Last Update 2023.12.27

Interview

Record Store Day 2020《RSD Drops》開催直前 ZOOM座談会

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新型コロナウイルスの影響で営業自粛を強いられるような状況が長く続いていた(あるいは今も続いている)だろう世界中のレコード・ショップ。受難の時代と言ってしまえばそれまでだが、しかしながら、ストアごとにそれぞれアイデアを出しながら、少しでも多くのお客さんとレコードを通じて繋がろうと日々努力を重ねている。今年のRECORD STORE DAY 2020も《RSD Drops》として8月、9月、10月に開催されることになり、これまでのように世界中のレコード店の店頭で盛り上がるようなことはもしかすると難しいかもしれない。

だが、逆にレコードにかける愛情と熱意を強く持った店長やオーナーのいるストアは、こういう時期だからこそ強いのではないか、とも思う。店長がしっかりキュレートして品揃えをしている店、どんなお客も暖かく迎えてくれる店、遊びに行けばそこで何かを見つけられる遊園地のような店………そんな個性がハッキリとあるストアに対しては、この逆境のおり、続けて欲しい、頑張ってほしい、行けるようになったら絶対に買いにいく……そんな応援メッセージも多数届いているようだ。むしろ、ストアと客とを繋ぐレコードの絆はコロナ禍において強くなったと言えるかもしれない。

そこで、東京の『ココナッツディスク池袋店』中川晃宏さん、名古屋の『RECORDSHOP ZOO』Kazooさん、広島の『STEREO RECORDS』神鳥孝昭さんという、それぞれの地域で愛されているショップの名物店長お三方とZOOMで繋がせてもらい、コロナ禍でのそれぞれのお店について、そして今年の《RSD Drops》について話を伺った。いよいよ明日から始まる《RSD Drops》。今年はあなただけのレコード応援の仕方をぜひ考えてみてほしいと思う。

 

参加者:
広島 <STEREO RECORDS> 神鳥孝昭さん
名古屋 <RECORDSHOP ZOO> Kazooさん
東京 <ココナッツディスク池袋店> 中川晃宏さん

司会/進行:岡村詩野

 

――みなさんは今日が「初対面」になるんですか?

全員「そうですね」

中川「僕はどちらのお店も通販を利用させてもらったことがあります(笑)。『ZOO』さんには直接遊びに行ったこともあります」

Kazoo「ほんとですか、ありがとうございます!」

中川「単純にレコード屋さんに行くのが好きなんですよね~」

神鳥「わかります。楽しいですよね。二つとして同じタイプのお店ってないですし。僕も好きですね。全国のいろんなレコード屋さんに行くのは」

Kazoo「僕も自分で店を始める前は全国のいろんな店に行ってたんです。今は忙しくてなかなか……。今も行きたい気持ちはありますけどね」

 

――みなさん、コロナ以降のそれぞれのお店の状況や対応はどのような感じだったのでしょうか?

神鳥「ウチは自粛要請があった時、実は店を閉めて、ウェブショップだけでやっていこうと思っていたんです。で、店を閉める旨を説明したテキストを準備して、明日の6時にはウェブで発表するってところまで決めていたんですね。ところが、その当日の昼間ぐらいに広島県が発表している自粛要請リストを見たら、古本やDVD映像ソフトを扱うお店はその「対象外」になっていたんです。で、広島県庁に問い合わせてみたら、「レコード屋も対象外ですよ」って言われて。要はステイホームで楽しめるものを売っている店であれば大丈夫ということだったんですね。どっちみち、通販の作業のために店には行かなきゃいけないなとは思っていたので、それならってことでそのまま店も開けていました。ただ、やっぱりお客さんは来なかったですね。1日数人来るか来ないかって感じ。スタッフもシフト制にして、店内でワチャワチャならないように少人数で対応していましたね。あとは、あまり呼び込む形にするのもよくないので、SNSとかで「入荷しました」みたいに発信することも控えて。だから、店頭で売れたのは調子のいい時の40%くらいでした。その代わりにウェブショップの売り上げが130140%くらい。特に45月くらいはウェブ越しにみんな家にいるのが伝わってくるくらい注文が一気に来ちゃって。ただトータルではやっぱり落ちてはいました」

 

――つまり『STEREO RECORDS』さんはお店を閉めていた時期がなかったということですね。

神鳥「なかったですね。割とずっと通常営業をしているって感じでした。ただ、他の同系のお店はやってなかったりしましたね。『TOWER RECORD』さんとかはパルコに入っているのでどうしても開けられなかったと思います」

