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EGO-WRAPPIN’、RECORD STORE DAY JAPAN 2018 アンバサダー就任記念インタビュー | Record People Magazine

Last Update 2023.12.27

Interview

EGO-WRAPPIN’、RECORD STORE DAY JAPAN 2018 アンバサダー就任記念インタビュー

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1996年に大阪で結成され、その独自の世界観と音楽性で常に注目を集め続けている類希なアーティストEGO-WRAPPIN’。

「満を持して」今年度のRECORD STORE DAY JAPANアンバサダーに就任し、4/21のRECORD STORE DAY当日には待望の新曲を7インチでリリースするお2人に、音楽、レコード、そしてレコードストアへの熱い想いを訊いた。

取材・構成:宮内健
写真:平間至
動画:飯田康寛
取材協力:
フラッシュディスクランチ
https://r-p-m.jp/shop/flashdiskranch
ぷあかう 
http://poorcow.net/

 

──EGO-WRAPPIN’は今年結成22年目を迎えます。CD全盛の時代にデビューして、今や配信やストリーミングへと音楽の聴き方も移り変わってきましたが、そんな中でここ数年アナログレコードがふたたび注目され直している状況を、お二人はどう捉えていますか?

中納「作り手としてはエエことちゃうかなって思いますね。ミュージシャン側からすれば、こだわって音楽を作ってるから、そのこだわりってPCやスマホで聴く音質ではなかなか伝わらないっていうか、あれはあれでまた別の聴かせ方があると思うんですよね。」

「アナログレコードは、ジャケットも大きいから飾ってもついつい見てしまうしね。ジャケットを眺めたりレコードを拭いたりと、レコードをかける行為そのものが、音楽を作ってる人たちへの敬意が窺えるというか。」

中納「今はレコードをかける一連の作業が「手間」ということになるのかもしれないけど、昔はそうやって聴くことが普通だったわけじゃないですか。レコードからCD、PC、スマホと聴き方が変わってきたけど、レコードをかける作業は、一つ一つがすべて音楽を聴くことにつながる。それが今となっては大切なことに思えて。なんか自分から動いて聴くっていうのが、心に残ると思うんですよね。」

 

──考えてみれば、PCもスマホも他の用途のための機器に音楽を聴く機能がついてるものであって、レコードを聴くシステムのように、音楽を聴くためだけのものではないですからね。

中納「ながら聴きになってしまいがちだし、どうしても音楽との向き合い方が変わってくる。あと、最近はアルバムで聴かへんで、ランダムで聴くことが多いってことを耳にしたり。私らは曲間とかもめちゃこだわってるし、(取材場所にあったレコード棚を眺めながら)たぶんここにいる人全部そうだと思うんですよ。」

「自分らがアルバムを作る時も、曲調として激しい曲や静かな曲、早い曲や遅い曲……いろんな表現を1枚の中でしたいと思って。だけどそこで、初めからこの曲は1曲目、2曲目って考えて作ってるわけじゃなくて、曲順や曲間にこだわることで、次の曲へ向かっていく流れを作れるし、全体のバランスが出せる。まあ、ほぼ自己満ですけどね(笑)。でも、それを含めて「どうですか?」って提案してるわけやから。そういうところ美味しく味わって聞いたら、余計に楽しくなると思う。」

中納「ライヴにしてもそう。ステージに立つ人だけじゃなく、観客が拍手するのもその人の間じゃないですか? そういう間が、アーティストそれぞれの間だと思うし、そのすべてが音楽っていうか。聴き手の人にとっても、そのこだわりや芸術性に知らず知らずに触れてると思うんですよね。だけど情報があふれている中でながら聴きになると、(音楽を聴くということが)情熱として薄まるような気がするんです。」

 

──ちなみにお二人はアナログレコードを、どんなリスニング環境で聴いてるんですか?

