Last Update 2018.12.13

Interview

「愛のままに feat.唾奇/星を見上げる」リリース記念、BASIインタビュー

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2017年にソロ作品としては、5枚目となるアルバム『LOVEBUM』をリリースした韻シストのフロントマンBASIが、最新作『愛のままに feat.唾奇/星を見上げる』を7インチアナログ盤として発表。
本作はA面に今、日本のヒップホップシーンを席巻する人気若手ラッパー唾奇とのコラボ曲で、「愛」に関するリリックが印象的な「愛のままに feat.唾奇」、B面に福岡のホテルにて浮かんだという、サビのメロディーなど豊潤なフレーズがすっと胸に染み込む、泣きのメロウチューン「星を見上げる」の2曲が収録された、BASIらしいメロウでソウルフルかつリリカルな情景が思い浮かぶ力作となっている。

BASIは、韻シストとして90年代後期から活動を開始し、2001年にデビューアルバム『ONE DAY』をリリース。それ以降も日本語ヒップホップシーンのパイオニアの1人として、現在まで20年に渡り、シーンの最前線で活躍を続けているベテランだ。
そんな彼は、先述の『LOVEBUM』では、タイトルどおり、「Love」をテーマにこれまでのキャリアを集約させた傑作を世に送り出したのだが、今年に入ってからもその勢力的な活動には陰りが見えることなく、バンド形態でのソロプロジェクト「BASI & THE BASIC BAND」として、『Rainy EP』を発表。同作はゆるやかかつしなやかなジャジーな音色とグルーヴを感じるバンドならではのロウなサウンドを採用。
BASIのメロウな世界観を生演奏で再現する名うてのプレイヤーたちによる楽器演奏のスタイリッシュさとその高い完成度で再び注目を集めたことも記憶に新しい。

そして、そんなBASIがついにその長きに渡るキャリアの第2章を告げる最新作を世に送り出すことになったわけなのだが、今回はそのリリースを記念して、本作の制作にまつわる話だけでなく、アナログ盤としてリリースすることに対するこだわりや、ラッパーだけでなく2011年に立ち上げた主催レーベル「BASIC MUSIC」のレーベルヘッドを務めるBASIとBASIC MUSICの清水氏に、リリースに対する考えを聞いた。

なお、BASIは、本作でコラボレーションした唾奇と、11月4日に福岡・KIETH FLACKにて2マンライブを行うことが決定している。

 

インタビュー/文: Jun Fukunaga

 


 

ーー 本作『愛のままに feat. 唾奇 / 星を見上げる』でも、2017年のソロアルバム『LOVEBUM』や、バンド形態で今年リリースされましたBASI & THE BASIC BAND『Rainy EP』を彷彿とさせるBASIさんらしいメロウでソウルフルかつリリカルな曲に仕上がっているという印象を受けました。ヒップホップシーンでは最近、Trapのような、重低音が響くトラックが若者の間でトレンド化しているかと思いますが、そんな中で今、あえてそういったトレンドとは違った”BASI節”ともいえるサウンドを採用するこだわりをお聞かせください。

清水英載(BASIC MUSIC) 20年後でも聴ける普遍的な音作りを目指しています。ヒップホップシーンのトレンドからではなく、様々なジャンルの少し先を見据えた廃れないトレンドから単純にBASIに似合うサウンドを常に探っています。”BASI節”と言って頂けるのはこの様な制作を進行し続けているからかなと思います。

ーー『LOVEBUM』では、「第1期の集大成」的作品になっていると以前のインタビューで語られていました。またそちらは、”Love”、愛をテーマにしたものでしたが、本作の「愛のままに」でも日常生活で感じられるような愛のかたちをリリックで表現されています。また本作は、BASIさんの第二章を彩る作品と位置付けられていると思いますが、キャリア第二章を再び愛をテーマにした作品で始めようとお考えになられたのはなぜでしょうか?

BASI 『LOVEBUM』を制作して以降、今も変わらず、そのムードが続いています。日常の様々な出来事が複合して、絡みに絡み合って、最終的に辿り着いた先が「愛」だと思います。ただ、根本はCharaさんの影響が強いです。日本のミュージシャンの中で、最もCharaさんが「愛」について歌い続けているミュージシャンだと感じます。一緒にステージに立ったり、レコーディングでご一緒したりするなかで、その都度、その都度、多大な影響を受け、「BASIのやってることは正しいよ」って。そう自覚させてもらっています。それを「ラッパー」として成し得たいという憧れが、残りの音楽人生、第二章のテーマになったんだと思います。

ーー 本作では先述のA面とB面の「星を見上げる」の両曲で、BASI & THE BASIC BANDメンバーのキーボーディストのSaetsuさんが参加しておられます。「愛のままに」での温かみのあるフレーズ、「星を見上げる」のジャジーで切ないフレーズでその存在感を感じるのですが、本作に彼女が参加することで作品に加わった要素をあえて1つ挙げるとすればそれはどういったものになるでしょうか?

BASI 僕がどんなにキャリアを積もうが、どんなにスキルを磨こうが、絶対にアウトプットできない「女性らしさ」です。彼女の持つ優しさ、「音楽が好き」という気持ち、ひたむきさ、ジャズの要素、ヒップホップの要素、センス、発想。それらをひっくるめた「女性らしさ」です。

ーー A面「愛のままに」では若手の注目ラッパー唾奇さんをフィーチャーされています。このコラボを行うことになったきっかけをお聞かせいただけますか? また、唾奇さんは、同曲の制作にあたり、超過密スケジュールの中、最後の最後まで妥協を許すことなく、徹底的にレコーディングに参加されたとお聞きしました。そんなストイックな姿勢で作品に情熱を注ぐ彼について、キャリア20年を誇るBASIさんから見ても、ここはすごいと思わされる面をあえて挙げるとすればそれはどういったものになりますか?

