に殴られたからでしたよね?

 

西内 かっこいい。他にいっぱい写真もあっただろうにね。DNAのアート・リンゼイはこのあとラウンジ・リザーズでしょ。じゃあ、その流れでジャズもかけましょうか。

 

⑥Abdullah Ibrahim (Dollar Bland) / Duke’s Memories (String 1986)

 

──アブドゥーラ・イブラヒムことダラー・ブランド。『African Piano』(1974年)とか、ぼくも聴きました。ジャズはどんな感じで聞いてたんですか?

 

西内 札幌に〈ジャマイカ〉っていうジャズ喫茶があって。大学生の頃、〈ジャマイカ〉っていうからレゲエの店かなと思って入ったら、もうゴリゴリのジャズ喫茶だった(笑)。話してたら怒られる感じ。でも、ポップ・グループつながりで名前を知ってたエリック・ドルフィーとか(アルバート・)アイラーとかがかかってて、1、2年通いましたね。そしたら、あるときバイト募集してたんで、応募したら雇ってもらえることになったんです。

 

──そうなんですね! 西内さんにジャズ喫茶の店員時代があった!

 

西内 それがきっかけでジャズも聴きだしました。でも働いてみてわかったけど、1日8時間ジャズだけって結構キツかった(笑)。だから家に帰ったらヘッドホンでダブとかをガンガン聴いて、なんとか保つ、みたいなね。

 

──ジャズ喫茶って、お客さんのリクエストも受け付けてるから、自分が好きな曲ばかりでもないし。

 

西内 そうそう。キース・ジャレットとかリクエストよく入ってたけど、本当にいやでしたもん(笑)。あいつ、マイルスのバンドではかっこいいのに、ソロになったらミャーミャー唸ってうるせえの(笑)

 

──すごいなと思ったレコードはありました?

 

西内 フリー・ジャズですね。アート・アンサンブル・オブ・シカゴ、ドン・チェリー、アーチー・シェップとか。でも同時に(セロニアス・)モンク、(チャーリー・)ミンガス、(デューク・)エリントンなんかもかっこいいなと思って聴いてましたね。

 

──そのなかで知ったひとりが、ダラー・ブランド。

 

西内 このアルバムの1曲目「Star Crossed Lovers」をぼくのファーストでカヴァーしました。あー、いい曲。この曲のフルートのカルロス・ウォードはサックスも吹いてるんですけど、最高に好きで。

 

 

──西内さんの大好きなローランド・カークもそうですが、フルートとサックスを両方吹く人って結構いますよね。それは共通性があってやりやすいとか?

 

西内 いや、演奏法は似てるけど、ぜんぜん違います。でも、ひとつの楽器だと同じアプローチしかできないから、飽きるんですよ。というか、一緒にやってる人もサックスの音色ばっかりだと飽きるんじゃないかと思っちゃう。

 

──フルートはいつ頃から吹くようになったんですか?

 

西内 持ってたのはサックスより前なんですよ。

 

──あの「人生ゲーム」のサックスよりも?

 

西内 そう。でもフルートはなにしろサックスより難しいんで。音も出ないし。ちゃんとやろうと思ったのは30歳過ぎてからかな。DRY&HEAVYとかを手伝ってたとき、フルートもいいかなと思ってから練習しはじめた。でも、おれみたいなのは吹けてるうちに入んないですから(笑)

 

──いやいや、こないだの〈テ祭〉(2021年10月20日)で坂本慎太郎さんのバックでやった「ディスコって」、すごいよかったじゃないですか。あのときは西内さんがアルバムでは重ねて吹いてたのを、ハラナツコさんとのツインフルートで再現してました。

 

 

西内 あれはよかったすね。録音を再現しつつ、レゲエ風味もあって。ていうか、あの日は全部よかったです。

 

──ちょっと話は札幌時代に戻りますけど、大学卒業後はどうしようと思ってたんですか? 上京のタイミングとか。

 

西内 ……なにも考えてなかった(笑)。北村と大学入った年は一緒なんだけど、あいつのほうが3年くらい先に出て東京行ってて。東京で音楽やってるって聞いて、いいなって思ってましたね。それで俺も東京に行っちゃおうかなと思ったのかな。

 

──音楽をやりに?

