Last Update 2020.9.14

Interview

銀杏BOYZ・峯田和伸、RECORD STORE DAY JAPAN 2020 アンバサダー就任記念インタビュー

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店内に入った途端、目が輝きを帯びた。というよりその背中がもうレコード好きの快感と熱気を伝えていた。陳列棚に向かい、そして慣れた手つきでサクサクしては1枚、2枚と抜く。「これ、あとで買おう(笑)」。

峯田和伸。今年の『RECORD STORE DAY JAPAN』のアンバサダーに選ばれたこの男は、NHKの朝ドラや大河ドラマに俳優として出演するようになった今も、仕事の合間にこうしてレコード・ショップにしょっちゅう足を運んでいるのだという。高校の頃に夢中になってからというもの、GOING STEADY時代を経て銀杏BOYZとして活動を展開する中で、当たり前のように日々をレコードとともに過ごしてきた峯田が今こそ伝えるのは、筋金入りのレコード・ハンターであり、愛すべきレコード・ラヴァーズであり、でも純粋な音楽好きの姿だ。それは『RECORD STORE DAY JAPAN』のアンバサダーに就任してもしなくても決して変わることはない。

外観がちょっとニューヨークの古いレコード・ショップを思わせる『ココナッツディスク 池袋店』店内で取材は行われた。2005年1月に同時リリースされた銀杏BOYZの『君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命』と『DOOR』の2作品も今年の『RECORD STORE DAY JAPAN』対象商品としてレコード化されるが、自分のこれからの作品への高いハードルを語る姿が印象的だった。峯田にとってレコードはレトロやアンティークなどではなく、あくまで「リアルな現在と未来」なのだ。

取材・構成:岡村詩野
写真:平間至
動画:岡川太郎
取材協力:ココナッツディスク 池袋店 (http://coconutsdisk.com/ikebukuro/)

 

 

――今日はここ『ココナッツディスク 池袋店』にお邪魔していますが、峯田さんはこちらによく遊びに来たりするのですか?

峯田和伸 はい、今は引っ越しちゃったので最近来られなくなったんですけど、前はよく来てましたね。最初は江古田店に行ったんです。そこでレゲエのシングルとかを買ったりして…。そこから池袋店の方にも顔を出すようになって…。

 

――今日は峯田さんをイメージしたレコードを店主の方が並べてくれています。これらは全部聴いていますか?

峯田 聴いてますし持ってます! ちょうど最近ジャックスをまた改めて聴いたりしていたところです。この中だと他にビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ』とかサニーデイ・サービスの『東京』とかもすごく好きですね。今でも週イチくらいはレコード屋さんに行ってるんですよ。友達と家でレコード品評会とか開くんです。互いに買ったものを聴き合うっていう。今は昔のブラジル音楽を集中して買ったりしていますね…昔のボサノヴァやカエターノ・ヴェローゾとか…。しかも最近は、オーディオを一式…ターンテーブルはもちろんですけど針もケーブルもアンプも新しく替えたので、これまで聴いていたものが全く違って聴こえるんですよ。

 

――というと?

峯田 それまでは30年くらいずっと同じオーディオ・セットを使っていたんです。でも、引っ越しを機に新しくしようかなって、銀座のオーディオ専門店に行ったら、試聴もできるっていうから聴いてみたらすごくよかったんです。店員さんにもおすすめしてもらったので思い切って買っちゃいました。結構高かったですよ(笑)。

 

――オーディオを新しくしたことで、具体的にどういう発見がありました?

峯田 自分のレコーディングにすごく参考になったというか。音の配置がすごくよくわかるんですね。ベースをどのあたりまで寄せたらいいかとか、どのあたりの位置にすればいいかとか。今回新しいオーディオでいろいろなレコードを聴いてみてそういうことが当たり前だけどやっぱり重要だってことに気づいたんです。

 

――それまではほとんど意識していなかったと。

峯田 そうなんです。もともと僕はCD世代で。実家は山形。家には親父が好きだったビートルズとかがあってもちろん聴いてはいたんですけど、CDはボタン一つで再生できるから便利だし、当時は(CDは)音もいい…と思っていたんですけど、高校2年の時に仙台のレコード店『DISK NOTE』に初めて遊びに行って意識が変わっちゃったんです。周囲にDJやってる友達もいたし、レコード買うのが玄人みたいなノリに最初は負けたんだと思います(笑)。そもそも山形にはそういうレコード店、なかったんですよね…。最初に買った1枚は今でもハッキリ覚えてますよ。グリーン・デイのビリー・ジョーのサイド・プロジェクト的バンドのピンヘッドガンパウダーの7インチです。確か780円とかだったかな。僕、お小遣いが月に8000円くらいで限られてたから、仙台までの電車代の往復運賃含めても7インチしか買えなかったんですよね。でも、嬉しくて友達に自慢したくて次の日に学校まで持っていきました(笑)。で、そのうちもっともっとレコードが欲しくなって、実家が電器店で僕もバイトしていたんですけどほとんど毎日バイトに入ってバイト代もらって。それでもっぱら『DISK NOTE』に買いに行ってました。

 

――東京のレコード店に行くようになったのは上京してからですか?

