Last Update 2023.12.27

Interview

Spotify×レコードの日 Vaundyインタビュー

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作詞・作曲・アレンジをすべて自ら行い、アートワークのデザインや映像もセルフプロデュースする現役大学生のマルチアーティストVaundy。2019年11月にYouTubeで公開した“東京フラッシュ”が2か月で100万回再生を突破し、その後に発表した楽曲も次々とバイラルチャートをにぎわせ、Spotifyが毎年発表する「Early Noise 2020」に選出されると、“不可幸力”がSpotify PremiumのCMソングに。現在では“東京フラッシュ”と“不可幸力”のYouTubeでの再生回数がどちらも優に1000万回を超え、サブスクのトータルでの再生回数は一億六千万回以上を突破。5月に発表したファーストアルバム『strobo』はデジタルネイティブ世代の台頭を決定付ける、今年を代表する一枚と言って過言ではない。

そんな『strobo』に“東京フラッシュ”のTEMPLIMEによるリミックスを追加収録し、アートワークも一新された『strobo+』が11月3日の「レコードの日」にLPでリリースされる。プレオーダーの時点で、かなりの反響を呼んでいるそうだ。Vaundy自身はこれまでアナログにあまり触れてこなかったそうで、おそらく彼を支持する同世代のリスナーも同じようなタイプが多いに違いない。しかし、今後はSpotifyでアーティストや楽曲を知り、レコードを手に取ってその音楽をもっと好きになって、もう一度Spotifyで深掘りをする……そんな相乗効果がきっと生まれるはず。それでは、デジタル世代の思うアナログレコードの面白さについて、Vaundyに話を聞いてみよう。

取材/文:金子厚武

 

――まずはご自身の作品がLPになることについての感想から聞かせてください。

Vaundy 僕はそもそも自分の作品がCDになるとも思ってなかったので、LPになるっていうのはわりと衝撃です(笑)。昔からアニソンが大好きで、アニソンのCDは買ったり借りたりしてたんですけど、中学の頃には既にYouTubeがあったので、ちょっと音楽を聴く分にはYouTubeで事足りてたんですよね。で、大学に入ったくらいから、サブスクで音楽をいろいろ聴くようになっていたので、去年の6月に本格的に音楽活動を始めたときは、最初「CDにしなくても、サブスクだけでやっていけるんじゃない?」って感じで。とはいえ、全国のCDショップにCDが並ぶなら、それは出してみたいと思ったので、『strobo』を出したんですけど、でもどっちかと言えば、CDよりLPの方が作りたくて。

 

――その理由は?

Vaundy 今って逆需要が出てきてるというか、手に持たなくていい時代が来たからこそ、手に持ってる方が洒落てない? みたいな感じだと思うので、来年以降はもっとLPが出るようになると思うし。MDのあの透明なプラっぽい感じって、今見るとすごいNEO TOKYOな感じがするんですよね。

 

――これまで実際にアナログレコードに触れる機会はありましたか?

Vaundy ちゃんと聴いては来なかったんですけど、音楽好きの友達によくレコード屋に連れて行かれて、渋谷のHMV、disk union、TECHNIQUEとかには行ってました。僕はLPのデカさが好きで、「どんどん小さくしよう。何ならデータでよくない?」っていう時代に、めっちゃかさばるし、ちょっと邪魔だなあっていう方が面白いと思うんですよね。なので、アナログの音がどうこうというより、あの存在自体が面白い。持ってることで気持ちが昂るアート作品みたいな感覚もあるし、もともと僕はCDもグッズとして見ているので、LPもグッズとして、「持ってる私、オシャレ」みたいな感覚になれることも大事だと思います。

 

――その意味では、アートワークも重要ですよね。『strobo』もピンクを基調としたジャケットでしたが、『strobo+』ではピンクがより強調されています。

Vaundy CDのアートワークに関しては、シンプルにしたいっていうことと、まずVaundyっていう名前を売らなきゃってことを考えていて、ピンクにしたのは……リファレンスとして、めっちゃピンク色の本があって、それを再現しようと思ったんですけど、CDのときはその感じがまだ十分には出せていなくて。でも、LPは顔の前に近づけたら、顔がピンク色になるくらいピッカピカで、一番いい蛍光が出せたなって。最近はジャケットを80年代風にしたりして、デジタルなものをちょっと古く見せたりしてたけど、これからは逆だと思っていて、『strobo+』は現代のものだっていうのがジャケットからもちゃんとわかると思うから、すごく気に入ってます。

 

Vaundy『strobo+』
https://record-day.jp/item/zxrv-1001/

 

――先日試聴盤を聴かれたそうですが、音の感想を教えてください。

Vaundy 全然違うなって思いました。サブスクで、作ったときの音がそのまま聴けますよって時代だから、「逆に汚す」っていうか、僕はそう思ってるんですけど、環境によっても音が変わるっていうのは、楽しみ方が増えるし、そういうのいいなって。僕の曲はわりと質量が多くて、マスタリングしても音が小さかったりすることがあるから、正直「LPにして大丈夫かな?」とも思ったんですけど、聴いてみたら、逆に「こっちでよくない?」みたいな(笑)。僕デザインを勉強したりもしていて、物事をシンプルにしたがるので、シンプルな曲をアナログにすることで、ちゃんと密度が出るというか。だから、正直「もっとやれるな」とも思ったんですよね。LPになると、「これミックスから変えた方がいいな」って思って、だったら構成も変えた方がいいとか、どんどんやりたいことが出てきちゃって。もしまた機会があれば、最初からLP用に曲を作りたいです。

 

――『strobo+』には“東京フラッシュ”のTEMPLIMEによるリミックスが追加で収録されていますね。

Vaundy TEMPLIMEさんのリミックスは重厚感があって、それがちゃんと保たれたままアナログになっているというか、メリハリがちゃんと出ていて、「この感じがLPで出せるんだ」っていうのはびっくりしました。それは“soramimi”にしてもそうですね。EDMみたいな曲をLPにする面白さもあるんだなって。

 

――LPとサブスクだと、「アタマから順番に聴くか、一曲聴きか」という聴き方の違いもあるわけですが、Vaundyさんはリスナーとしてはどちらのタイプですか?

