Last Update 2018.5.25

Interview

Polaris──待望の新作『走る』と、FISHMANSの名曲カヴァー「SEASON」12インチシングルカットについて語る

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オオヤユウスケと柏原譲(Fishmans/So many tears)によるバンド、Polaris。2001年のデビュー以来、どっしりとしたグルーヴにのせ、ダブの手法を取り入れた音響的な広がりをみせる無二のサウンド。そしてリリシズムあふれる歌で、高い人気を集めてきた彼らが、前作『Music』から2年9ヶ月振りとなるミニ・アルバム『走る』をリリースした。さらに新作よりFISHMANSの名曲「SEASON」のカヴァーがシングルカット。カップリングにはPolaris初期の代表曲「光と影」を収録した12インチシングルとしてアナログ化される。
Nabowaの川上優など新顔のサポート・ミュージシャンやスタッフを迎えて、結成16年目にして新たなスタートを切ったPolarisに、新作の製作秘話からアナログレコードにまつわる想い出まで、じっくりと話を訊いた。

 

取材/文:宮内健
撮影:豊島望

 

──今回完成したミニ・アルバム『走る』は、Polarisのリリース作品としては前作『Music』から2年9ヶ月ぶりということですが、今作が完成するまでを振り返るとどんな時間でしたか?

オオヤ 譲さんは、FISHMANSがまた結構動いてた時期だったよね。

柏原 うん。2016年がFISHMANS25周年だったこともあって、2015~2016年あたりは各地のフェスにも出てましたね。

オオヤ Polarisとしては『Music』を出した後、今現在のオオヤと柏原がそれぞれに音楽活動している中で、自分たちのスタンスと自然に合う人たちと活動をともにしようと模索していた時期でもありましたね。ある意味、環境整備のための時間だったというか。6~7年バンドとしての活動を休んでいる間に音楽業界の構造もずいぶん変わったし、2012年に再始動してからも所属していたレーベルも形態が変わったり。それこそアナログレコードの話が今日できるっていうのもまさにそういうことなんだけど、音楽の聴かれ方もここ数年で大きく変化してきたから。

柏原 だから、リリースするタイミングも結構考えたよね。

オオヤ 個人的な部分でも、ベルリンに拠点を置いていたのを日本に帰ってきたりといろいろ変化があったので。やっとPolarisで作品を作るのにふさわしい時期がやってきたなっていう感覚もありますね。

 

──そうして新たに動きだすきっかけとなる作品に、『走る』というタイトルがついたのが素敵だなと思いました。

オオヤ それを狙ってつけたわけでもないんだけど、今のPolarisにぴったりな言葉だったなって思いますね。自分が歌詞の中でも使ってる言葉ではあるんだけど、〈走る〉といってもジョギングするようなのじゃなくて、時が過ぎていったりとか、どこかに移動することを比喩的に〈走る〉って表現してたんです。〈歩く〉っていうとちょっとのんびりしすぎるけど、〈走る〉は世の中に自分が立ってるっていう目線が少し加わった、能動的な感覚っていうかね。

 

──今回の『走る』を聴いて、アンサンブルの音数がシンプルなこともあるせいか、すごくフレッシュさを感じたんですよね。

オオヤ それは嬉しいですね。

柏原 実際に関わってる人も若くなってるっていうのもあるよね。

オオヤ エンジニアもドラマーも、僕らより若い世代の人たちだしね。そういう新しい関係性も音に出てるのかな。

 

──ドラムにはここ最近のライヴでもずっとサポート・メンバーとして参加しているNabowaの川上優さん。エンジニアにはLOSTAGEやトクマルシューゴの作品も手がける岩谷啓史郎さん(ギタリストとしてもACOやLOVESなどで活躍)が参加しています。この布陣で6曲入りの作品を作ることに至る経緯は?

