Last Update 2019.6.18

Interview

THE BIRTHDAYチバユウスケ、『VIVIAN KILLERS』とアナログ・レコードを語る

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取材・文:小野島 大
写真:福士順平

「アナログだろうとCDだろうと携帯だろうと、ぜってえかっこよく聞こえるように作ってる」

 

The Birthdayの新作『VIVIAN KILLERS』が発表された。RECORD STORE DAY JAPAN対象商品として、4月13日にアナログ盤も発売される。通算10作目のアルバム、確固としたThe Birthday節はもちろん健在だ。だがそれ以上に沸き立つような新鮮な衝動に溢れている。いつも通り、いやいつも以上に濃厚なロックンロールが詰まった充実作だ。

新作に込められた彼らの思いとは何か。デビュー以来、CDと共に必ずアナログ盤もリリースしてきたこだわりとは。例によって二日酔い気味だというフロントマンのチバユウスケは、終始上機嫌だった。


チバ「今回は、前作、前々作の、もっと進化したやつを作ろうと思ったんだわ、最初はね。けど、みんな(バンドのほかのメンバー)がやりたいことが、そうじゃなかったのよ。ちょっと違ったみたいなんだよね。俺は前作の”24時”って曲が好きで、ああいうのが多くなるんじゃないかみたいな勝手なイメージがあって、一生懸命やってたんだけど、全然違ったんだわ(笑)。何でこんなに、反応ねえんだろうなって思ってたのよ、曲(をバンドに)持ってってさ」

そんなことはない、とほかのメンバーは言っているらしいが、そうして、自分が思っていなかったような反応があるのも、バンドの面白さである。

チバ「そうだね。それは絶対なんだよ。それが一番面白いんだよね。あいつらを納得させるような曲を作ってやろうって気持ちもあるし、こんなの持ってたら、あいつらどうやって弾くかなっていうふうに考えたりね。どうしてもメンバーのことを想定して曲を作っちゃうから。作ってる段階ではそんなに意識しないけど、どこかであるんだと思う。でも俺としては、こんなのやりたいなっつって、持ってってるだけ」

それでもメンバーの反応が芳しくなくボツになった曲は過去に1万曲ぐらいある、とチバは笑う。それでも曲を作り続け、バンドに持ち込む。結局アルバムのために用意した曲は30曲ほど。その中でメンバーの食いつきが良く、フィニッシュまで持っていけた曲が12曲。それが『VIVIAN KILLERS』になった。その12曲に共通するものとはなんだろうか。

チバ「そんな感じでもないんだよ。俺たち、アルバム自体の統一性みたいなのはあんま考えないんだわ。ある程度の統一性は出るよ、同じような時期に録ってるからさ。でもそのとき完成した曲を、レコーディングするっていうだけだからさ。曲作ってた時期のオレも、ふだんと変わらないし。ただ、曲順を考えるときにさ、並べて全部の曲を聴くじゃない? そのときに、何て言うのかな…若々しいというかさ、(目の上のあたりを指して)この辺にいる気はしたのよ。音が。うまく言えないんだけど。パリッとしてるというかさ、沸点が高いというか」

確かに本作はいつにも増して初期衝動に溢れたパンキッシュな曲が多く、全体に張り詰めたテンションの高さと、ハードボイルドな雰囲気が漂う。チバは最近、韓国のサスペンス映画をよく見ているという。

チバ「エグいんだよ。チョウ・ユンファとか、ジョニー・トーとか、香港ノワールの監督が出てきたじゃない? 韓国サスペンスはもっとエグくて残酷。すごいな〜と思って。映画の雰囲気から、歌詞の断片が出てきたり、そういうことはあるかもね。でもなんでも影響すると思うよ。そういうの当たり前でさ、映画にしろ他の人の音楽にしろ、こういう(インタビューを受けている)状況だったり、歩いてるときだったり、それこそバイク乗っててもクルマ乗ってても、全部影響するよそれは」

今作はアルバム・タイトルの”VIVIAN”のほか、歌詞にも人名が多く出てくる。”DOROTHY””マギーリー””ディアブロ”など。それがアルバム全体のハードかつロマンティックなイメージを形作っている。

チバ「アルバムのタイトルはすごい早くから言ってたね。VIVIANって言葉はアルバム・タイトルに使いたいと思ってた。意味はほかのインタビューでもさんざん訊かれたけど、知らん!(笑) なんかわかんないけど、そういうふうになっちゃったんだよね。そこはあまり意味はないよ。語感とか語呂」

架空の人名だけでなく ”アリスクーパー””ジョン・レノン””エゴンシーレ”といった実在の人物の名前も出てくる。

チバ「仮歌みたいなのをやるじゃない。曲を作ってて、みんなで演奏してて、そのときに”ジョン・レノン”って言葉がパッと浮かんでくる。そうなると、もうあの歌詞は”ジョン・レノンを”になる。そのときからずっと歌ってたわけ。他の歌詞ができてなくても、その部分だけ。曲の仮タイトルが「ジョン・レノン」だったからね(実際の曲名は「FLOWER」)。そこからほかの部分の歌詞もできていく」

“ジョン・レノン”は誰も知ってる名前であり、そこには強いイメージが付着している。歌詞に使われれば、そこに何らかの意味を見出したくなってしまうのは、聞き手としては仕方のないことではある。

チバ「そこも考えたよ。これでいいのかな?っていうふうには。でもいいや!と思って。なんかね、書いてあったんだよね。”いいからお前ジョン・レノン呼んでこいコラァァ!”みたいな感じのことが書いてあって、(自分が歌詞のストック用に書きためた)ノートに(笑)。これいいなと思って」

