Last Update 2023.12.27

Interview

<レコードの日>板倉文 & 小川美潮「Stardust」発売記念インタヴュー

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

チャクラや小川美潮のアナログ盤を欲する人が国内外で大量発生する中、ついに決定打と言える作品の登場だ。チャクラの板倉文と小川美潮が9年ぶりにスタジオで録音したコラボレーション音源「Stardust」がアナログ・7インチでリリースされるのだ。それだけでも嬉しいのに、なんとカップリングには94年に制作されながらお蔵入りしていた「You Need Me」の屋敷豪太ミックス・ヴァージョンを収録。これはもう、最高/最強の組み合わせではないか。この理想的な形をとるまでの経緯やあれこれ、そして海外でのチャクラ評価拡大の現状などについて板倉文と小川美潮の両人に話を聞いた。

取材・文:小暮秀夫

 

ーーまずは、今回「Stardust」と「You Need Me」を7インチ・アナログ盤でリリースすることになった経緯を教えてください。

小川美潮(以下・美潮):ガラボックスさん(注:リリースレーベルであるgalabox disx)からお話を頂きまして、すぐ賛成しました。

 

ーー「Stardust」をカバーされたのは、どういう理由からですか?

板倉文(以下・文):(チャクラの『LIVE & UNRELEASED ARCHIVE RECORDINGS 81-83』の企画制作者であるチリの音楽家の)ゴンサロ(Gonzalo Fuentes R.)がジャズのスタンダードをやりたいと言ったからです。

 

ーーもともとは、ゴンサロの企画への参加曲として制作されたわけですね。その企画はコンピレーション・アルバムとして作品化されているのでしょうか?

:アルバムはリリース未定です。(注:ゴンサロのレーベルからも「Stardust」はCDシングルで発売。ただしジャケットとカップリングは異なる)

 

ーー数あるジャズ・スタンダードナンバーの中から「Stardust」を選んだ理由は?

美潮:それは板倉さんが。

:テンポの変化にちょうどあってるのと、単純に好きな曲だからです。

 

ーー美潮さんが歌うことになったのはどういう経緯で?

美潮:ブンちゃんとしばらくぶりに会った頃、ちょうど彼ら(ブンとゴンサロ)がやりとりしていて、自然な流れで。

 

ーー「Stardust」はメロディが高くなるとテンポが遅くなるというコンセプトで制作されていますね。どのようにして思いついたのですか? 何かヒントになる作品などはあったのでしょうか?

美潮:これも板倉さんが。

:テンポが揺れる曲が ポピュラーのなかには無い。それが、出来たら面白そうだと思って、メロディーの音程の動きでそれが変化するのに自然なのは上がれば遅くなり下がれば速くなるシステムを思い着きました。とくに、ヒントはありません。

 

ーーそのコンセプトを板倉さんから聞いた時、美潮さんはどう思われましたか?

美潮:おもしろそう!だけどいったいどんな風になるのかなぁ。と。

 

ーー歌入れには苦労されましたか?

美潮:歌は、音符に関してはコツを掴めばわりとすぐできたと思います。ただ英語の録音物は初めてだったので、とりあへず英語圏の人が聞いても英語に聞こへるくらいにはちゃんとしなくちゃねってことで、友人に英語の発音を教わって、当日もその場で指導してもらいながらの録音でした。そこはたっぷり時間がかかっちゃいましたね。

 

ーーB面は「You Need Me」の94年リメイク音源が収録されていますが、収録に至った流れというのは?

:エリちゃん(注:リリース・レーベルであるgalabox disx主宰)が、ぼくのカセットテープから見つけて決まりました。

 

ーーでは、今回のシングルを制作されたgalabox disxの主宰者であるエリさんにそのあたりの流れを説明していただきましょう。音源との出会いについては?

エリ:「Stardust」レコーディングのきっかけを作ったゴンサロが、文さんから大量のCM音源カセットを預かっていまして。聴かせてもらったところ、その中に「You Need Me」が紛れ込んでいたのです。その時から「ん?こ、これは・・・!?」と思い、気になっていました。そして今回「Stardust」をアナログリリースするにあたって、B面は・・・って考えた時、是非コレを!と思いました。

 

ーーもともとこれはどういう目的で制作された曲なのでしょうか?

