Last Update 2019.12.13

Interview

古坂大魔王が語るピコ太郎の「PPAP」@ ミニターンテーブルRSD3 !!

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売れるリズム・ネタ、音ネタは実はそれ自体が名曲なんですよ

2016年8月25日、ピコ太郎の「ペンパイナッポーアッポーペン(PPAP)」(以下、「PPAP」)がYouTubeにアップされ、同年9月末にジャスティン・ビーバーが自身のツイッター・アカウントで同曲について呟くと、ピコ太郎は瞬く間に世界中の人気者となった。その後の、ピコ太郎の大活躍と「PPAP」の大ヒットについては多くの人が知るところだろう。その「PPAP」が、今年のレコードの日にあわせて3インチ・レコード化される。海外ではフー・ファイターズやビースティ・ボーイズらの楽曲が3インチ・レコード化されているが、国内のメジャー・アーティストとしてはピコ太郎が初となる。そこで、ピコ太郎をプロデュースするお笑い芸人にして、プロデューサーでもある古坂大魔王がピコ太郎と「PPAP」についておおいに語ってくれた。TR-808や電子音楽への熱い想いや音楽遍歴、コミック・ソングとしての「PPAP」や長年実践してきたリズム・ネタ/音ネタについて。とても興味深い話がたくさん聞けた。

インタヴュー/文:二木信
写真:福士順平

 

――まず、RSD3ミニターンテーブルに触れてみた感想と、「ペンパイナッポーアッポーペン(PPAP)」が3インチ・レコードになった率直な感想からお訊かせ下さい。

 

古坂 触らせてもらいましたけど、この重さ、スライドの感触、ピッチが0のところでカチッと止まる、この感じ。僕はいま46歳ですが、自分たちがレコード全盛の最後の世代ですよね。中学ぐらいでCDが出始めて、それからいまのようなインターネット中心になっていきます。なので、レコードから何を感じるかというと幼少期なんです。僕らが子供のころは、エンターテイメントの世界で音楽が上位でしたよね。情報も少なかったから一生懸命本を読んだりして、聴けない音楽は想像力で埋めたりして。RSD3ミニターンテーブルを見て触れて、音楽にはそういう時代があったなと、いまパッと思いました。だから、インターネットで無料で聴ける「PPAP」が、レコードというメディアになったことが感慨深いです。東洋化成さんも何を血迷ったのか(笑)。

 

 

――「PPAP」が発表されたとき、ローランドのTR-808のカウベルをスネアの位置に配したビートやトラックのユニークさについて、tofubeatsが「関ジャム完全燃SHOW」(テレビ朝日系)で指摘したのをはじめ、いろんな反響があったと思います。プロデューサーとしてそのような評価どう受け止めていましたか?

 

古坂 「やっと聴いてくれたな!」という感じでしたね。「PPAP」は音も大きいんですよ。僕はトラックメイカーで、さらにマスタリングもしている。マスタリングを他人に任せないのをモットーでやってきましたから、海外の音の大きい音楽と比べながら作ったりもしています。例えば、「セッティング・サン」(1996年。オアシスのノエル・ギャラガーをゲストに迎えた大ヒット曲)以前のケミカル・ブラザーズの音は本当に大きい。なぜ、そんなに音の大きさにこだわるかと言うと、僕にとっての音楽は体を揺らすためにあるからなんです。そのためにシンセの音とかグルーヴに集中して作る。もちろん、その上でどうやったらウケるかを考える。808のカウベルをガチガチにコンプで固めて、スネアの位置で鳴らせば、聴く人が聴いたら笑ってくれるなって考えたんですよ。バスドラの代わりにスティックでキックを鳴らしているようなものじゃないですか。そういうギャグのつもりで作ったんです。ちなみにカウベルの下に808のスネアを足してアタック音を出してはいますけど。だから、「PPAP」も含め内容はくだらなくていいですし、最初は一部のトラックメイカーに笑ってもらえればいいなっていう気持ちだったんです。2011年のライヴでピコ太郎が初めて「PPAP」を歌ったとき、TRFのDJ KOOさんが楽屋に来て、「808のカウベルをスネアの位置で鳴らすのはずるいわー」って笑ってくれたんですよ。さらに、tofubeatsくんがテレビで言及してくれて、素直に嬉しかったです。

 

――808を使っている音楽で好んで聴いていたものにはどんなものがありました?

