Last Update 2019.12.13

Interview

岩崎宏美 × Technics CTO 井谷哲也 レコードの日スペシャル対談

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レコード・リスナーのあいだでは、音楽・秋の文化祭として定着、5年目を迎えるアナログ・イベント「レコードの日」。毎年さまざまなアーティストから素敵な限定レコードなどのアクションのあるイベントだが、このイベントで3年連続5タイトルものアルバムをレコード化していらっしゃるのが岩崎宏美さん。そして、Technics CTOとして業界に名を馳せるパナソニックの井谷哲也さん。ともに、良き時代の音の体験をもとに、2000年代のレコードシーンをリードなさっています。
ここでは、国内随一のレコード・プレスプラントであり、レコードの日 イベントの心臓部でもある東洋化成:末広工場を見学いただき、お二人より素敵なコメントの数々をいただきました。

文:今井智子
写真:石田昌隆
ヘアメイク:朝岡美妃
東洋化成:西谷俊介

 

ーー工場見学はいかがでしたか。

岩崎 ビクター時代に「聖母たちのララバイ」がヒットした時に、「これが100万枚目です」という取材を工場でしたんです。工場の中で歌ったのは覚えていますが、今日のように細かく拝見した記憶はなくて。だから新鮮でしたね。カッティングした溝をコピーして、それが凸型になるなんて発想もしてなかったから。そうやって作っていくのかって驚きました。マザーから2000枚しかプレスできないなんて。全てのお話が新鮮でした。

井谷 そうですね。アーティストの方でも工場内にはあまり入らないんじゃないですかね。

岩崎 びっくりしたのは、袋に入れるのも全部、手作業だということ。あれはすごいですね。ノイズを調べる女性スタッフの方も、1日中聴いてるなんて。好きな音楽だけではないのに。

井谷 日本の人は真面目なんですよ。リスナーも細かいですね。海外と比べると一番シビアなんじゃないかな。オーディオでいうと、ヨーロッパだと、だいたい国によって傾向がある。その傾向にはまっていれば、それなりに納得いただけるのかなと思いますけど、日本人はバリエーションも多いし。

西谷 日本は個人のお客様の声を大切にしている印象がありますね。

岩崎 昔のもの(アナログ盤)を作るには、昔の機械を、ああやって大切に使っていくしかないんですね。

井谷 そうです、メンテナンスをして使っていくんです。

西谷 もう製造していない機械なので、部品を海外のオークションで入手することもあります。クラシック・カーでタクシー・ドライバーをやっているようなものですね(笑)

岩崎 これだけアナログがブームになっているのに、制作する機械を作らないんですか、それとも作れないんですか。

西谷 やはり技術継承がむずかしいんです。作れる人が世界的に少なくなっているんですよ。それでなんとかしようと、ちょっとずつ世界中で動き出している感じです。

井谷 我々も全く同じで、技術伝承というところではギリギリだったんですよ。2000年代に入ってからの新機種レコード・プレイヤーのタイミングがね。現役は誰もわからないんで、OBの人たちを頼って、昔のノウハウを教えてもらったんです。私が新入社員の頃の工場長とかですよ。もうちょっと遅れていたら(笑)

岩崎 途切れてたかもしれない?

西谷 音楽業界だけじゃないですけど、技術の革命で、大手さんが同じ技術を繰り返すことはないですよね。そこに立ち会えたのは、運が良かったと思います。また昔と同じ製造方法で作られたレコードというものが、また新しい人に聴かれて、時代を超えてそのアーティストの声が届けられるようになって。多くの中から選べるようになったことで、視聴者が広がることになったんじゃないかと思います。

岩崎 ロビーにあったジュークボックスを見て思い出したんですけれど、私がジャクソン5の「ABC」を初めて聴いたのは、小学5年生の時に夏の合宿の時に行った菅平高原のロッヂにあったジュークボックスなんですよ。

井谷 そうだったんですか。マイケル・ジャクソンがお好きなんですよね。

岩崎 ええ。マイケル初体験はジュークボックス(笑)。それまで洋楽はそんなに知らなくて、そのボックスに入っていたので知っていたのは、アダモの「雪が降る」だけだったんです。他はわからないし読めないし。家だと私と妹はステレオに触らせてもらえなくて、姉がいない時にこっそりレコードを聴いたら「これ、触ったでしょ、傷がついてる!」って怒られて(笑)。そのジュークボックスならお金を入れれば好き勝手にかけられるから、これはいいと思って(笑)。それで目をつぶって適当にボタンを押したら「ABC」がかかって、それ以来夢中になりました。そうしたら一緒にいた友達が、「うちに兄が聴かなくなった「ABC」があるからあげる」って。そこからモータウンのダイアナ・ロスとかスティーヴィー・ワンダーなど洋楽のアーティストを聴くようになりました。中学に入って自分のお小遣いで最初に買ったのは、ディオンヌ・ワーウィックの2枚組ベスト盤。「サンホゼへの道」とかバート・バカラックの曲は、ディオンヌから知ったんです。そのあとはカーペンターズ。バート・バカラックは大好きです。

井谷 結構男性の曲も歌いますよね。

岩崎 はい、マイケル・ジャクソンは歌いました。あと、初めてのコンサートで歌ったポール・マッカートニー。

井谷 僕らの世代はちょうどシンガー・ソングライターの時代で、もうちょっと後になるとディスコになっちゃうんですけど、あの頃のものは、今聴いてもいい曲が多い。

岩崎 本当に、そうですね。

井谷 キャロル・キングとか。

岩崎 歌っています。「It’s too late」とか「you’ve got a friend」とか。

井谷 ぜひ『Dear Friends』シリーズで、カヴァー集を出していただきたいですね。


【リリース情報】

アーティスト:岩崎宏美
タイトル:Dear FriendsⅧ 筒美京平トリビュート
レーベル:インペリアルレコード
販売価格:3,500円(税抜)
仕様:LP
品番:TEJI-38053
発売日:2019年11月3日(日)<レコードの日>

レコードの日オフィシャルサイト
https://レコードの日.jp