Kazoo「ウチは実質2週間ほどお店を閉めていたんです。で、それまで通販をやっていなかったんですけど、その間に通販ショップをオープンさせて。お店を支援してもらうためにロゴの入ったTシャツも初めて作って販売したりしました。ウチのツイッターアカウントで告知して、公式LINEのアカウントで注文を受けたんですけど、これが結構反響がありまして。送料込み1枚3500円で販売し、400枚売れました。さらに、そこに通販1回無料券というのもつけまして。次につながる展開もやってみたんですけど、これがまた反響が大きくて、5月の公式LINEの受け答えが6000通を超えました。あの頃は一日中LINEしていました(笑)。売り上げ自体は下がってるんですけど、やり方を考えてなんとかこなせたかなって感じですね」

 

RECORDSHOP ZOO Kazooさん

 

――通販を利用されてるお客さんは全国各地から?

Kazoo「そうですね。北海道から沖縄までです。で、買ってくれた方みなさん「好きなお店なので頑張って続けてください」とか「コロナが明けたらお店に行きます」とかってメッセージをくださって。そういうこともあって、最終的にちゃんとサイトも作ろうってことになったんです。お客さんの要望と励ましに胸を打たれてサイトを作ったって感じです。今までは、(地元)名古屋を盛り上げたいって思いがあって。通販をやってこなかったのも、地元の活性化という意味でも、地元のお客さんに買ってほしいと思っていたからなんですね。だから通販をすることに少し躊躇があったんですけど、通販するもの、お店に出すものとをちゃんと分けてやればいいかなって思って。通販でTシャツ買ってくれたのに、レコードの通販はしませんっていうのはなんだかちょっとエゴに思えちゃったんですよね。お店の売り上げ云々よりも、やっぱり人(の暖かさが大切)なんだなあって思いました。緊急事態宣言解除後は……まあ平常時の4割くらいですかね」

中川「ウチは都内に3店舗あるんですけど、お休みしていたのは4月半ばから5月下旬までの1ヶ月半ほどです。その間、送料無料キャンペーンをやろうってことで、通販に力を入れました。店舗全体で相談してウェブストアでもかなりいい商品を出したりしようと。本当は店頭販売用に残したかったんですけど(笑)、でも、おかげさまで全国から注文してくださって、その売り上げで緊急事態宣言中はなんとかやっていけたって感じでした。ウチはものによって新譜も取り扱っているんですけど、その間は例外的に新譜も要望があれば通販を受け付けていました。買いにきたくても来られない方が大勢いましたから。もちろんお店に来て買ってもらいたいですけど、先のことよりとりあえず今を続けていくことを考えていかなきゃって思っていたので、僕も通販を利用してくださる方からの励ましのメッセージが本当に救いになりましたね。それで結構頑張れました。やっぱりお客さんの顔を直接見られるのが一番幸せなんですけど、通販でも繋がってるんだなってことがわかったりすると嬉しかったですしね。お店を再開してからはまた戻ってきたかなって感じだったんですけど、7月入ってからはまた都内に感染者が増えてきたので、気持ち減っちゃってるかな……って感じですね」

 

ココナッツディスク池袋店 中川晃宏さん

 

――全国的に緊急事態宣言が解除された後、対策面、営業面で何か変化があったりしましたか?

神鳥「まず、ウチは試聴用のターンテーブルを使う人にはヘッドフォンをそれぞれ持ってきてもらうようにしています。あとはスマホで試聴してもらったりとかもしていて、なるべく接触しないような対策をとっています。あと、給付金10万円をもらった人も多かったと思うので、6月くらいは普段より高額商品が売れたりしていましたね(笑)」

中川「ウチはあんまり変わらないですけど、結局売れるものが売れるって感じです。改めてそういうところに気づいたりしましたね」

Kazoo「買取が増えた印象もあります。一回の買取で数千枚っていうのも2回ほどありました。この機会に家を片付けられたのかな……って。そういう傾向も興味深いですよね。ウチとしてはとても助かりましたけど」

 

――さて、今年のRECORD STORE DAYは3ヶ月連続最終土曜日に「DROP」するという形で開催することになりました。まず、これまでそれぞれお店でどのようにRECORD STORE DAYに関わってこられていたのかおしえてください。

