Last Update 2023.12.27

Interview

XOXO EXTREME インタビュー「アナログ盤はCDとはちょっと違う音楽体験ができると思います」

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時代はプログレである、と筆者はこの数年来感じている。

キング・クリムゾンやイエスが勢いを盛り返している、といった話ではない。同時代の様々なジャンルの音楽から“プログレ”を感じるのだ。

それを詳しく論じるスペースはないが、ほんの一例を挙げるなら、ジェイムス・ブレイクは、コロシアムやモーグル・スラッシュといったプログレ・バンドで活躍したジェイムス・リザーランドの息子であり、ブレイク自身も父の曲をカバーしている。タイラー・ザ・クリエイターは、カンやクラスター、ソフト・マシーンなどをサンプリングしており、何より、傑作『フラワー・ボーイ』などでの空間的に構築された音像には、プログレの美意識が宿っていると言っても過言ではない。ブラック・ミディをはじめとする南ロンドンのバンドにもキング・クリムゾンやクラウトロックの影響がダイレクトに見られる。他にもオーウェン・パレットやボン・イヴェール、ソランジュなど挙げていけばきりがない。日本でも長谷川白紙や君島大空、ayU tokiO、uamiなどなど…。

もちろん彼らは自身が「プログレをやっている」などとは思ってもいないだろうが、その楽曲やサウンドには随所にプログレのエッセンスが感じられる。ひと昔前の本能のみを刺激するような画一的なビート音楽への反動であろうか、音像的にも音色的にもより豊潤なものを構築しようと試みる勢力が各ジャンルに存在し、そうした面々が創造する音楽が、少なくとも筆者の“プログレ脳”にグサリと刺さるのだ。いい時代だ。

そして、日本のアイドル界にも実に頼もしい“プログレ”がいる。XOXO EXTREME(キス・アンド・ハグ・エクストリーム 通称:キスエク)だ。2016年のデビュー以来幾度かのメンバー・チェンジを経て、昨年8月には現役東大生の真城奈央子が、11月の3rdワンマンライブでは現役女子高生、星野瞳々が相次いで加入し現在の5人体制を確立。そして今年5月には2ndアルバム『Le carnaval des animaux -動物学的大幻想曲-』をリリース。マニアも唸らせるプログレ・ネタを随所に散りばめつつも、エッジーなロック曲、ミュージカル風の組曲、アイドルならではの沸き曲、抒情性に富む昭和歌謡までサウンドの振り幅をさらに拡大し、幅広い層へと訴えかけようとする意欲作である。

そしてこのたび、そんな傑作2ndアルバムが今年のレコードストアデイにアナログ盤でリリースされることとなった。キスエクの5人にお話を伺った。

取材/文:石川真男

 

より攻めた感じのものになったんじゃないかと思います(小嶋りん)

 

ーーまだ研修生なんですね。

星野瞳々:はい。研修生です。

 

ーー昨年11月のワンマンライヴでサプライズ・デビューされましたが、その時から堂々とされていて、もう正規メンバーみたいなイメージだったんですが…。

星野:いや、そんなことない…。

一同:(笑)。

 

ーーずばり、“プログレ”はいかがですか???

星野:えぇ…プログレ…。今までそういう音楽ジャンルを聴いたことがなかったですし、今でもまだ“プログレ”といえばキスエクぐらいしか分からないので、これからじっくり学べたらいいと思います。

 

ーーどうですか?楽しいですか? ここで「楽しくない」とは言えないとは思いますが(笑)。

星野:楽しいです。はい…。

 

ーー思い描いたようなアイドル活動ができてますか?

星野:う~ん…。小さい頃に抱いていたアイドルのイメージとは違ったかもしれないですけど、なんか個性的でとても素敵だと思います、フフフ。

 

ーーファンの方から“プログレ・ハラスメント”など受けてないですか?

星野:受けてる……かなぁ…?