 

古坂 もちろんYMOやアフリカ・バンバータは聴いていましたよ。あと、TRFの「EZ DO DANCE」のイントロでも808が鳴っていますよね。僕は昔から、生のギターやベースやドラムの音に興味がなくて、「ブン」とか「ピューン」っていう電子音に興味があったんです。昔の技術やテクノロジーで生のスネアに似せた音を作ると、どんなに頑張ってもニセモノになるんですけど、そのニセモノのスネアやカウベルの音が僕は好きだった。だから、音楽オタクじゃなくて、“音オタク”なんですよね。プロレスラーの藤波辰爾がリングに登場するときに流れる「ドラゴン・スープレックス」というテーマ曲があるんですけど、イントロの「トゥントゥントゥットゥトゥートゥ♪」のシンセ・ドラムの音が好きだったり、あとC-C-Bとかシーラ・Eが使っているシンセ・ドラムを聴いて興奮していたんです。もちろんゲーム・ミュージックも好きでしたしね。

 

 

――ということは、ロックにはハマらなかったんですか?

 

古坂 僕らが子供のころは、不良がギター、ベース、ドラムを好む時代だったじゃないですか。それがいわゆるロックですよね。でも僕は不良じゃなかったので、音楽を好きになりたいけど、不良とは思われたくなかった。不良はBOØWYとかZIGGYを、そうじゃない人はTM NETWORKやユニコーンといった不良性のない音楽を聴く時代だったんですね。ユニコーンも打ち込みを使っていたんですよ。ただ、そういう不良性のない音楽を聴いていると、不良のヤツらからバカにされるから、それが悔しくて。そんなときにデジロック(デジタル・ロック)の時代がやってくるわけです。プロディジーの登場ですよ。プロディジーの登場が僕の音楽のすべてを変えましたね。いまでもおぼえていますよ。東京に出てきて初めて、渋谷のタワレコに行ったんですね。そこで自分が大好きなダンス・ミュージックを手に入れたくて、DJ ジャジー・ジェフ&フレッシュ・プリンスとガイ、ヘヴィー・Dを買ったんです。情報がなかったから、ダンスって書いてあるコーナーのCDを手に取ったわけです。で、家に帰ってガイを聴いたらぜんぜん趣味じゃなかった(笑)。ニュー・ジャック・スウィングは好みじゃなかったんですよね。もっと激しく踊れる、頭が振れる、暴れられる、ロックの人がやっているノリをピコピコ系でやっている人はいないのか、と。そんなときに、プロディジーが現れた。『ミュージック・フォー・ザ・ジルテッド・ジェネレーション』(1994年)ですよ。ほぼ同時代に、ダスト・ブラザーズから名前を変えたケミカル・ブラザーズがいて、ちょっと遅れてファットボーイ・スリムとイーボマン、さらにアタリ・ティーンエイジ・ライオットを聴いて。それでもうそういうコンピューターを使ったロックに完璧にハマったんですね。それが僕のど真ん中なんです。

 

――そのようなデジタル・ロック、ダンス・ミュージックから受けた音楽的影響もピコ太郎をプロディースする際の重要な要素なわけですね。

 

古坂 コミック・バンドは、「音楽的にテクニックがあるか、もしくは音楽的にチャレンジしているものでないと笑ってもらえない」と何かの本で読んだことがありますが、たしかにそうだと思います。ドリフターズしかり、(ハナ肇と)クレイジーキャッツしかり。例えば、ドリフターズの長さん(いかりや長介)はチョッパー・ベースを弾いていましたけど、当時チョッパーをやっている人はあまりいなかった、と。そういうチャレンジをすることでギャグが面白くなる。

 

――いまコミック・バンドと言葉が出ましたが、ピコ太郎の「PPAP」は“コミック・ソング”という意識でプロデュースされましたか?

 

古坂 「PPAP」のおかげで、これまで世界中のいろんな方からインタヴューを受けてきましたけど、フランスの新聞から受けたインタヴューで印象に残っている質問があります。それは、「ピコ太郎は、ポップス・シンガーなのか、ジャズ・シンガーなのか、それともロック・シンガーなのか?」という質問です。そこで僕は「コミック・シンガーです」と答えた。すると、インタヴュアーが、「コミック・シンガーって何ですか?」と反応したんです。もちろん世界中に日本でコミック・ソングと言われるような音楽があって、僕もそういう音楽をずいぶん研究しました。ただ、日本と違うのは、コミック・ソングを作る人たちがちゃんとミュージシャンとして評価されていることです。だから、日本ではピコ太郎の「PPAP」はお笑いのなかの音楽になりますけど、日本やアジアの一部以外でピコ太郎はアーティストとして評価されている。だから、リスペクトが違うんですよね。ただ、僕としても、日本の一般的な見方としても、「PPAP」はコミック・ソングだと思いますよ。

 

――それと同時に「PPAP」はリズム・ネタ、音ネタでもありますよね。それは古坂さんが長年研究して実践されてきたことかと思いますが、いかがでしょう?