オオヤ 2016年の夏前に事務所を移籍して、そこからライヴの本数が増えたんです。とくに今年に入ってからはライヴをたくさんやってたんだけど、その中でできてきた新曲を主にレコーディングして。

柏原 いわゆる普通のバンドの作り方だよね。曲を作って、それをライヴで試して、オーディエンスの反応も見ながら修正して、アレンジし直して。それで録音していく。極め付けは合宿レコーディングですよ。本当に新人バンドみたいな感じで。楽しかったよね。

オオヤ 楽しかった! Polarisでは初めての経験だったけど、今回、奈良のレコーディング・スタジオに1週間ぐらい滞在してね。ライヴで培ってきたものを凝縮して録音してるから作業も早かったし、曲が身体に馴染んで録音してるから。そういう感覚って、Polaris結成初期の1st、2ndあたり以来だから、15年ぶりぐらいにやった行為なんだよね。

 

 

──そういうバンドのセッションっぽい感覚は、「namioto」のような楽曲に色濃く反映されてる気がします。

オオヤ 「namioto」は、最初に自分が作って持っていった時は、レゲエっぽいダウン・テンポの曲だったんだけど、リハに入った時にドラムの川上くんが「こういうドラムどうですか?」って、元のアレンジとは180度違うような、自分たちからは出てこないアイディアのドラムを叩きだして。それ面白いねって話になって。

 

──やっぱりこの曲は最初裏打ちのビートだったんですね。8ビートだけど少し跳ねた感じとか、スネアの乾いた音色がすごくスカとかレゲエの雰囲気を感じて。だけど、リズムは裏打ちじゃないっていう。そのちょっとした違和感が面白いなって思ったんです。

オオヤ 面白いよね。そういうことができるのも新しい関係性ならではだなって思うし、加えて、自分たちもそういうのを楽しめるようになってきたのかもしれない。以前は自分の中で決まったアイディアがあったら「こうやってくれ」って注文してたと思うけど、川上くんが出してくれたアプローチが純粋によかったから。この「namioto」と「cyan」は、今回のアルバムの〈裏〉新機軸なんですよね。

 

──そうですね。「とどく」あたりは、多くの人が想い描くPolarisサウンドの最新アップデート版という感じがするけれど、「namioto」と「cyan」は今までとは違った新鮮な印象を受けました。

オオヤ いい意味で僕ら二人にも制御できてないよさがあるというかね。

柏原 うん、川上くんや啓史郎くんに半分ぐらい丸投げしてるところもあるからね。

オオヤ 岩谷くんも素晴らしいエンジニアで、もともとzAkさんのアシスタントだった人で、今はその奈良のスタジオにいるんだよね。

柏原 啓史郎くんは単なるエンジニアリングじゃなくて、後から勝手にパーカッション入れたりしてるから(笑)。

オオヤ かと思えば、バサッとミュートしてアレンジを再構築してたり。

 

──言ってみれば、ダブやカットアップの編集感覚を持ったエンジニアなんですね。

柏原 僕らとしても任せちゃっていいようなセンスの持ち主だから。そういう人ってなかなかいないけど、若手で久々に現れたなって感じですね。

 

──オオヤさんと柏原さんの中で思い描くものにプラスして、サポート陣のセンスが加わっていったと。

柏原 思い描くというか、僕らに思い描けなかった部分かもしれないね(笑)。

オオヤ でも、Polarisってもともとそういうところもあったんだよね。だんだんスタイルができ上がってきたから、二人の制御のもとで作るようになっちゃってたけど、今回いろんな変化の中で、その〈制御〉がいい感じで外れてきた。

 

──思えば、今までの活動を振り返っても、その時期ごとに参加してきたミュージシャンだったり、あるいは演奏しているその場の空気だったり、いろんなエレメンツに影響を受けて変化していったバンドではありましたよね。

オオヤ 今もライヴでやってる初期の代表曲にしても、発表した当時は、自分たちにとっては意外なアプローチだった曲が多くて。今年6月に7インチを出した「深呼吸」って曲にしても、元の形はあったけど(原田)郁子ちゃんのピアノが入ったことによって、僕らのコントロールできないところに突き進んでいった感じもあったからね。

 

──その時々でフレキシブルに変化していった積み重ねが、多くの人がイメージするPolarisのサウンドとして形作られていったんでしょうね。

オオヤ 今までいろんなタイプのドラマーとやってきたから、その人ぞれぞれの味というかニュアンスがより出てくると、川上くんが入った今の編成も、もっと面白くなってくるなって思う。今はその途中みたいな。ライヴごとに変化してる感じだよね。

柏原 それに、どうしようもない世代間のギャップみたいなのが面白いんだろうなとも思うよね。どうしても「こうしてほしい」みたいに言うこともあるんだけど、そこをあえて放っておくんです。川上くんも啓史郎くんも年齢的には俺と干支一回り違うからさ、スネアのチューニングの好みひとつとっても全然違うんだよね。だからそこはもう彼らのセンスに任せといておこうと。でもまあ、まだ先輩・後輩的な遠慮があるけどね(笑)。

