Last Update 2017.6.26

Interview

DJ YASの「証言」

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「証言」という凄まじい熱量が詰めこまれた日本のラップ史における重要作はどれだけの人間の人生を狂わせてきたのだろうか。この日本語ラップ・クラシックとして知られる、7人のラッパーのポッセ・カットは1995年に録音されている。そして1996年にアナログ、続いてCDでリリースされた。LAMP EYE(RINO、GAMA)に、のちにLAMP EYEとともに雷(現・雷家族)を立ち上げるYOU THE ROCK☆、G.K.MARYAN、TWIGY、そこにZEEBRAとDEV LARGEといったラッパーが加わった。ビートを作ったのは、LAMP EYEのDJ YASだ。「証言」は、当時テレビや雑誌などで注目され始めていたヒップホップへの強烈なカウンター・パンチだったが、結果として2016年現在まで続くハードコア・ヒップホップの源流となった。

 

そして、20年の時を経て、11月3日のレコードの日にあわせて「証言」がDJ YAS主導の下、7インチとして再発される。先日DOMMUNEで「20年目の『証言』」という番組も放映され、RINOとDJ YASをはじめ、YOU THE ROCK☆、LAMP EYEのデビュー・マキシシングル「下剋上」をプロデュースした高木完、音楽評論家の荏開津広、NITRO MICROPHONE UNDERGROUNDのMACKA-CHINらが出演した。「証言」のレコーディング風景も公開されて大きな反響を呼んだ。

 

YOU THE ROCK☆は番組で「Pro Toolsがない時代だから、そのおかげでああいう作品ができた」と語ったが、たしかにこの作品にはテクノロジーの進化とともに失われつつある人間の生々しい魂の叫びが刻み込まれている。「証言」を聴くと、技術や戦略やコンセプトではなく、エネルギーを爆発させることでしか到達し得ない芸術の領域があることをわれわれは知る。DJ YASは7インチ化に際して自らリマスタリングも施している。そのDJ YASに「証言」についておおいに語ってもらった。インタヴューは、DOMMUNEで「20年目の『証言』」が放映される数日前の昼下がりに行われた。

 

取材/文:二木信

撮影:豊島望

 

――「証言」という曲に対するYASさんの率直な想いから語ってもらえますか。

 

やっぱり自分の人生を変えた曲だよね。あの作品を生んでたくさんの人たちに聴いてもらって支持されたから、今回もこうやってリリースできるしね。だから、「証言」は人生のターニング・ポイントになった曲だね。

 

――制作の過程で「これはクラシックになる」という実感はありましたか?

 

当時は、自分が常にそう感じられるような曲作りをしてたね。「証言」のビートはサンプラーを買って1、2年目ぐらいのときに作った曲だった。レコードからサンプリングして曲を構築していく技術やイロハはKRUSHさん、MUROさん、DJ GOさんから教わった。KRUSHさんがサンプラーを買ったころに傍にいたから、ビートを黙々と作ってるところを近くで見させてもらってた。「これは何だ!?」という感じで面白くて、それで俺もサンプラーを買ったんだ。「証言」はサンプラーで音楽を作り始めて20曲目ぐらいの曲だと思う。たぶん最終レコーディングが95年12月で、96年に先にアナログで出しているよね。

 

――「証言」の制作の背景にはいろんな説があるじゃないですか。

 

いろんな説がね。

 

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――はい。YASさんからみて、「証言」はどのような状況で制作され、誕生したと考えていますか。

 

95年に渋谷のCAVEが、(高木)完さんプロデュースのレーベルとして〈VORTEX〉を立ち上げて、その第一弾のアーティストがRINOに決まった。当時俺はCAVEのハコ付きDJをやってたんだけど、RINOは自分のグループにはDJ/トラックメイカーがいるからと俺をプッシュしてくれた。完さんは全体を見るエグゼクティヴ・プロデューサーの立ち位置になって、トラックは俺が作って3曲入りのマキシ・シングル「下剋上」を6月に出した。それがはじまりだよね。95年のころは渋谷のスクランブル交差点のモニターは三千里薬局の上にある一個だけだったけど、そのモニターに渋谷の音楽チャートが出るんだよね。ある日、渋谷を歩いてたら「下剋上」が5位にランクインしているのを目撃してすごく驚いたのをおぼえてる。そういう経験は初めてだったからさ。「下剋上」はすごく好セールスだったのね。それでレーベルの方から次の曲のためにバブリーなスタジオを3日間自由に使っていいと言われる。それが8月の真夏だったね。当時はスタジオにデモ・トラックの入ったサンプラーなんかの機材を持ちこんで、さらにそこでビートを組んで流し込んだりしていた。スタジオに入るまで何も決まっていなくて、その場で「じゃあ、ビートを決めようか」ってRINOと相談してた。そこであの「証言」のビートが決まるんだよね。

 

――曲のコンセプトについては当時どういうやり取りがあったんでしょうか?