もちろん楽曲はそれぞれに伝えたいメッセージ、表現したいイメージのようなものはある。それは歌詞を作っていく過程で見えてくる場合もあるし、その逆もある。

チバ「最初っから<これ!>っていうところに行く曲もあるし、あとからどんどんイメージが膨らんでいって、面白い、面白い、面白い、面白い、っつって書くのもあるし」

日本の人名を使わないのはなにか意図があるのだろうか。

チバ「過去には使ったこともあるけどね。でも避けてるところはあるだろうね、俺は。限定されちゃうじゃん、日本だと。そういうのが限定されるのがちょっと嫌なんだよな。自分の中では確固たるイメージがあったとしても、それを聞き手に押し付けるようなことはしたくない、という。

アルバムの全体像が見えたのは、昨年の冬ぐらいにクロージング・ナンバーの「OH BABY!」ができたとき。先行シングルとしてリリースされた曲だ。”闇は晴れた/あの場所まで/ゆけるよ/そう思うよ”と歌われる、ポジティヴな解放感に溢れるロックンロールだ。このアルバムのカラーを象徴するような楽曲である。

チバ「オレは昔から、シングルなんて出す必要ない、アルバムだけで十分ってずーっと言ってるんだよ。でもこの曲だけはね。はやく出したいと思った。新鮮なうちに、と思ってね」

本作のアナログ盤のマスタリングは小鐵徹氏。日本屈指のマスタリング・エンジニアとして、The Birthdayを始め数多くのアーティストを手がけてきた名匠だ。

チバ「今回はカッティングまで立ち会ってきた。面白かったよ。最近は、CDのマスタリング(済の音源)をまんま渡して、これでやってくださいみたいにやってたんだけど、今回はハナからコテッチャンとやりたいなと思って。だからCDとは違う音になってる。うまいこと言えないけど、CDはこの辺なんだわ。ここに(両手で上下に一定の範囲を作って)ちゃんと全部の音がつまってる。アナログだと、CDに比べてどっかしら足りない部分もあるけど、でも上も下も伸びてて気持ちがいい」

そうは言ってもアナログで聴いてもCDでも圧縮音源でもストリーミングでも、妥協なく、いい音に仕上がっている自信はある。

チバ「それはもう全然、手段は選ばない。アナログだろうとCDだろうと携帯だろうと、ぜってえかっこよく聞こえるように作ってる。どんだけ圧縮されても、良い曲は良い曲だよ。もちろん作るときはこだわるけど。この音をこうしたい、こうしたいっていうふうには。そんなの当たり前の話であって、それで人に聞いてもらったときに、どんな状況だろうと、いいね!っていうふうに、いいな!って思えるようなことにしないとダメでしょ。ダメっていうか、そんなの当たり前の話で」

いつも言葉少なに最低限の答えしか返してこない(でも機嫌が悪いわけではない)チバにしては、珍しく饒舌に語っている。その表情は満足いく作品を作れたという達成感に溢れていた。

チバ「今回のアナログ盤はね、ちょっと頑張ったね。ま、俺というかコテッチャンのこだわりだけどね(笑)」

いつも自分の作品が完成すると、行きつけの飲み屋でかけてもらい、それを肴に飲むという。きっとチバは今夜もいい酒を飲んでいるに違いない。

 


<思い出のアナログ盤について>

クラッシュ『動乱』

「これは最初に買ったアナログなのよ。クラッシュのね。横浜の関内の中古屋で、これが先輩の言ってたクラッシュだと思って、そんで買った。発売されてからちょっとたってたと思う。最初は、こんな感じか、と思った(笑)。それまでジョニー・サンダースばっかり聞いてたからね。ストレイ・キャッツとか。そんで、あ、なるほどなと思った。(セックス・)ピストルズ聞いたときよりかは衝撃はあったけどね。

でもいつの間にか愛聴盤になった。その後クラッシュの別のアルバムも聴いて、もっといいと思うものはあるけど、これは最初に聴いたからすごく愛着がある。めちゃめちゃかっこいいよね」

 

 

ビートルズ『レット・イット・ビー』

「昔うちの実家にさ、かっこつけてんのか何かわかんないけど、ビートルズのポスターとかがいっぱい貼ってあったの。それでこのレコードもあってさ。別に両親はビートルズ好きでもなんでもなくて、これだけあったの。だからこれ、日本盤なのよ。帯はないけど。

親父がそういう仕事してたから、プロモーション用にもらったやつかもね。

で、昔でっかいステレオあったじゃん、木製の、SANSUIの。それで、おかんとかは「まいごのまいごの子猫ちゃん♪」みたいなレコードをかけてたんだけど、俺は”違う!”っつって、”これかけろ!”ってずーっと言ってたんだって。あとから親に言われたの、親から。”あんたこればっかり聞いてたよ”って。聞かせろ聞かせろって、ずっと言ってたっつって。ガキだから、どこに惹かれたとかわかんないけど。だから家を出るときに、実家から持ってきたの。これと何枚か。ベンチャーズとかとね。

でも今となってはあまり聴いてない(笑)。ビートルズだったら『アビー・ロード』だっけ? ポール・マッカートニーがB面全部作ったやつ。あれがやっぱり、今は一番良いなあ。すっごいよね、あれ。すごくない!?あそこまでやるの。ジョン・レノンだったら、『ロックンロール』が好き。あれはホントに好きだった。カヴァーばっかりだったけど。あのリバーブとかディレイとかの感じは」

 


<リリース情報>


アーティスト:The Birthday
タイトル:VIVIAN KILLERS
レーベル:ユニバーサルシグマ
発売元:ユニバーサルミュージック合同会社
フォーマット:LP重量盤2枚組
販売価格:4444円(税抜)
品番:PROS-7027/8

商品詳細はこちら→https://recordstoreday.jp/item/006_pros-7027-8/