オオヤ だからね、またこうして変化していくであろう時間がはじまってきたのは、自分たちとしてもすごく楽しいんですよ。もともとPolarisは3ピースのバンドで、その後はゲストプレイヤーが入ったりいろんな編成の時期があったけど、このところまた3人になってるので。3人の手で、ライヴでできるっていうのは大前提としてあって。その中でのアレンジにはなってるので、久々に引いたり抜いたりすることで一段階盛り上がりが感じられるように感じるとか、いわゆるバンドっぽいアレンジを施していて。ミニマムな構築の仕方で作ってるし、今回のアルバムについては全部ライヴで再現できるようになってるね。「SEASON」の中では一部、啓史郎くんのすごい妄想みたいなエディットが施されてるけど(笑)。

 

 

──今回のアルバムのリード曲にもなっている「とどく」は、どのようにして作られていったんですか?

オオヤ 元々メロディだけは去年の11月ぐらいにできていたんだけど、そのままにして置いてあって。ある時そのメロディに歌詞をつけてみたらどうかなって、ふと思ってつけてみたんだよね。そうしたら、メロディの一部だけは残ったものの、まったく新しい曲として生まれ変わった。なんか久しぶりに、早くみんなに聴いてもらいたいなって思って、譲さんにすぐ電話しちゃったもんね。「すげぇいい曲できちゃったんだけど、聴いてもらえない?」って。

柏原 オオヤくんがそんな性急に連絡しくるようなことなんて、今までなかったよね。その後すぐにメールで送られてきたデモを聴いたら、いいじゃん!ってことになって。

オオヤ そういう自然の衝動でできた曲だよね。

 

──衝動! まさに〈走る〉ですね。

オオヤ いつもはある程度までデモを完成させてスタジオに持っていくことが多かったけど、今のPolarisにはその作り方は必要ないんじゃないかって思って。弾き語りでポロンとやって、サビの一部の歌詞やメロディだけでもいいけど、グワッとしたものを共有するほうが大事だろうと。だから最近はあえてデモを作ってないもんね。

柏原 やっぱりバンドをやり慣れてると、メロディとコード進行だけがあって、そこでアイディア出し合っていくほうが楽しいんだよね。それこそが、バンドの醍醐味のひとつみたいなところもあるから。

オオヤ そういう意味では、すごく作り込んでレコーディングしていったのが『Music』だったのかもしれないですね。もちろん悪いものではないんだけど、そうすることで自分の中では大事な部分がちょっとそぎ落ちてたかなって印象もあって。今のPolarisの感覚でやるとするとね。だからなんていうのかな……やっぱり電話しちゃう感じ?(笑)。「今すぐ会いたいんですけど!」みたいな話じゃん。

 

──相手の状況を思い図ってメールやLINEでワンクッション置くんじゃなく、先走った感じで衝動的に電話しちゃうようなね。リアルタイムな感情を第一にする感覚というか。

オオヤ そうそう。メールやLINEも、だいぶ感情がそぎ落とされる感じあるじゃない? 最近ライヴも多いから、譲さんとも結構よく話すんですよ。その前まではライヴも少なかったし、そもそも住んでる場所も離れてたから、「何ヶ月ぶりだね」なんてこともよくあったけど。今回は、そういうリアルタイムな感覚が音に出てるのかもしれない。まあ、序章ぐらいのものなんで、ここから色濃く出てくるんじゃないかな。この作品は、そのはじめの一歩みたいな感じだね。

 

──今回のミニ・アルバムのラストを飾る曲で、アナログ12インチとしてもリリースされることになったのが、FISHMANS「SEASON」のカヴァーです。この曲を、今のPolarisが取り上げたのはどういういきさつがあったんですか?