中納「私は今年に入って真空管のアンプを作ってもらったんです。小松音響研究所っていう、その人の部屋に合わせてアンプを作ってくれるところがあって。どういうジャンルを聴くのかとか聞かれて、アンプに相性がいい中古のスピーカーも見繕ってくれて。音楽やる人はあんまり音響にこだわらんほうがいいって意見もあるんですよ。聴く人はいろんな音響環境で聴いてるわけやし、あんまりこだわらなくていいと思ってたんですけど、やっぱりシステムを変えてみたらすごくよくて。今まで聴いてたレコードでも、聴こえてなかった音がすごく聴こえてきたり。細いシンセの音とか「こんなん入ってたんや!」とか発見したり。そもそも真空管って小さい音でもいい感じに聴こえるんですよね。」

「トランジスタを真空管に変えたら、昔のレコードばっか聴いてまうよな。それこそ音像が変わって聴こえたり。」

中納「そうなると、CD聴くよりレコードを聴く方が面白くなってくるんですよね。」

「僕は、でっかい音で聴けるシステムがあって、ちゃんとした音圧でバーンと聴きたい時は、そこそこのスピーカーとアンプで聴いてますね。今は音楽を小さい音で聴くことが主流やし、作る側も小さい音で細かい音を出す技術を開発している。それは素晴らしいことやし、僕も小さい音で聴くことも好きではあるんですけど、やっぱりレコードはでっかい音を出して聴いたほうが音が見えてくるっていうか。それにアナログレコードは音を大きくしても耳が疲れない。自分の音楽も、できれば分厚いスピーカーで聴いてもらいたいなって思いますしね。だけどその一方で、ポータブルプレーヤーで聴きたくなる時もあって。ポータブルで聴き始めると、それでしか聴かなくなる。やっぱり手軽やから。」

──その2つを使い分けたいって気持ちもわかります(笑)。

中納「ポータブルプレーヤーもエエなぁ。最近、またいろんな形やデザインのが出てきてるしね。」

 

──EGO-WRAPPIN’は、ほぼすべてのアルバム/シングルをアナログでリリースしていますよね。

「僕たちレコード好きなんです!っていう気持ちの表れですね。」

中納「いろんなツールで聴いてほしいから。昔カセットテープでも出したことがありましたし。」

 

──ちなみに現在ニュー・アルバムのレコーディング中ですが、そちらもアナログで出す予定?

「もちろんです! エゴはやっぱりレコードで聴いてほしいし、レコードで聴いてくれたらうれしいですからね。」

 

──EGO-WRAPPIN’が音作りをしていく上で、アナログレコードを参考にしたことはあるんですか?

「いい音の感覚って人それぞれちゃうかなって思うけど、でも、自分の好みの音が見つけられたら幸せやなって思いますよね。自分らにとっては、それがレコードの音の肌触りがそのひとつで。「くちばしにチェリー」や「色彩のブルース」なんかは、50年代以前のレコードを漁ってきては、エンジニアの人に聴かせてましたね。あとは「このドラムは、ヘッド何を使ってるんだ?」とか分析したり。そうやって探ってやってる感じが、音楽を作る上での魔法になったりするんですよ。」

 

──ちなみに自分の中でスタンダードな音として位置するようなレコードってありますか?

中納「ジャンルにもよるけど、ザラっとした質感は好きですね。昔のジャズやベッシー・スミスみたいな人の古いレコードのパチパチした音を聴くと、おだやかな気持ちになりますね。」

「僕はデタミネーションズのレコードを聴くと高揚しますね。たとえば60年代のスカタライツと、80年代に再結成した時のスカタライツでは、やっぱり音質が違うんですよ。60年代はザラっとしてるし、80年代は艶やかなんですよね。その艶やかなスカタライツもまたいいんですよ。そういう流れがある上で、デタミネーションズのスカは、また次の時代の音質を作ってたような気がするんですよね。ただただ昔の音を追求するんじゃなくて。その姿勢にやられたし、自分にとってはすごく新しく聴こえた。」

 

──ルーツ・ミュージックと現代の感性がぶつかり合う瞬間というか。

「そうそう。スカでやってんのにこの音質や!みたいなギャップが。そこもセンスが問われるから。」

 

──今回撮影のために場所をお借りしたフラッシュ・ディスク・ランチでもレコードをガチ買いされていましたが、アナログレコード・ラヴァーなお二人にとって印象深いレコード店は?