神鳥「ウチは毎年結構ガッツリ関わらせてもらっています。2014年かな、当時のスタッフ・ミーティングで、やるならガツンとやろうぜってことになって。そこから毎年、取り扱いのある国内盤の全タイトルを扱うようにしています。実際、ウチは全タイトルあるから遊びにきて!って告知をしたらやっぱりすごく盛り上がるんです。ただ、ここ何年かで良くも悪くもSTORE DAY自体が定着したので、最初の頃のイベント感は薄れてるような気がしますね。前は何がリリースされようがとにかく店に遊びに来てくれてた人たちも、タイトルによって来たり来なかったりして……。でも、ウチはそれでも全タイトルを扱っていこうと思っています。こういうお祭りを応援したいというのももちろんありますし、欲しい作品をお客さんに選んでもらうようにしたいっていうのが一番大きいかな。正直、タイトルによってはそれほど動きそうにないものもあるんですけど、店に来てくれる人の中にはそれを目がけてくる人もいるかもしれない。そういう人にとってウチにそのレコードがあったらやっぱりすごく嬉しく思ってくれると思うんですよね」

 

STEREO RECORDS 神鳥孝昭さん

 

――すべてのお客さんに優しい店ですね。

神鳥「レコード好きが楽しめる1日であればいいなって思っているので。あと、中国、四国地方でここまでガッツリとSTORE DAYに関わってる店も他にないから、その界隈から集まってきてくれる感じもしています。これまでで一番多い時で、トータルで300400人くらい集まってくれた年もありました」

Kazoo「自分がお祭り好きなので、やるならやろう!っていう気持ちは僕も同じです。あと、ウチは毎年、発売日の深夜0時になった瞬間からやっているんです。もちろん電車がなかったりするので歩いて来てくれる人もいるんですけど、それでも夜中に50人くらい並んでくれたりしますね。一番盛り上がった時で、深夜0時から朝6時までやったりしていました(笑)」

 

――RECORD STORE DAYで世界で最も早くにオープンするお店として、もう世界規模でも例外的なショップらしいですね。

Kazoo「そうなんですよね。ホテルとって他府県から遊びに来てくれた人もいました。朝方はもうみんなでお酒飲みながら……って感じで楽しいですよ。で、6時にいったん店を閉めて、また11時にオープンするんですけど、その時もまたたくさん並んでくれるんですよね。で、夜9時まで営業して、そのあとは近くのカフェで夜10時くらいから出張販売するんです。その時はDJを入れて、その年のRECORD STORE DAYに販売されたレコードをかけたりもして……もう2日がかり、ほぼ24時間寝ずですよ。一年で一番体力を使いますね(笑)。でも、そこにレコード屋としての使命がある感じもしてて。だからずっとこれはやり続けていきたいですね。ただ、今年は密になっても良くないので、深夜0時スタートはどうしようかな……やめとこうかな……って思っています」

中川「ウチは逆に割と毎年厳選して、ウチらしい商品を取り扱っているんです。ウチで買ってほしい!と思えるものがリリースされるようであれば仕入れて取り扱うという感じで。今年でいうとやっぱり8月の銀杏BOYZ。常連さんでもファンが多いので、池袋店ではしっかり扱おうと思っています。今年の日本でのRECORD STORE DAYのポスターとキャンペーン動画をウチの店で撮影してもらったので(https://r-p-m.jp/interview/kazunobumineta)、そういう意味でもしっかり応援したいですね。あと、PIZZICATO ONEもウチでは扱います。『ココナッツ』は店舗ごとにそのあたりも自由なのでちょっとずつ取り扱い商品が違うと思うので、池袋、吉祥寺、江古田……それぞれ好みのお店に行ってもらえれば嬉しいですね」

 

――『ココナッツディスク』といえばスカート、シャムキャッツ、柴田聡子……というようなイメージもあります。

中川「そうですね。そういう意味でも2014年のRECORD STORE DAYは熱かったですね。スカートの『ひみつ』、柴田聡子さんの『いきすぎた友達』がレコードで出た年です。僕自身がファンだっていうのもあるんですけど、デビューしてまもなくからずっとお店で推してたアーティストのアナログ盤がバーッと出た年でした。あの時は盛り上がりましたね」

 

――今年は3ヶ月に渡って開催されますが、何か盛り上げていくための企画などを考えていらっしゃいますか?