オオヤ 僕はPolaris以外にもソロのライヴをやってるんですけど、数年前からこの曲を歌ってるんです。今までにもいろんな曲をカヴァーしてきたけど、もともとFISHMANSは好きだったから、逆にカヴァーしてこなかった。それに譲さんとこうしてバンドをやってるわけだから、あえて取り上げてなかったところもあって。だけどソロの時に歌いはじめたら、あまり他人の曲って感じがしないなってぐらいに、しっくりくるようになって。もちろん自分の新曲ではないけど、何度も歌ってるうちにカヴァーって感覚も抜けてきて。それである時、譲さんに聴いてもらったんだよね。そしたら「これはすでにオオヤくんの歌になってるから、よかったらPolarisでやってみようよ」って言ってくれて。それでまずはライヴでやるようになったんです。

柏原 これがレコード会社とかの企画的な感じで「PolarisでFISHMANSのカヴァーを…」みたいな流れだったらやらなかったと思うね。

オオヤ でも、すごく自然な形でやることになって。そもそもこれはカヴァーなのか?っていうね。譲さんはFISHMANSのメンバー本人だし(笑)。

柏原 いろんな人がFISHMANSのいろんな曲をカヴァーしてくれてるのも知ってるんだけど、この曲に関しては自分も弾くからカヴァーというのとは意気込みがちょっと違ったかな。

オオヤ 今回、原曲とはキーも違うし、変な話コードも変えちゃってる。構成もライヴでやっていくうちにだんだんできてきた。

柏原 FISHMANSの「SEASON」という曲だけど、自分たち(Polaris)の曲だってつもりで演奏してますね。

 

──もともと「SEASON」という曲自体については、柏原さんはどんな印象を持ってたんですか?

柏原 FISHMANSでやってた時は、ちょっと夕暮れっぽい曲だなってイメージで演奏してたのを覚えてますね。最初はシングル用に録音して、「LONG SEASON」の布石になった曲でもある。

オオヤ 僕はその頃、FISHMANSをリアルタイムでよく聴いてて。この曲を聴いた時は、今までとずいぶん様子が違う曲だなって思って。聴こえてくる質感というか体温が違うなっていう印象もあって、この曲がすごく好きになったんだよね。

柏原 レコーディングの部分でいえば、「SEASON」のあたりから本格的にPro-Toolsが稼働しはじめて、めちゃめちゃエディットされてる曲だからね。90年代特有の空気感は一番出てる曲だったのかもね。

オオヤ なるほどね。

柏原 それに今回はバンドでせーので録ってるから、またアプローチが全然違うんだよね。

 


Polaris “SEASON” (Official Music Video)


 

──そして、12インチのカップリングには、Polarisの楽曲の中でも人気の高い「光と影」が収録されました。

オオヤ この曲がアナログになるのは嬉しいですね。当時の音源のまま収録したけど、こういうものはあえて新録にするとかじゃないほうがいいでしょ?

 

──Polarisの代表曲でもあるし、聴き馴染みのあるヴァージョンをアナログで聴きたいというファンも多かったと思います。

柏原 でも、今もほとんどアレンジ変わってないもんな。

オオヤ この曲、ほとんどライヴでのアレンジ変わってないんだよね。ライヴでやるたびに長い曲だなって思いながらやってるんだけど……。

 

──自分で作ったくせに!(笑)。

オオヤ できた瞬間から長い曲だなって思ってる(笑)。実は何年か前からこの曲でアナログを切ろうって話は出てたんだけど、7インチの収録分数では入らないんだよね。だからなかなかアナログ化する機会がなくて。そこで「SEASON」という、また別の長い曲ができたので(笑)、これはチャンスだ!と。だからすごく嬉しいですよ。とくに2000年代以降って、アナログを誰も聴かない時期があっただけに。

 

──ここでアナログレコードについての想いについて伺えればと思うんですが。お二人とも音楽を聴きはじめた頃は、アナログレコードから入った世代ですよね。一番最初に買ったレコードは?

柏原 俺は清水健太郎さんの「失恋レストラン」を買ってもらって。どうしてそれが欲しいと思ったのかわからないんだけど(笑)。

オオヤ 俺はね「い・け・な・いルージュマジック」。

柏原 それはカッコいいやつじゃん(笑)。

オオヤ 自慢していい? あのジャケットって清志郎さんと坂本さんが写真に写ってるでしょ? それぞれにサインしてもらったの!  今日、それ持ってくればよかったなぁ(笑)。ウチの親がYMO好きだったから、家にYMOのレコードがあって。譲さんはYMOのレコードはたくさん買ってるでしょ? 最初に組んだのは、YMOのコピーバンドだったんですよね?