峯田 96年1月…高校3年の時にグリーン・デイが初来日したんです。進路も決まっていたので友達と一緒に学校休んで観に行ったんですけど、その前の日に初めて西新宿のレコード屋に行って圧倒されました。その頃、音楽雑誌に西新宿のレコード店の広告がいっぱい出ていて、「こんなにたくさん店があるんだ」って。『Rough Trade』とか『Vinyl Japan』とか。まだライヴ・ハウスの『ロフト』も西新宿にあったので観に行ったりしましたね。

 

――やはりパンクとかオルタナを主に買っていたのですか?

峯田 そうです。当時はパンクだけ聴けばいいって思っていたんで、「パンク的な見方」しかできなくて。「これはパンク的なカレーだ」とか「これはパンク(好き)が観ていい映画なのか」とか。そういう価値観でいましたね。音楽的な意味でのパンクももちろんあるんですけど、今思うとパンクから得たものは考え方だったり世間を見る目だったりだと思います。今はレゲエやブラジル音楽などいろんなジャンルの音楽も聴きますけど、やっぱり今もそういう「パンク的」な価値観を僕自身持ってると思いますね。

 

――そうした「パンク的な見方」とレコードを聴くこととが合流するポイントというのはどういうところにあると思いますか?

峯田 レコードが作られる現場…プレス工場に行って思ったんですけど、レコードって人の手によって作られているんですよね。で、僕も昔から自分の作品は手でジャケットを折ったり挿入したりしていたんですけど、そういう「自分の手」で何かをやるってことはパンク的だしレコード制作の現場にあるんだなって思います。就職してサラリーマンになっても好きなものは自分で作れるんだ、大人に頼まなくても自分たちで知恵さえつければやれてしまうんだ…って、そういうところじゃないかな。もちろんCDでも聴くし、ダウンロードでも買いますけど、レコードは周辺の空気も巻き込んで聴こえてくるような分母の大きい感じが好きですね。

 

――それはまさにパンク的DIY精神だと。

峯田 そうですね。実際、僕が好きで聴いてたバンドとかってみんなだいたいレコードで発売していたんです。むしろCDじゃなくレコードでしか聴けなかったり。レコードって大量生産ではあるんですけどいわゆる資本主義からは逸脱していると思うんですよ。今は音の配置とかを実際にレコードを聴いて勉強したりしてますけど、昔はそういう姿勢の部分に本当に夢中になったと思います。

 

――言わばレコードで人生を学んだ、峯田和伸を形成するこの1枚、となると?

峯田 やっぱりブルーハーツのファースト『THE BLUE HEARTS』かなあ(1987年)。もちろん後追いですけど、今もその時に買ったレコードを持ってますし再発盤も持ってます。あと、Los Crudosというシカゴのハードコア・バンドの作品…僕が持っているアルバムは1枚1枚全部手刷りだったんですよ。しかも版がズレててそこに布のパッチがついていたり。それが5種類くらいあって全部ジャケットの中に入っててパンパンになってる。そういうのを見るとインスピレーション湧きますよね。お客さんの立場になると「なにこれ! 可愛い!」みたいなね。そういうものを自分でも作りたいなって今も思っています。

 

――峯田さんの活動や銀杏BOYZの作品を通じて、今は若いバンドがそのスピリットを受け継いでいます。実際に、レコードとダウンロードという極端な2つのフォーマットで作品を発表するスタイルもすっかり定着してきました。

峯田 ねえ、ビックリしますよね…。僕はいろんな楽しみ方があっていいと思ってるんですよ。レコードもカセットもCDもダウンロードもなくならないでほしいし、その人その人に合ったスタイルで音楽を聴いてほしい。だって、若いコたちにしてみればレコードってモノとしての楽しさがあるじゃないですか。ジャケットを飾っておきたいとかね。でも、今の僕はレコードを聴いてその音像とか音の配置とかにすごく驚かされる。そういう楽しみ方は昔の僕ではわからなかったですからね。例えば僕、昨日も家でビートルズの『ホワイト・アルバム』を聴いていたんです。でも、新しいオーディオで聴いたら、もう全く違う聴こえ方がしたんですね。「あ、ドラム、こんなに右にあったんだ!」とか…ショックでしたね。最初に聴いてからもう20年以上経過してるのに、「ヘルター・スケルター」を聴いてたら「どひゃー!」って(笑)。

 

――そういう発見は銀杏BOYZのアナログ・レコードを改めて聴いてもあったりしますか?

峯田 いや、まだ甘いと思います(笑)。CDの方はまだいいですけど、レコードはまだまだ…。もっとこだわりたいです。

 

――カッティングには立ち会うんですか?