 

西内 いやいや、コンピューターの仕事で。就職しました。当時、もう結婚して子どももいたんで。

 

──なんと! じゃあ、ご家族で上京されたんですね!

 

西内 まあ……、無責任でしたね。その会社も4年で辞めて、チンドン屋になっちゃったし。というか、チンドン屋に出会って、「これで会社辞めれるんじゃねえか」と思ったから辞めた。まあ、甘くはなかったですけどね……。

 

──さっき、DRY & HEAVYのレコーディングに参加というエピソードがありましたけど、音楽活動がわりと転がりだしたのもその頃ですか?

 

西内 ランキンタクシーさんのバックバンドに入ったのが30過ぎで。そのあとにドラヘビに参加したり、Reggae Disco Rockers結成があって、川上つよしと彼のムードメイカーズに参加したくらいからかな。

 

──だいたい90年代後半から2000年になるくらいの感じですね。

 

西内 その間チンドン屋もずっと並行してやってましたから。じゃあ、ここでぼくのいちばん好きなサックスを聴きますか。

 

⑦Deadly Headly / 35 Years From Alpha (On-U Sound 1982)

 

──おお、これが。

 

西内 サックスだとローランド・カークも好きですけど、カークはみんなが好きだから、今日はこっちで。おれ、もともとはこの人と同じアルトだったんですよ。アルトのほうが軽いからラクなんですけど、ヴォーカルと音域がかなり近いんで、上手じゃないとうまくできないというか。

 

──これ、ON-Uなんですね。ゴリゴリですね。かっこいい。

 

西内 しかもバックはダブ・シンジケート。そfれで、今回おれが出すシングル(西内徹&Yamande featuring ARIWA「知らぬ間に心さわぐ」)のB面が「Tribute To Deadly」というオリジナル曲なんです。

 

──タイトル通り、デッドリー・ヘッドリー・ベネットに捧げた曲なんですね。

 

西内 この(リズムへの)引っ掛け方が好きなの。サックスもぜんぜん気張ってない。こんなふうにできたらいいんですけどね。おれがチンドン屋に入ったときにいたベテランの人も、ぜんぜん力入れないで吹いてて。こっちはつい力入れちゃうから、そういう張ってない感じに憧れるんですよね。でも、「Tribute To Deadly」では、似た感じが出せたんじゃないかな。おれも枯れてきたのかも(笑)。

 

⑧Robert Wyatt / Nothing Can’t Stop Us (Rough Trade 1982)

 

──おお、ロバート・ワイアット。

 

西内 このアルバムは、たぶん、出たとき買ったんです。ラフ・トレードが好きだったから。ジェームス・ブラッド・ウルマートかもラフ・トレードで出してましたよね。ロバート・ワイアットのことは知らなかったですけど、これを聴いてからソフト・マシーンも聴きましたね。

 

──エルヴィス・コステロが提供した名曲「Shipbuilding」収録でもあります。

 

西内 あれもいいし、これもいい。

 

──アルバムでも〈テ祭〉でもやった「At Last I Am Free」の西内さんヴァージョンも素晴らしいです。

 

 

西内 いやー、うれしいです。レゲエにアレンジしてやってもよかったんだけど、なんかちょっと違うかなと思って。

 

──この曲をカヴァーしようと思ったのは?

 

西内 ……好きだから(笑)。別にレゲエでやんなくてもいいのか、好きにやればいいんだなって思ってやりました。

 

──「テ祭」ではこの曲で坂本さんがギターソロを弾いて。

 

西内 プログレ感あったすよね。

 

⑨Dennis Bovell / Brain Damage (Fontana 1981)

 

西内 デニス・ボーヴェルかけましょうか。このアルバムは出たときすごく評判悪かったんですよ。なんなんですかね? おれはこんなに好きなのに。

 

──サイン入ってるじゃないですか! 「To Tetsu, My Favorite Sax Player」って書いてある。

 

西内 日本に来るたびに一緒にやってるんですよ。

 

──どんな人なんですか?