柏原 そうそう。だから『SOLID STATE SURVIVOR』からは全部レコード買ってたね。でも、僕らの時代は貸しレコード屋が全盛の時期だったから、レコードを借りたのも多かったよね。ウルトラヴォックスも〈友&愛〉で借りたなぁ。

オオヤ 俺はBOØWYの『BEAT EMOTION』を借りたのが最初かな。あとはアイアン・メイデンとか。

柏原 アイアン・メイデンは、ウチの兄貴が全部持ってたの。日曜の朝は必ずアイアン・メイデンをガンガンにかけてから、ちょっと嫌いになったんだけど(笑)。でも、その頃聴いてたアナログって貸しレコードがほとんどだったから、みんな手元には持ってないんだよね。

 

──結局、一番聴いてたのはアナログレコードからダビングしたカセットテープの音だったっていう。

オオヤ そうなんだよねぇ。だから大人になってからレコードで買い直したりしたもん。アナログレコードの良さって、ジャケットから出してターンテーブルに乗せて針を落としてっていう一連の作業も、いい意味で面倒臭いしね。音と一緒に行為も記憶に残るよね。

 

──最近、アナログレコードがまた聴かれるようになった状況についてはどう受け止めてますか?

柏原 iTunesが主流になって、その後にサブスプリクションが出てきて、一時はどうなっていくんだろうって思ってたけど、またモノとして音楽と一緒に愛してくれるような時代になるのかと思うと、それはそれで嬉しいですよね。僕らの頃って、新しい音楽を聴くにせよ、シスコとかに行って中古盤を買うにせよ、実際に手にすることでお宝感があったというか。でも、今の人たちは実際にレコードを入手する前に、先にその音楽をYouTubeとかで聴いて知ってるってことなのかな。

オオヤ どうなんだろうね。

柏原 俺らの時代は、レコードの内容をあらかじめ聴けなかったじゃない?

オオヤ これ大丈夫か?と思いつつ買って、結局「ああ、やっちゃった!」っていうのも多々ありましたよね。試聴なんてできなかったし。で、僕が中高生ぐらいの頃になると、次第にCDに移行していって、アナログレコードはちょっと前時代的なものだって印象もあったじゃないですか。だけど俺は大学に入ったぐらいの時からDJもはじめていたんで、大学生の頃はすごくアナログ買ってたんだよね。その波もいつの間にか去って、DJやるにしてもいつの間にかみんなアナログを持ってこなくなったりと、その辺の変遷も肌で感じてきたから。こういう形でアナログの時代が戻ってきてるのは嬉しいですよ。自分は今40代に入ったけど、20代・30代・40代と、どの時代もアナログを聴き続けてるのね。定期的に買い続けていて。でも、俺はコレクター的な聴き方じゃなくて、「この曲。レコードで聴きたかったんだよな」って音源が、安い値段でディスクユニオンとかで見つけるとついつい買っちゃう、みたいな(笑)。そういうのは今でも月イチぐらいで変わらずやってますね。

 

──オオヤさんは以前はベルリンを拠点に活動していましたが、ベルリンではアナログレコードって聴かれていたんですか?

オオヤ ベルリンに引っ越したのは2010年ごろだったけど、ベルリンの街じゅうレコード屋さんだらけだったんです。で、実際に当時はアナログレコード・ブームって呼ばれてて、自宅の隣がアナログのカッティング屋だったんだよね。

 

──ええーっ、すごい!(笑)。

オオヤ ベルリンの中でも集中してレコード屋がある地域には、世代が一回りして新しいレコード屋やカセットテープ屋ががどんどんオープンしてた。あと家電量販店に併設されてるレコードショップでも、アナログを面出ししてましたね。

柏原 へぇ~。

オオヤ だから、これはアナログのリバイバルっていうんじゃなく、ドイツはアナログが衰退してなかったんだなって感じたんですよね。というのも、その家電屋にはレコードプレーヤーも、高級機じゃなくて普及する価格帯の製品がたくさん揃えてあったから。

 

──マニア向けとかDJユースとかじゃなく、ごくごく一般的にアナログレコードが聴かれてたと。

オオヤ そうですね。レコードをいくら買い込んでも困らないような住宅事情とかも関係してるのかもしれないけど。

 

──さっきオオヤさんがおっしゃってたようにコレクター的な買い方じゃなく、「このアルバムをアナログで聴きたい」っていうぐらいの動機で普通にアナログレコードに接することができる文化って、すごく自然で豊かな気がしますね。

オオヤ そうですね。ベルリンに行ってから、よりそう感じるようになったかも。だから僕なんかは、めちゃくちゃ安いレコードを見つけたら、ちょっと傷があったとしても買っちゃう方。音楽って、気軽にジャンジャン聴きたいじゃない?