中納「私は大阪のDIDDLEY BOW 。店主の横山さんにはいっぱい教えてもらってますね。音楽の師匠みたいな存在で、オールジャンルでむちゃくちゃ詳しいし、何を聞いても答えてくれる。
それでいて、座右の酩になりそうな一言をサラッと言われるから、ドキッとすることも多くて。それはリスナーというより、プレイヤーとしてね。曲作りのこととか、いろんなこと相談してるんですけど、結構ズバズバ言ってくるし、時にディスられたり(笑)。こないだも久々に行ったけど、「今レコーディングしてて、歌詞がなかなか出てこなくて大変なんですよね」って言ったら、「う~ん、なかなか出て来ぇへん歌は、歌ちゃうで」って。」

 

──すごい! ズバッと本質突いてきますね(笑)。

中納「(笑)そういうことをズバズバ言われるんです。」

「僕も印象深い店はいろいろありますけど、大阪の味園ビルにあった「カリエンテレコード」とか。バーの一角にあるレコード屋だったんですけど、カリブの音楽をいろいろ買いましたね。バーで酒を飲んでレコード聴いてっていう、シチュエーションとしてはめちゃめちゃ最高のところだったんですけど。あとは京都の「BLACK ARK」。レゲエのレコード屋やけど、店主の小島さんはニューウェイヴとかパブロックも詳しくて。ここでも店でビール飲みながら、ニューウェイヴを爆音で聴いてましたね。」

 

──中納さんも森さんも、レコード店が音楽の教科書みたいになってた?

中納「そうですね。あと昔、ミナックスの上にあったドラム&ベースレコードってレコード屋も行ってて。「これもエエで、これもエエで」ってパンパンパンって教えてもらったレコードが、全部いいんですよ。「こんな感じの音楽が聴きたいんですけど」って聞いたら、結構その通りのものをどんどん教えてくれる。それこそ多感な年頃でなんでも吸収したいって時期やったから、「全部買う!」って言うて。そうすると、また安くしてくれるんですよね(笑)。」

 

──そうやって波長が合うレコード店や店主の方と出会えると、すごく幸せですよね。

「初めて行った店でも、その店でかかってる音楽を聴いて、いいと思ったら「これ誰ですか?」ってところからはじまるコミュニケーションもある。「こういうの好きやったら、これもいいよ」みたいなやりとりで、自分が知らないレコードを教えてもらったり。」

中納「この人から教えてもらったから、余計によく聴こえるっていうのもありますよね。扉を開いてくれるようなレコード屋さん。」

 

──自分で探してるだけだったらたどり着けなかったようなレコードや音楽に、ちょっと扉を開けてくれるような。そう考えると、個人でやってたり、小規模のレコード店で音楽と出会っていくというのは、他ではなかなか得難い体験ですよね。

中納「今はネットショッピングで何かCDでも買ったら、それに関連する情報をどんどん教えてくれるじゃないですか? 実際それでオススメされたものを買うこともあるし、良かったりもするんですけど。レコード屋のおかげで、それはそれはいろんな道が開かれました(笑)。」

 

──そうやって多感な時期に、いろんな音楽を吸収して、ジャンルに囚われずに聴いてきたことが、今のEGO-WRAPPIN’の音楽だって一つのジャンルにとどまらず、いろんなものを取り入れたり、面白いと思った音楽をその都度吸収していくスタイルにつながっているような気がしますね。

中納「うん。レコード屋さんに通うことで、めっちゃ感性を磨いてもらったと思います。」

 

 
RECORD STORE DAY JAPAN オフィシャルサイト
http://recordstoreday.jp

EGO-WRAPPIN’オフィシャルサイト  
http://www.egowrappin.com/

▼ライブ情報
EGO-WRAPPIN’ 「HALL LOTTA LOVE ~ホールに溢れる愛を~」
2018年4月7日(土) 中野サンプラザホール
2018年4月13日(金)大阪 フェスティバルホール

 

EGO-WRAPPIN’
RECORD STORE DAY JAPAN