美潮:次のソロ・アルバム用ですね。もしくはシングルとか。

:当時、美潮のディレクターだった福岡(智彦)さんが、屋敷(豪太)さんでリミックスを作ってみた。その後の予定はぼくにはわかりません。

 

ーーチャクラの2ndアルバム『さてこそ』に収録されていたこの曲をリメイクした理由は?

美潮:ディレクター福岡さんがアイデア出してくれて。

 

ーー屋敷豪太さんにミックスを依頼したのは、美潮さんが希望したのでしょうか?

美潮:福岡さんのつてですね。

 

ーー豪太さんらしい素晴らしいダンス・ミックスに仕上がっているにもかかわらず、お蔵入りしてしまったのは、どうしてでしょうか?

:福岡さんに聞いて下さい。

美潮:次のアルバムを作らなかったからですね。いろいろ模索して、スタッフ皆さんとも何度も会議したりして、でもたぶん私自身がソロで何をやればよいのか、ちょっとわかんなくなっちゃったのかな。それから事務所もやめて、何か次のことを始めようとしたんですね。時間かかっちゃったけど。

 

ーーこの曲が制作された94年、美潮さんは細野晴臣さんがプロデュースするアンビエント・プロジェクト、LOVE,PEACE&TRANCEに関わられています。このプロジェクトに参加した経緯は?

美潮:当初は細野さんがEPICからのオーダーでリミックス・アルバムを作っていて、ヴォイスで3人(小川美潮、遊佐未森、甲田益也子)がお手伝いをしていたのですが、やってるうちに細野さんがユニット名を思いつき、こう云ふ流れに。

 

ーー当時、美潮さんもアンビエント・ミュージックには興味を持っていたのでしょうか?

美潮:アンビエントにはずっと興味ありますけど、この時より今の方が、あるかも。

 

ーーもしかしたら福岡さんは、アンビエントやハウスなど、当時のクラブ/ダンス・カルチャーに美潮さんを接近させたかったのではないかと推測しているのですが、そうした方向性について福岡さんと話をされたりしたことはありましたか?

美潮:それはあんまり、なかったんじゃないかと思いますけど。自然体でいてやりたくなった時には取り入れよう、ってなったでしょうけれども。

 

ーージャケットに使用されている故・沢田としきさんの絵は、曲の世界観に合っていて素晴らしいと思います。沢田さんの絵を見てどう思われましたか?

:大変気に入りました。静けさがあって、非常に愛着を持ちました。

美潮:いい絵を蔵出ししてくれたなーって思いました(笑)。
デザイナーの沢田節子さん、私はここ7年くらいのお付き合いなんですが、それで初めて沢田としきさんの絵を知りまして。故人であるとしきさんとは結局お話しする機会もなかったのですが、実は意外と近くですれ違っていて、チャクラの頃通っていた大阪のTV番組「The HIP」収録最終日の大集合写真に写っていたりで、ご縁はあったんだなぁと思ったら嬉しいですね。

 

 

ーー今回このシングルはアナログ7インチでのリリースですが、アナログ・レコードというフォーマットで音楽を聴くことの魅力は、お二人にとってどういうところにありますか?

:なんか音圧がちょうどあってる気がします。

美潮:やっぱり、レコードかけたら音の前にいるんですよね。なんででしょうね(笑)。だから、ながらじゃなくて、実際に音をゆっくり楽しむってことかなぁ。

 

ーーチャクラの『さてこそ』がアナログでリイシューされたり、美潮さんの「おかしな午後/窓」が初アナログ・7インチ化されたりと、このところチャクラや美潮さんのアナログ・リリースが相次いでいます。このことについてはどう思われますか?