峯田 最初のアナログ盤の時は立ち会いました。あと、海外カッティングの時もLAまで行って見学してきました。黒人や中南米の方が工場でタバコとか吸いながらすげえ楽しそうに作業してましたよ(笑)。

 

――海外といえば、『RECORD STORE DAY』の最初の年(2008年)にちょうどLAにいらしたそうですね。

峯田 そうなんですよ! 旅行で行ってたんですけど、アメリカ人の友達が連れてってくれたレコード店(『Amoeba Music』)に『RECORD STORE DAY』のポスターが貼ってあって。「Metallica Instore Live!」って書いてあるんですよね。しかも店はすごく混んでて、若い女の子とかがたくさんのレコードを小脇に抱えてるんです。「わあ、こんなことがいつか日本でも起こるかなあ」って思いましたね。で、今じゃ普通に日本でもレコード屋さんに女の子いるし、いっぱいレコード抱えてますからね。

 

――その時、メタリカのインストア・ライヴは観たのですか?

峯田 観られなかったんですよ。でも、レコードはたくさん買って帰ってきました。その時の思い出の1枚はザ・ゴー!チームです。ちょうどお店でかかってて、店員さんに聴いておしえてもらってその場で買いました。今はいろんな町に行くたびにレコード屋さんには足を運んでます。ロンドンにも行きましたけど、昔ほどは店はなくなってしまいましたね。

 

――レコードを買う時には何を参考やガイドにしたりしていますか?

峯田 僕はレコード屋さんに入ってから欲しいものを決めるんです。「あ、これよさそう!」って感じで。こちら(『ココナッツディスク 池袋店』)もそうですけど、店主の方やスタッフが信頼できる店は「面出し」してあるものをチェックして聴かせてもらったりします。昔行ってた『Rough Trade』では、僕は当時まだ学生だったんですけど、お店の方がいろいろとおすすめしてくれたんです。「それが好きならこれもいいよ」とかって。そういうのはすごく参考になります。あと僕の周辺は音楽に詳しい友達が多くて。それもビートルズ周辺に詳しいやつ、ノイズ、エクスペリメンタルに詳しいやつ…っていう感じでそれぞれ情報交換できる仲間がいるんですよね。この人が言うならきっといいだろうなって感じで知ることが多いですね。知り合いのミュージシャンだったら…サンボマスターの山口(隆)くんはジャズとかナイアガラ(大瀧詠一)周辺に詳しいですよ。

 

――今の峯田さんのウォント・リストのトップにあるレコードは何ですか?

峯田 レゲエですね。70年代中盤のスタジオ・ワンから出てた7インチ・シングル。アルバムは持ってるんですけどシングルで欲しくて。特にカールトン・アンド・ザ・シューズの初期のシングルが欲しいですね。僕ね、海外の通販とかオークション・サイトも利用したことがあるんですけど、届いたら破損していたってことがあって…あれ、ほんとに落ち込みますよ。そういう意味でもやっぱりお店で直接買いたいですね。昔はレンタル・レコード店も含めて町にたくさんレコード屋さんがあったと思うんですよ。そうやって限られたお小遣いでやりくりしながらお気に入りのレコードを探して買ったり聴いたりするようなのっていいじゃないですか。昔、実家の電器店でバイトしながら空いてる時間にCDをカセットにダビングしたりしてたんですけど、そうやって自分でミックステープみたいなのを作って友達にプレゼントしたりもしてましたよ。

 

――では、今だったらどういうミックステープを作りますか?

峯田 う~ん…そうだなあ…まずはCANの何かの曲が1曲目かな。で、アンビエント的な流れを作って、例えば日本の銀河鉄道(バンド)の曲や日本の和モノにつないで、そこからレゲエですかね…。今なら冬のイメージですね。で、ビートルズは必ず1曲は入れたいな。「She Loves You」とか(笑)。ビートルズは存在が常に自分のど真ん中にあるというか、指標なんですよね。自分の音楽もそうであってほしいというね。

 

――最後に、今年の『RECORD STORE DAY JAPAN』のアンバサダーとして、今の峯田さんの夢は何でしょうか?

峯田 僕の理想は、道歩いてる人が…おじいちゃんおばあちゃんも若いコもレコードを小脇に抱えているような風景ですね。今はレコード自体かなり身近なものになってきてますけど、もっと日常的になっていってほしいですね。銀杏BOYZのファーストも今年のレコード・ストア・デイで再発されることになってるんですけど、誰でも普通に定価で買うことができるようになってほしいなと思って。ファーストのオリジナルとか初期の作品って中古市場ですごい値段がついちゃってるでしょ? そういうのを頑張って探して聴いてくれるのもいいですけど、もっと気軽に聴いて欲しいですからね。

 

――ちなみに、ご自身の作品を自宅でレコードで聴くことはあるのですか?

峯田 ないです(笑)。恥ずかしいっていうのもあるし、それより毎回ファースト・アルバムを作りたいっていう思いの方が強いんです。声が出るうちは、まだ曲を作る力があるうちは、最高傑作のファーストを作りたいなと思いますね。最高傑作‥まだ全然ですからね。死ぬまでに一度はいいものを作りたいなあ。もちろん、これからも新作はアナログ・レコードでも出しますよ!

 

ココナッツディスク池袋店 店長 中川晃宏さんと

 

RECORD STORE DAY JAPAN オフィシャルサイト
https://recordstoreday.jp