一同:(笑)。

大嶋尚之プロデューサー:まだ僕以外からは受けてないと思います。

 

ーー今日は僕から受けるかもしれませんが(笑)。では、メンバーの皆さんから、瞳々さんはいかがですか? この際ですから、叱咤激励でもダメ出しでもいいと思います(笑)。

一色萌:そうですね。お披露目の仕方が今までにないサプライズ登場だったので、たぶん一番プレッシャーがかかってたと思うんですが、未経験なのにすごくハートが強くて…。デビューして今で半年ぐらいですが、瞳々ちゃんがみんなの前で緊張しちゃって大失敗しちゃったとか、そういうのをあまり見たことないですね。私はすぐに緊張して失敗してしまうタイプなので、ホントに頼りがいがあるというか。これからもっともっと大物になりそうな予感がします。

 

ーー確かに、お披露目ライブを見ても度胸ありそうでしたもんね。

浅水るり:瞳々ちゃんは、すごく愛想がよくて、初めて会った瞬間からニコニコしていて、なんか“未知の生き物”みたいな(笑)。年歳も離れているし「なんだこのコ」って感じで最初はなかなか掴めなかったんですけど、一緒に活動していく中で、すごく真面目だし、素直でいいコだなって。瞳々ちゃんのいいところがたくさん見えてきてるなって思います。

真城奈央子:瞳々ちゃんは、私が入ってから割とすぐ加入したので、「まだ私、新メンバー」みたいな顔をしている時に後輩がすぐできてしまったって感じだったんです。私、加入して3ヶ月間で結構な曲を詰め込んできたんですけど、「ここから5人になるのか」「一度ゼロに戻さなきゃいけないのか」と途方に暮れてた部分もあったんですが…(笑)。実際に瞳々ちゃんが入ってきて、一緒に活動してみて、瞳々ちゃんすごくいいコで。そもそも“キスエクの曲”を弱音も吐かずに頑張ってやってくれるところが素晴らしいですよね。陰ですごく努力してると思います。

 

ーー続きまして、小嶋りんお嬢様。

小嶋りん:ごきげんよう(笑)。

 

ーー(笑)。いかがですか?

小嶋:瞳々ちゃんは高校生で、会う前は「イマドキのコはちょっと怖いな」って思ってたんですが(笑)、本当にみんな言うとおりいいコで素直だし、瞳々ちゃんが入ってきて率直に嬉しいなって思います。キスエクは、めちゃめちゃ考えるコが多いんですよ。どちらかと言えば感覚派のコが少なくて。そういう意味では、瞳々ちゃん、フワフワしてて、いい意味で感覚的なところがあって。それってこういう活動をしていく上ですごく大事な素養だと思います。

 

ーーキスエクにとって“新しい血”になっていますね。瞳々さん、いかがですか?大絶賛ですよ。

星野:えっ? なんか言わせてしまっているというか…。

一色:そんなことないよ!

一同:(笑)

 

ーーでは早速、2枚目のアルバム『Le carnaval des animaux -動物学的大幻想曲-』についてお伺いします。リリースして2ヶ月ぐらい経ちましたかね。今率直にどういうお気持ちですか?

一色:1枚目は(楠)芽瑠さんが卒業する直前にリリースしているので、それまでの4人体制でやってきたキスエクの集大成と捉えてたんですよ。で、実際に芽瑠さんが卒業して、アルバムは出したものの3人体制ではあまりしっくりこない曲もあって、しばらくライヴでやらずにお蔵入りになってしまった曲とか結構あったんですよね。アルバム自体の反響はとても良かったんですけど。で、今回の2作目はライヴでがんがんやっている曲が入ったなと思っていて。コンセプト・アルバムなのは前作同様なんですけど、その中でもキスエクの象徴のような長い組曲が入っていたり、プログレ色の強い曲が入ってたり、かなりバラエティに富んだアルバムになったと思いますね。

小嶋:前回のアルバムは、コンセプトが「アイドルの一生」ということだったんですが、今回はまた違ったタイプのプログレ色があって、より攻めた感じのものになったんじゃないかと思います。ジャンル豊かな感じになっていて、新しい側面の出たアルバムだと思いますね。