:時代の流れですかね。

美潮:ありがたいと思っています。少しは時世に乗れててよかったなぁとも(笑)。次はアルバムごといっちゃってくれるといいなぁとか。チャクラなんか今聞いてもすごく面白いですしね、若い人たちにも受け入れられているし、外国でも。レコードで持ってたい人もきっといるから市場はあるかと。少しにしても(笑)。

 

ーー最近アメリカのOne World Artsからリリースされたチャクラの「You Need Me (Early Take)」のアナログ・シングルは、どういう経緯で実現したのでしょうか?

美潮:そちらはブンちゃん担当です。

:これはメッセンジャーで友達になったマイケルが出したいと持ち掛けてきた話で、ぼくは、権利関係を含めて渡辺音楽出版を紹介して、間に入って売り出しに漕ぎ着けました。
販売も手伝ってネット注文の人に配送したり、日本のレコード・ショップに売り込んで卸したりもしました。このシングルはアメリカでも売れていて、今度ニューヨークのラジオ局のDJにインタビューを受けます。

 

ーーそれはすごい! アメリカでも反響の輪が広がっているわけですね。海外の人たちはチャクラのどういうところを面白がっている、もしくは評価しているのだと思いますか?

:実際どういう所を面白がっているのか、よくわかりません(笑)。

美潮:なんでしょうね。もちろん、曲もアレンジもおもしろいし、演奏もいいってことが先にあっての話でしょうけれども、なんだかエネルギーにあふれていて、音楽に勢いがあって、やっぱりそういったものに触れると元気が出るんじゃないでしょうか。直に伝わって。音楽ってものはすごいですね。当たり前のように言葉も国境も越へますね。

 

ーー海外からのこうした反応は、お二人にとっても活動を続けていくうえで大きなモチベーションとなるのではないですか?

:モチベーションは確かに上がりました。マイケルとは次のアナログ盤が出来たところです。(収録されるのは)過去の作品(音源)ですが、彼はその曲がチャクラ特有の世界観があると反応しています。楽しみにしていて下さい。

美潮:別に外国でも国内でも、何回も聞いてくれたり、いいなぁって思ってくれる人がいれば、もうとっても嬉しいものです。SNSとかでたまにそう云ふつぶやきを目にすると、私も元気になります。気がついたら今年がチャクラデビュー40周年でした。最初に入ったバンドがチャクラで、私ほんとに良かったなって思ってます(笑)。世の中はどんどん変わってます。気分的にはもう隠居なんですけど私(笑)。でも何か工夫をしてですね、作り方とか出し方とかも今は色々できるわけなので、何か“おもしろいね!”って思えるものを見つけて、もう一回ぐらいは、ちゃんと形にして出していけたらいいなぁって思ってます。

 

ーーでは、お二人それぞれの今後の予定を教えてください。

:さてそれは楽しみにして、がっかりして下さい。

美潮:コロナの影響で今は通常にはできませんので、ちょうど良いしこの機会に引越ししようとしてます。これがまぁものすごく大変なので(笑)、まぁ来年からくらいですかね、情勢が収まってくる頃にはまたライブを始めようと思っています。

 

ーー今回のお二人のコラボレーションが今後さらに発展していく可能性はあったりしますか?

:美潮は自分で音楽家としての活動を続けています。僕がいま出来るとしたら美潮に曲を提供する事でしょう。勿論「Stardust」の時のように録音で、演奏参加も可能でしょう。
「Stardust」の録音に参加した人達とはまた、新しい実験音楽や新曲なんか、一緒にやりたいと、思います。

美潮:ぜひ、やりましょう!よろしくお願ひします。

 

ーーおお!なんともワクワクする発言ですね。今日はありがとうございました。

:ありがとうございます。

美潮:ありがとうございました。

 

【作品情報】

アーティスト:板倉文 & 小川美潮
タイトル:Stardust
フォーマット:7インチレコード
品番:glax-002
レーベル:galabox disx
販売価格:1,500円(税抜)
発売日:2020年11月3日(火・祝)<レコードの日>
https://record-day.jp/item/glax-002/

 

板倉文&小川美潮『Stardust』c/w小川美潮『You need me 』~PV~

レーベルサイト
http://disx.galabox.net/Bun&Mishio/