 

古坂 リズム・ネタはかれこれ20年ぐらいやり続けていますよね。だから、ピコ太郎をきっかけにして、多くの人がリズム・ネタについて考えてくれたのが嬉しいです。例えば、「ラッスンゴレライ」(8.6秒バズーカー)や「ラララライ」(藤崎マーケット)や「なんでだろう」(テツandトモ)、最近で言えば、どぶろっくの「大きなイチモツ」とか、リズム・ネタと言われるものはたくさんありますよね。そういう人気が出て売れるリズム・ネタ、音ネタは実はそれ自体が名曲なんですよ。それが僕の考えです。でも、なかなか理解されない。尾崎豊の「I LOVE YOU」は名曲と言われるのに、なぜリズム・ネタ、音ネタは名曲とされないのか、というモヤモヤがある。もちろん、お笑いだから名曲をそのまま名曲としてやってもしょうがない。ウケるためにボケますよね。名曲を下敷きにしてボケてるってことなんです。簡単に説明すると、それは芝居が上手いコントなんです。例えば、同じ台本のコントをバナナマンと素人がやるときの決定的な違いは、芝居の上手さなんですよ。

 

 

――お笑いの世界でリズム・ネタや音ネタをそのような音楽的視点で捉える方はやはり少数派じゃないでしょうか?

 

古坂 そうですね。僕は音楽で名曲を作ろうとしている時期があったので、こういう考え方をするんです。2003年にお笑いの活動を一時休止して、NO BOTTOM!という音楽ユニットで活動を始めました。その後、アイドルのプロデュースとかゲーム音楽の制作をやっていたんですね。そこでレコード会社から、「耳に残るフレーズをお願いします」とか「耳に残るイントロを作ってください」ってオーダーされるんですよ。簡単に言うけど、それが一番難しいんだよって(笑)。だから、パッと1度聴いておぼえられる曲を作るにはどうすればいいのかをすごく研究しました。これは『ヒットの法則』っていう本にも書かれていましたけど、話し言葉に近い発音とメロディーで曲を作ることがとても重要なんです。「I LOVE YOU」もそうですし、「げんこつ山のたぬきさん」もその法則に当てはまります。

 

――「PPAP」でも、そのような発音とメロディーを強く意識してプロデュースされた、と。

 

古坂 あと、「PPAP」は最初、客前で試行錯誤しながら作っていったネタだったんです。底ぬけAIR-LINEでやっていた「テクノ体操」というネタで使っていた音楽が「PPAP」の原曲なので、音は1997年からあったんです。その音でさらに何かできないかと考えたときに、ピコ太郎に歌ってもらうことを思いついた。その一発目が「PPAP」で、それが2011年のことです。コミック・ソングは10回聴いて面白さがわかるものではダメなんです。理由は、客前でやるから。初めて観て、聴いたお客さんを面白いと思わせなければいけない。レコードやCDで何度も再生して聴いているうちにその良さがわかる音楽もありますけど、コミック・ソングはそれでは成立しない。それが普通の音楽とコミック・ソングの違いです。パッと観て聴いてわかるものにするから、飽きられるのも早いんです。

 

――いまの話の流れでお尋ねしたいのですが、飽きられるということを考えた場合、YouTubeに「PPAP」をアップすることには、やはりためらいがあったのではないですか?

 

古坂 それはありましたね。ピコ太郎はライヴ界隈、しかも音楽系に評判が良かったんですけど、ずっとインターネットにアップするのは止めていたんです。理由はひとつ、飽きられてしまうからです。実は「PPAP」ってひとつもギャグを言っていないんですよ。最後にギャグを言うフリをして、ペンとアップルとパイナップルを並べたことを言っているだけなんです。ボケるふりをして、ボケないで終わる、そういうボケなんです。だから、ネットにアップしたらライヴでウケなくなるって考えていたんです。ところが、昔から知っている、ジャズが大好きなテレビ朝日のプロデューサーに言われた一言でアップすることにしました。その人は子供を連れてライヴに来てくれたんですけど、子供が「PPAP」にハマったから、「YouTubeに上げてよ!」って言うんですね。それにたいして僕は「アップすると消費されちゃうからイヤなんですよね」と答えて。すると、その人が「あれは良い曲なんだよ。最高のメロディーだから何回聴いても良いよ」って言うわけです。それまで「PPAP」は僕のなかでリズム・ネタ、音ネタだったんですけど、その言葉で初めて音楽として捉えた。それでYouTubeにアップすることを決心したんです。ただ、絶対に流行る自信はあったんですけど、まさかこれほど世界に広がるとは思っていませんでしたし、こうやって3インチ・レコードになるなんて夢にも思ってもみませんでした。本当に光栄です。

 

 

 

【リリース情報】

アーティスト:ピコ太郎
タイトル:PPAP
フォーマット:3inch
品番:TYO3S1003
発売元:TOYOKASEI
販売価格:1,100円(税抜)
発売日:2019年11月3日(日)<レコードの日>

 

レコードの日 オフィシャルサイト
https://レコードの日.jp

 

※記事初出時、本文に一部誤りがありました。訂正してお詫びいたします。