 

曲のコンセプトに関してRINOの頭の中に最初からあったかもしれないね。「MASS 対 CORE feat. YOU THE ROCK★ & TWIGY」(ECD『ホームシック』収録。1995年発表)じゃないけれども、当時はそういうマスに対する見方や気持ちがあった時期だからね。その部分をそれぞれが膨らませていった結果、あの曲は生まれたと思う。まだみんな22、23、24歳ぐらいで、一番年上がDEV LARGEで、その次がG.K MARYANだった。みんな若くて、それぞれにいろんな目標や夢がある中で、見てるところがちょうど一点に重なったのが「証言」だったんじゃないかと思う。LAMP EYEでデビューした年ではあったけど、実質は雷として活動してる時期だったしね。そこにZEEBRAとDEV LARGEが加わった。それは俺からの発案ではなくて、俺が見るには全体をリードしていたのはRINOだった。だけど、意図的に絡み合わせようと思ってもできることじゃなかった。本気の気持ちが自然と交差したからこそすごいエネルギーになったし、それがみんなに伝わって支持を得たんだと思う。

 

――YASさんはラップのレコーディング、声録りすべてに立ち会いましたか?

 

全部いたね。そう、最近マスターテープを立ち上げる機会があったんだよね。前々からそれぞれのラップのヴァースを分けたりしたアカペラのデータが欲しかったのもあったから。そのためにマスターテープを引っ張り出そうとしたら、うちにオープンリールが2本あったんだよね。しかも日付が違う。でも両方とも「証言」って書いてあった。その2本を専門のスタジオに持って行って1週間がかりで焼き起こしてもらった。それを聴いたら、8月にレコ―ディングしたファーストテイクと10月にレコーディングしたセカンドテイクが流れてきたわけよ。「え!?」って驚いてさ。いわゆる没テイク、NGテイクのラップだった。リリックが全然違う人もいたり、マイクリレーの順番やフロウも違ったりしてた。レコーディングはたしか計4回ぐらいやっていて、最終レコーディングが12月だったことも思い出した。だから、最終ヴァージョンに至るまで、いろんな紆余曲折があったことがわかったし、「お前が(リリックを)そう書くならば、俺はこう書く」みたいな熱気を感じたね。当時、ラッパー同士が言葉にしてそういうことを言い合ってたわけじゃないけれど、熱いぶつかり合いがあったことを思い出した。感動したね。

 

――それはぜひ聴いてみたいですね。 YASさんそのものの人生も変えたっておっしゃっていたじゃないですか。想像以上の反響だったわけですよね。

 

あそこまでの反響があるとは思っていなかったよ。「証言」があれだけ大ヒットして、みんな20代前半で若くて世の中のことなんてまだわからないから生活設計も考えてなかったし、イケイケな感じだっただろうね。それでも俺は「証言」で得たお金でPVを作りたくて、そのとき手を組んでたSTREET FLAVORの紹介で、「証言」の監督をやることになるベン・リスト(Ben List)っていう映像作家とそのアシスタントの女の子とミーティングしたんだ。で、そのアシスタントの女の子に俺は一目惚れして結婚したわけよ。

 

――人生変えられちゃったってそういうことでもあるんですね(笑)。

 

そうそうそう。そして、子供が生まれて人生が変わったわけよ。それと、「証言」を作ったあとももちろんDJやって、トラック・メイキングしてソロ・アルバムも出して、パーティもオーガナイズしてたけれど、どうしても「『証言』を作ったDJ YAS」というのはついて回ったよね。嬉しい反面、そういう印象が先行してしまうことに葛藤やジレンマを感じている時期はあった。2、3年後ぐらいまで言われるんだったらまだ仕方がないけど、10年後とかでもそういう感じだったからさ。でもいまとなれば、DJ YASやLAMP EYEは知らなくても「証言」は知っているという世代も出てきていて、そのことは純粋に嬉しいと思えるようになったね。

 

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――今回の「証言」の7インチ化はどのように進んでいったんですか?