浅水:前回のアルバムでは、キスエクの初期の曲を録音したりとかで、私も自分が入る前からあった曲を歌ったりしたんですが、今回のアルバムはほぼアルバムのために作られたような新しい曲がほとんどで、前回よりも未来に向かっている感じというか、“今のキスエク”と“これからのキスエク”を感じています。個人的にも、後輩が入ってきて先輩になったので、新しい挑戦のような気持ちで挑めたアルバムだと思いますね。

真城:今回のアルバムは初めて私が参加した音源で、アルバム全曲参加させていただいているので感慨深い作品です。プログレファンの方に刺さるような楽曲あったり、アイドルファンの方にも馴染みやすいような曲が入っていたり、いろんな層の方に刺さる曲が一枚のアルバムの中に入っていると思います。キスエクが「何をしている人たちなのか」が分かるような、名刺代わりの一枚になってるんじゃないですかね。

 

ーーで、瞳々さんは全曲に参加されているわけではないんですよね?

星野:全曲ではないです。「Hungry like the Wolf」「えれFUNと“女子”TALK~笑う夜には象来る~」「羊たちの進撃~The assault of the Lambs~」「Ride a Tiger」「フェニキスの涙」の5曲です。

 

ーーその5曲に参加されていかがですか?

星野:なんか不思議な感じですね。自分の声がちゃんと入ってて、それを皆さんに聴いてもらえるのは、なんか変な感じがします(笑)。

 

ーーそういうお仕事をされているんですが(笑)。

星野:(笑)。

 

ーーまぁでも初めての体験ですもんね。

星野:はい。

 

ーーで、当初はこのアルバムを11月末のワンマンと同時期にリリースする予定だったんですよね?

一色:はい。

 

ーーそれがコロナの影響などもあって5月に延びた、と。

大嶋プロデューサー:はい。なので、昨年11月のワンマンでは全曲披露しています。でも、そのおかげで瞳々の参加できる曲が増えたと。

 

ーーなるほど。で、タイトル『Le carnaval des animaux』の元ネタはもちろんご存知ですよね?

小嶋:『動物の謝肉祭』です。

 

ーーはい。サン=サーンスの。サン=サーンスの組曲『動物の謝肉祭』についていた副題『動物学的大幻想曲』が本作にも付いているんですよね。で、大嶋さんは、かなり以前から「キスエク版のピンク・フロイド『アニマルズ』を作りたい」といった趣旨のことをおっしゃっていました。

大嶋プロデューサー:そうですね。「フェニキスの涙」もそれを前提として「動物シリーズで行きましょう」ってことで。その中でも「強力に戦える一曲を作ろう」ということで宮野弦士さんにお願いして、で「動物は何にしますかね?」「う~ん火の鳥にしましょうか」みたいな会話をして…。一発目を架空の生物にするのもどうかと思いますが(笑)、その時点で『アニマルズ』にしようとは決めていました。

 

ーーたまたま“動物曲”が集まったから『アニマルズ』みたいにしようかではなく、最初からそういう構想だった、と。

大嶋プロデューサー:そうですね。その後、すぐにカップリングの「Hungry like the Wolf」を作って、それと同時進行で「羊たちの進撃」も作りましたね。

 

ーー“動物たちを集めたアルバム”となると、東大農学部獣医学科の真城さんはひと言おありでしょう?

真城:あ、はい…。ハハ。私の加入後初の音源が動物に関するものだったので、ファンの方の中にも「これ真城への私信なんじゃないか」って言う方もいて、私も若干思いつつ、まぁ本当は全然そうではないんですけど(笑)。でも、動物は好きなので嬉しいですね。やはり思い入れはあります。全曲動物のことを歌っている歌ってわけでもないんですけど…。

 

ーーあぁ、比喩的に動物の名前を使っている曲とかもありますよね。「鷲」があって「狼」「ネズミ」「象」「トカゲ」「羊」「熊」「虎」あと「火の鳥」。獣医学的にはこの並びはどうなんですか???