 

西内 まあ、やまんな人。

 

──(笑)

 

西内 やまんな人としか言いようがない(笑)。でも、大ファンだった人と一緒にやるようになるなんて、おもしろいですよね。デニス・ボーヴェルは相当にいろんな音楽の素養がすごい人。全部の楽器ができるし。しかもライブのときは、中の音が小さいんですよ。つまり、モニターの音がすっごく小さい。モニターがうるさいやつがいたら「Too loud!」って怒られてましたね。

 

──西内さんは、どういうところが気に入られてるんだと思います?

 

西内 一緒な感じになるからじゃないですか?

 

 

──一緒な感じ……。そのことに通じてるかわからないけど、〈テ祭〉を見ててつくづく思いましたけど、一部は西内徹&Yamandeによるアンプを通したバンド・セット、二部は大編成のチンドン・ユニット、西内隊で、こちらはマイクで音は拾ってるけど基本的には生音で合わせていくじゃないですか。ゲストで出てきた梅津和時さん、T字路sの妙子さんも交えて、自由奔放な感じ。あのふたつのセットを一晩でやれるのって、西内さんならでは。

 

西内 まあ、2日に分けるとか、つまんないじゃないですか。1日でやるからおもしろい。

 

──バンドもチンドン屋も両方やってきたからできるというのもあるし、鳴ってる音だけじゃない、そこにある何かをつかんでるからじゃないかと思ったんです。あれは21年に見たベストライブのひとつでしたよ。

 

⑩Burning Spear / Garvey’s Ghost (Island 1976)

 

──そして最後の一枚が、バーニング・スピアのダブ・アルバム。

 

西内 これは高校生のときに買ったんですよ。雑誌でバーニング・スピアという人がいいらしいという記事を読んだけど、高校が苫小牧で、輸入盤屋なんてぜんぜんない。当時東京に住んでいた姉に「レゲエという音楽があって、バーニング・スピアという人がいるんで、その人のレコード買ってきて」とお願いしたんです。そしたらこっち(ダブ・アルバム)買ってきちゃって(笑)。「歌入ってない! なんだこれ!」って(笑)

 

──間違えてたと(笑)。でも、それが初めてのダブ体験になったんですね。

 

西内 そうそう。でも、ものすごく聴いた。だからそれで注入されたんでしょう、「何か」を。歌はないけど、音が気持ちいい、とか。初めはスカスカと思ったんだけど、今聴くと密度がすごいすよね。

 

 

──ちなみに、歌入りのオリジナル(『Marcus Garvey』)も、あとでちゃんと買ったんですよね?

 

西内 あー、歌入ってるとこんな感じになるんだ、って(笑)。歌詞も読んで、「政治的なんだな」とか思った。

 

──こういうのが最初に自分の体に入っちゃったことが、その後を決めたようなところがありますか?

 

西内 あるんじゃないですかねー。しかもこれ、ミックスがキング・タビーじゃない人なんですよ。キング・タビーはもっとエフェクト使ってビシャーって音を飛ばしたりするんだけど、このアルバムのミックスって、ほぼ音の抜き差しで出来てる。今も、こういう音がダイレクトに来るようなダブのほうが好きです。さっきのデッドリーのアルバムもエイドリアン・シャーウッドがミックスしてるけど、そんなにエフェクト飛ばしてないし。

 

──最後に高校時代の原点といえる1枚に戻ったの、すごくいいですね。では、最後に今日、「知らぬ間に心さわぐ」のアセテート盤(テストプレス)があるそうなので、それを聴いて終わりにしましょうか。

 

 

 

西内 いやー、ARIWAちゃん、最高ですね。『紅白歌合戦』とか出たいですね。西内隊でフジロックにも出てみたい。

 

──それ、最高に似合うと思います。ステージ離れて、会場内のどこまでもチンドン屋で行ける。坂本慎太郎さんも新作(『物語のように』)が出ますしね。また世界のあちこちでお会いできたらいいし、いろいろ楽しみです。

 

西内 やまんです!

 

【作品情報】

アーティスト:西内徹 & Yamande
タイトル:知らぬまに心さわぐ -You Brought A new Kind Of Love- feat.ARIWA
レーベル:maze
品番:MZM7-001
Format:7inch
価格:1,818円(税抜)
発売日:2022年4月23日(土)