柏原 そうだね。音質の方にこだわる人はハイレゾとかDSDに進んでいくだろうし。

オオヤ それに音楽やってる立場としては、高音質を極めていこうとしたら際限がないことも知ってるし。

柏原 今日はこれ聴こうかなって、メシ食った後に酒で飲みながら、ターンテーブルにレコードを乗せる行為が好きだったら、それでいいんじゃないかな。

オオヤ うん、アナログの質感を楽しむっていうところにとどめてるぐらいが、自分には合ってる気がしてます。

 

■オオヤさんが今日持ってきたレコード

今回のアルバムに影響を与えた、とかいうのではなくて、純粋に最近よく聴いてるレコードを持ってきました。

・Robert Fripp & Brian Eno『Evening Star』
僕はブライアン・イーノが大好きで、だんだん好きになってるんですよ。最近はブライアン・イーノを基軸に、いろんな人とのコラボとか、ハルモニアあたりのクラウト・ロックを聴き返してる感じ。

 

・Tangerine Dream『Stratosfear』
これ買ったのは大学生の時かな。でも、いまだに聴いてる。こういうジャケットいいよね、大切にするよね。

 

・Genesis『Invisible Touch』
The Fun Boy Three with Bananarama『Ain’t What You Do』
このへんは中学生の頃に貸しレコード屋で借りてたやつを、大人になって買い直したシリーズ(笑)。

 

・『Piano Rags by Scott Joplin』
これはスコット・ジョップリンっていう、1930~40年代のラグタイムのピアニストの作品集。これは本当にすごく好き。このレコードは演奏してるののは70年代のピアニストだけどね。

・Mad Professor
Janet Kay
この辺は昔からずっと好きだよね。

 

・DJ Shadow
俺、モ・ワックスとかアブストラクト・ヒップホップとか大好きだったんだけど、ここらへんの音楽は一回りして心地よいね。

 

■アーティストプロフィール

Polaris
オオヤユウスケと柏原譲(Fishmans/So many tears)による唯一無二のロック・バンド。
2001年にデビュー。これまでに5枚のフル・アルバムをリリース。フジロック他、数々の野外フェスに出演。
強靱なリズム隊が生み出す圧倒的なグルーヴに、透明感あふれるオオヤのボーカルが溶け合うアンサンブル、
その音響的なダイナミズム感に溢れたサウンドと、日常の中の喜怒哀楽を写実的に描き出す世界観は、Polarisにしか表現できないオリジナリティ。
結成16年目を迎え、前作『Music』から2年9ヶ月振りとなる待望の新作『走る』を11月22日にリリース。
http://www.polaris-web.com/

 

■作品情報

Polaris2年9ヶ月ぶりの新作より、Fishmans名曲カバーが12インチ・カット決定!

タイトル:SEASON / 光と影
レーベル:bud music
品番:bud1201
フォーマット:12”
発売日:2017年12月24日(日)
価格:2,000円(税抜)
トラックリスト:
Side A
1.SEASON

Side B
1.光と影

※東洋化成ディストリビューションONLINEでも予約受付中
https://toyokasei.thebase.in/items/8573421

 

タイトル:走る
レーベル:bud music
品番:DQC-1589
フォーマット:CD
発売日:2017年11月22日(水)
価格:2,000円(税抜)
トラックリスト:
1. 微笑みながら夜は明ける
2. とどく
3. namioto
4. cyan
5. naked
6. SEASON (Fishmans)

 

■ツアー情報

□Polaris『走る』Release One Man Tour
12.10(日)
名古屋 TOKUZO
17:30開場/18:00開演 | 前売3,800円 | JAILHOUSE 052-936-6041

12.16(土)
東京 WWW
17:15開場/18:00開演 | 前売3,800円 | HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999

12.17(日)
大阪 梅田 Shangri-La
17:30開場/18:00開演 | 前売3,800円 | 清水音泉 06-6357-3666

 

□Polaris『走る』Release Tour
02.10(土)
福井 CHOP
w/Nabowa

02.25(日)
岡山 cafe.the market mai mai

02.26(月)
広島 Live Juke

03.09(金)
新潟 Live Hall GOLDEN PIGS RED STAGE

03.10(土)
金沢 puddel/social

03.25(日)
京都 磔磔

 

Polaris
Fishmans