BASI きっかけは、僕が唾奇のファンだからです。ラッパーとして、男として。勝ち負けの世界ではないですが、自分は彼に勝てないと思っています。「そばにいてくれてありがとう。出会ってくれてありがとう」。唾奇には、ただただそういう気持ちでいっぱいです。すごいと思う点は、どこかの会社や事務所の力を借りて今の地位に立ったのではなく、唾奇本人の、あの「ラップだけ」で到達したという点です。

ーー 近年、ヒップホップ界隈では、特に海外だとDrake、最近のEminemの『Kamikaze』などもそうですが、YouTubeやSpotifyなどのストリーミングでの記録的な再生回数によるヒット曲が生まれています。そういったことをレーベル視点から見るとどのように感じますか?

清水 ヒット曲が生まれるということは素晴らしいと思っています。ただ、日本ではまだストリーミングから一般的なヒット曲が出ていないと感じています。海外のチャートと日本のチャートを比較しても分かるようにリスナーの性質が全く違いますので、海外と同じ様な手順でアプローチするのではなく日本でヒットを出すための手順があると思います。質の高いリスナー、いわゆる音楽オタクを増やせる可能性がネットにはまだまだあると僕は思っています。ネット回線とサーバーの問題はいつまでも問題がつきまとうのですが、データだからこそ届けられるあらゆるファイルに期待をしています。ネットで楽曲を掘っていくのはレコードを掘るのよりも難しいと思います。ネットでヒット曲が生まれるということは音楽オタクが増えるということかなとも思っているので、日本もそうなったらいいですね。


-清水英載(BASIC MUSIC)

 

ーー リリースとデジタルリリースという大枠がある中でも今回、あえて、アナログ7インチ盤としてリリースされることを考えた理由をお聞かせください。またBASIさん自身が持つアナログへのこだわりとはどういったものになりますでしょうか?

BASI 手軽で便利なデジタルか、手間ひまかけたこだわりを愛するアナログか。音楽を作っていく上で、後者の気持ちを忘れたくない。傷がついたら聴けない。そこから愛着も生まれる。丁寧に針を溝に落とす。聴いたらジャケットに入れて棚に戻す。そういった一つ一つの動作の中にも、忘れてはならない音楽の素晴らしさがあると思います。

ーー 国内のヒップホップシーンでも、海外のようにMV制作によるデジタルでの作品プロモーションの機会がほかのクラブミュージックのジャンルに比べて多く、進歩的な印象を受けます。レーベル運営側からすれば、MV制作とそれによるプロモーションは、具体的にレーベルやアーティストにどのような影響を与えるものだとお考えですか? 「BASIC MUSIC」の実例からお聞かせ頂けたら幸いです。

清水 映像と音楽がいい形で交わればより一層記憶に残りやすいので、数多くの映像を残せればと考えています。MVはジャケットとは別のアーティストや楽曲のイメージを作れるのがいいですね。Youtubeなどにアップをすれば様々な国で再生される可能性があるということ。いつでも再生可能だということ。これらを鑑みて、単純にいい時代になったと思います。2014年に公開した「JULIET」という楽曲をBASI & THE BASIC BANDでリアレンジしたバージョン「JULIET RE EDIT」を2018年に公開しました。完全な新曲だと思ってる人が多く、4年のスピード感を感じれたと共に、公開するタイミングとイメージによって受け取る人が違うことも把握できました。映像はリスナーの中で楽曲の認知を上げられるのでライブでのリアクションがすごいですね。マネタイズの部分はもちろん20年前よりは難しくなっていますが、便利なことも増えているので、前向きにプランニングしています。

ーー 現在もシーンの前線で活躍するプレイヤーとしてアーティスト活動をされていますが、レーベルオーナーとして新たな才能を発掘するという別の顔も持ちつつ、音楽業界で活躍されておられます。そこでお聞きしたいのですが、例えば、BASIさんがラッパーとして自身の作品でコラボレーションをしたいと思うアーティストと、レーベルオーナーとしてリリースを行なってみたいと思うアーティストでは、その選定基準に違いがありますか?

BASI 求めて下さっている答えとは少しズレるかもしれませんが、コラボレーションしたいアーティストは何人かいます。ただ、リリースを行なってみたいと思うアーティストはいないです。レーベル設立から7年くらいですが、この間だけで、ことヒップホップに関して、自己プロデュースでビジネスが成立する時代に変わりました。これはこの先も加速すると思います。成功している若い人たちは、もうわかっているのかもしれません。いつ何時でも発信することが可能な今。誰かのもとでビジネス/音楽をすることの方が足枷になり、大きなロスを生むかもしれない。自分がそういう意識でいる限り、誰のマネージメントもできないんです。

ーー 最後に本作を手に取ることで初めてBASIさんの作品を聴くことになる新規リスナーに、わかりやすく一言で本作の魅力を伝えるとするなら、それは一体どのようなものになりますか?

BASI 一言で普遍的。自分としては、五年後も、十年後も、末長く聴いてもらえる作品を仲間たちと作っていると信じています。これが伝わらなくても、また音楽を作ります。それを続けていくだけです。「愛のままにfeat.唾奇/星を見上げる」。チルのお供に聴いて下さい。ありがとうございました。

 


アーティスト:BASI
タイトル:愛のままに feat. 唾奇 / 星を見上げる
品番:BASI-1014
価格:1,500円(税抜)

A面 – 愛のままに feat. 唾奇
B面 – 星を見上げる

オフィシャルサイト: http://basic-music.org