 

2年ぐらい前からWax Alchemyっていうダブプレートをカッティングしてくれるスタジオに通うようになったの。DEV LARGEが俺に紹介してくれたんだよね。それですでに自分のトラックのアーカイヴを自分のレーベルの〈KP Records〉で7インチ化するシリーズを始めてはいたんだよね。自分用の「証言」の7インチを作って現場ではプレイしたりもしてた。自分のトラック作品の7インチ化だよね。それがまずあった。でも、一言に7インチ化すると言っても楽な作業じゃなかった。〈KP Records〉の7インチ企画ではWax Alchemyのエンジニアの諏訪内(保)くんと俺の周りのデザインを担当してくれているT.H.C.CREWのIGAVOCKにすごくお世話になった。2人がいなければ具現化できることはなかったね。まず彼らに感謝したい。それと、オープンリールを立ち上げるのに協力してくれたのは、SHAKKAZOMBIE のTSUTCHIEだった。彼がオープンリールを焼き起こせるエンジニアを紹介してくれた上に、一緒にそのスタジオまで行くのに付き合ってくれた。また別のお宝のDATが見つかったときには、〈煙突 RECORDINGS〉時代からレコーディングでお世話になってた下北沢にあるナサンドラパレススタジオの高橋思郎くんがDATのデッキを貸してくれてね。その3人のエンジニアがいたからこそ、「証言」の7インチ化は実現している。ホント感謝ですよ。

 

――サッと音源をひっぱり出してきて、7インチをプレスして出来ました、というわけじゃなかったと。

 

そう、実は簡単じゃなかった。ちゃんと管理していればそんなことはなかったのかもしれないけれどね。まずは音は引っ張り出せた、と。そこで、「どこでプレスする?」という話になるでしょ。これまでの20年のあいだに自分のレーベルからアナログ盤をさんざん発信してきたけど、今回の「証言」のレコード・プレスで価値観や見方が変わった部分がある。というのも、これまでは基本は海外プレスだった。海外に音を投げて届いたレコードを流通する。それが通常のやり方だった。ただ、Wax Alchemyの諏訪内くんの家に行くと、目の前でレコードをカッティングしてくれるわけよ。で、そこに立ち会うってすごく重要だなって実感するようになった。33回転にするのか、それとも45回転にするのか、イコライジングはどうするのか、そういうことを相談しながら決めていった。ただ、Wax Alchemyはカッティングだけで、プレスはできない。プレスできないと、多くの枚数は作れないんだよね。そうなったら、東洋化成というプレスできる会社があるじゃないかと。しかも立ち会うことができる。もちろんそこまでエンジニアの方たちに指示をしたりしないけれど、いろんなことを教えてもらったりできる。それで東洋化成にお願いした。

 

――そこがレコードへのこだわりですよね。

 

やっぱ俺もDJでレコードが好きだからさ。レコードって流れていくものだから、時間が経てばそのレコードはもしかしたら海外のレコード屋さんに並んでいるかもしれないし、コレクターの手元にあるかもしれない。そういうことを想像するよね。やっぱり純粋にレコードに対する想いが強いんだよね。それこそ「証言」は、CDの前に最初にアナログで発売しているからね。今回の「証言」の7インチがどういう風に聴かれていくか楽しみだよね。

 

【作品情報】

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LAMP EYE 『証言』(7inch)

2016.11.03 Release

label:KP Records/品番:KPR009/価格(税込):2,052円

 

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RINO & DJ YAS『ある愛の行方 / SIGN』(7inch)

2016.10.08 Release

Side A : ある愛の行方 Side B : SIGN feat.HAB I SCREAM

label:KP Records/品番:KPR008/価格(税込):2,052円

 

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DJ YAS 『MIKOTO / RECOGNIZE』(7inch)

2016.09.16 Release

Side A : Mikoto Side B : Recognize

label:KP Records/品番:KPR007/価格(税込):2,052円

 

【DJ YAS Information】

DJ YAS Official Website:http://www.djyas.tokyo/

Twitter:@djyas_kp

Instagram:@djyas_kemuripro

 

※今後、KP Recordsからレコードをリリースして行くのでチェックしてください。

 

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