Vaundy 完全に一曲ですね。「アルバムで聴きます」っていうのは、ホントにそのアーティストが好きじゃない限り、無理だと思います。なので、これからは古いLPを聴くんじゃなくて、新しいLPを聴く時代が来ると思うんです。なぜかというと、今はみんながプレイリストでいろんな音楽を聴いてる中、LPは「ひっくり返すのが風情がある」みたいな感じかもしれないけど、そのうちまた「いや、やっぱりめんどくね?」みたいにもなるだろうし、そうなると大事なのはやっぱり中身で。その点、『strobo』は誰が聴いても分かりやすく違う曲が入っている、プレイリスト型のアルバムにしたので、それがLPになったのはよかったというか、意味があるんじゃないかなと思いますね。

 

 

――Spotifyと「レコードの日」がコラボすることに関しては、どんな風に感じますか?

Vaundy 今ってアナログ世代、CD世代、デジタル世代、全部の世代がいるのがめちゃめちゃ面白いなって。で、今ってタイアップとかを決めてる世代が僕からすると昔の音楽を聴いてる人たちもいるから、80年代がリバイバルするのは当たり前の話だし、LPが流行るのも当たり前な気はします。ただ、今って大人が「LPっていいんだよ」って提示してあげると、若者が「おしゃれ!」って飛びつくんですよね。ちょっと前だと、「いやいや、新しいのでいいじゃん」ってなってたと思うけど、今の子たちは何でも「面白そう」ってなる。それって、情報が少ないから、気軽に手を出せるってことだと思っていて。

 

――面白い考え方ですね。

Vaundy 文化を知り過ぎちゃうと、他のものに触れられなくなっちゃうと思うんです。例えば、LPを知り過ぎると、「CDなんて」ってなると思う。でも今の若者はいい意味で情報不足で、調べて、使ってみないとわからないけど、でも手元には何もない。学校では普通のことしか教えてもらえないし、その結果好きなものがどんどん細分化されて行って。だから、自分の知らない分野のことを提示されると、ホントに何もわからなくて、きっとそういう人はLPを渡されると、「なんかいい感じ」って聴くと思うんです。無知はダメだと思うけど、でもそこが流行りの原点というか、「なんかいい感じ」でパッと手に取れるのが今の世代だと思うから、今回LPを出せたのはすごくいいタイミングだったと思いますし、すごくありがたいです。

 

――最後に改めて、『strobo』というアルバムは自分のキャリアにおいてどんな意味のある作品になったと思いますか?

Vaundy 自分にとっての名刺代わりになる作品になったとは思うんですけど……でも進化の過程の一個でしかないとも思ってます。「最初のアルバムが一番いい」みたいなことが言われたりするじゃないですか? でも、もうそういう時代じゃなくなってるぞっていうのを、僕がちゃんと言えるようになりたい、次のアルバムの方が絶対いいと思うんです。もちろん、「一枚目の良さ」っていうのはあると思うんですけど、場面に合わせて作ったのをまとめたのが『strobo』で、次はコンセプトアルバム……ではないにしろ、もう少しコンセプトを考えて、また全然違うジャンルを入れていったりすれば、どう考えても『strobo』よりいいものになるはずで。なので、また早く新しい名刺を作んなきゃなっていうか、きっと一年ごと、数年ごとに名刺を変えて行くような感じになるだろうなって。

 

――常に進化を続けていくと。

Vaundy 僕はまだちゃんと世の中に残るものを作れていないと思っていて、“東京フラッシュ”がいい曲だと言ってもらえるのは嬉しいんですけど、さらにしっかり残っていく音楽を作りたい。『strobo』の曲は結構衝動的に、ニーズが転がってるものを見て、「こういうのが流行ってるのね」って感じで作ってたけど、今は「ニーズに合わせて作るとこういうことが起こる。じゃあ、もっと勉強しなきゃ」ってなってるので、次のアルバムは世間にしっかり届く音楽を作りたいです。「誰でもチラッとは聴いたことがある」みたいな、そういうことも大事だと思うので、今はそのための準備段階ですね。

 

 

【リリース情報】

アーティスト:Vaundy
タイトル:strobo+
フォーマット:LPカラー盤
品番:ZXRV-1001
レーベル:SDR
販売価格:3,600円(税抜)
発売日:2020年11月3日(火・祝)<レコードの日>
https://record-day.jp/item/zxrv-1001/

■Tokyo Flash – TEMPLIME Remix (Spotify ONLY)
11/3 0:00 Spotify限定配信
http://open.spotify.com/album/02vyZyNsLBrUNo7xlS93LT

Vaundy公式サイト:https://vaundy.jp
レコードの日公式サイト:https://record-day.jp