神鳥STORE DAYの当日だけじゃなくて、いつでもレコード屋って面白いって思ってもらいたい。そういう意味では、お店に来てもらうためのきっかけとしてSTORE DAYがあるとしても、毎日レコード屋の店内を盛り上げたいとは常々思っています。あと、今年はできるかわからないですけど、広島で活動しているDJの方に来てもらって店内でDJをしてもらうようなことも、その当日だけじゃなくやっていければなっていつも思っています。特にここ23年はそれを強く感じながらやっていますね。ただ、今年はどうしてもね……密になってワイワイしたいところなんですけど、何か違うやり方になるかもしれないです」

Kazoo「ウチも取り扱い商品が8月のリリースに集中しちゃってるんですよ。銀杏BOYZと、あと個人的にも大好きな東京のバンドなんですけど、Youmentbayはしっかり推していきたいと思っています。今回の曲もすごくいいですし、彼らが名古屋でライヴをやる時とかはウチ仕切りでしているんで。さっきも話したように0時オープンが今年は難しいと思うので、せめて期間中は対象商品を店内でかけてみるようなことはしていきたいですね。ただ、まあ、お客さんにはもちろん来て欲しいですけど、密になったら大変なので……それはそれで……難しいですよね」

 

――今年は例外的に対象商品の通販も時間差で受け付けることになっています。そうした新しい試みをRECORD STORE DAYもこれから柔軟に対応していくのかもしれませんが、実際にまだコロナの終息のメドが立たない中で、今後はどのようにレコードを通じてお客さんとつながっていきたいと考えていますか。

Kazoo「通販は確かに重要ですよね。ただ、やっぱりRECORD STORE DAYの趣旨としてはお店に来ていただきそこで買ってもらう、というものなので、少なくとも今年のRECORD STORE DAY、最初の土日は店頭に来てくださるお客さんを優先したいですね」

中川「ウチもそうです。店頭で先に販売して、まだ在庫があれば通販で……。店頭で売り切れてしまったら通販はないです。店頭で売れてほしいですね」

神鳥「今ってコロナで家にいる時間がみなさん増えてるわけじゃないですか。であれば、こういう時期だからこそ家でレコード聴いて楽しんでもらう人がもっと増えてほしいって思うんですよ。店舗を構えている以上お店に来て欲しい気持ちはヤマヤマなんですけど、うまく通販を利用していただきたいとも思ってて。今、ウチはコロナ禍になってから県内の方には5500円(税込)お買い上げで送料無料にしているんです。どうにかしていろんな人にレコードを届けてレコード好きの方々に音楽を楽しんでもらいたいですね」

Kazoo「SNSをもっと活用していければと考えています。例えばウチは営業終了後にインスタライブでお店の入荷情報を伝えたりしているんです。そうすれば少しはお店に来ている感も感じてもらえるし、こちらもチャットでお客さんと直接やりとりもできますし。「あと在庫何枚あります」とか「明日出します」とか「じゃあ発注しておきます」とか………そういうことをインスタを通じて伝えていけるのは面白いしやっていてお客さんと繋がる感じがしますね」

中川「インスタライブ、いいですね。ウチもインスタのアカウント自体はやってるんですけど、インスタライブだと直接お客さんとやりとりできるんですよね……ちょっとやってみたいなと思いました(笑)」

Kazoo「逆境だからこそ……じゃないですけど、今が一番やりがいがある。この仕事に対して今が最も情熱があるかもしれないです。情熱MAX(笑)」

神鳥「僕もコロナになってから圧倒的にお店にいて仕事している時間が増えてるし、お店ができてから15年くらいなんですけど、実際に商品が一番多いかもしれない。一番商品を多く作っている感じがしますよ。仕事していて楽しいですし」

中川「確かに厳しいなって思えた時期もあったんですけど、なんとかやってけるんじゃないかな~って、なんとなくというか、特に根拠もないんですけど(笑)、そう思うようになってきました。あとはお客さんが戻ってきてくれたらいいですね!」

 

STEREO RECORDS

〒730-0037 広島県広島市中区中町2-2 末広ビル 2F
https://recordstoreday.jp/storeinfo/stereo-records/

 

RECORDSHOP ZOO

〒460-0011 名古屋市中区大須2丁目30‐19ミズノ第2ビル2F
https://recordstoreday.jp/storeinfo/recordshop-zoo/

 

ココナッツディスク池袋店

〒171-0021 東京都豊島区西池袋3-22-7
https://recordstoreday.jp/storeinfo/ココナッツディスク池袋店/

 

RECORD STORE DAY JAPAN オフィシャルサイト
https://recordstoreday.jp