真城:あまり扱わない動物ばかりなので…

一同:(笑)

真城:火の鳥とかは存在するのかどうか…。日々実習とかで触れないコたちばかりなので…。

 

ーー専門外というわけですね。

真城:ギリ狼なら犬の範疇でいけるかな、みたいな(笑)。

 

ーーラットとかは?

真城:そうですね。ラットは毎日世話していますね。

 

ーーじゃあ「Do rats desert a sinking ship?」という曲に関しては、動物の気持ちも分かり、ばっちり歌えるわけですね?

真城:どうですかね…。生身のラットを扱いすぎているので、曲の中のラットはまた別モノだと捉えています。はい。そこはディズニーのネズミみたいなのを想像して歌っていますね。実際の動物っていうよりはファンタジー系の動物をイメージして。あまり獣医学の経験は役に立たないです(笑)。

 

はい、パンクなんで(笑)(浅水るり)

 

ーーでは、一曲ずつお訊きしていきたいと思います。まずは元Fear, and Loathing in Las Vegasのsxunさんが作曲された「Altair」(孤高の荒鷲)。

一色:「Altair」は全編英語詞なんですが、まずは英語が大変だったなぁという思い出があるんですが(笑)。「荒鷲」というタイトルが付いていてるんですけど、この曲を歌っている時、空を飛んでいるようなイメージが頭に浮かぶんですよ。最後は静かめに終わるんですけど、ちょうどワシとかトンビといった猛禽類が高い所からスーッと飛んできて、ゆっくり着地するみたいな。歌ってても「始まるぞ」っていう解放的な気持ちになれるというか、空に羽ばたいていく気持ちになれるので、ライヴでやる時は1曲目に持ってくることが多いですね。

 

 

ーー1曲目としては最高ですよね。最初は結構聴きやすくて、でも途中ですごく変化していくじゃないですか。オートチューンが入ったり、倍のテンポになったり、変拍子が入ったり、で、最後は静かに終わる。なんだか、取っ付きやすいところからプログレ沼にどんどん引き込むような…。では、りんさんいかがですか?

小嶋:壮大な感じの、広がりのある感じの曲ですよね。広い会場でやったら映えそうな。あと、夏フェスとかでやりたい曲です。野外とかでやったら楽しそう。

 

ーースケール感ありますよね。では浅水さん。

浅水:はい。英語曲ですが、英語は好きなんですけど全然得意になれなくて、レコーディングの時もすごく苦戦しました。全部カタカナで書いて覚えたんですが、覚えるのに時間が掛かったぶん、すごく身体に染み付いていますね。個人的には最後メンバーと順番に手を合わせていく振りがすごく好きです。歩きながらこう一人一人と手を合わせていくんです。

 

ーー振り付けも見逃せないですね。続きまして、真城さん。

真城:パッと視界が開けるような始まり方で、すごくいいツカミだなと思っていて。曲調も速いテンポでどんどん展開していく感じのロック。曲の長さはキスエクとしては短い部類に入ると思うんですが、短い中にもいろんな展開がギュッと詰まっていていいですね。

 

ーーなるほど。瞳々さんはこの曲には参加してないんですよね。客観的に聴いてみていかがですか?

星野:舞台袖でこの曲を観たり聴いたりしてるんですが、これから覚えなきゃいけないので…(笑)。英語がとても苦手なので頑張らなきゃいけないなと思ってます(笑)。

 

ーー続きまして「Hungry like the Wolf(ver.3.5)」。これはもうステージでは定番曲になっている感じですよね?

一色:そうですね。ライヴでは拡声器を使って高速でラップ調の歌詞を歌う、というか叫ぶというか、そういうことをしているんですが、それだけでも絵面として攻撃的な…なんか狼っぽいというか(笑)。今までになかったなって感じですね。この曲のデモを聴いた時は「うぉおお!」ってなりました。で、実際ライブでやった時にも、お客さんからも「あの曲が楽しかった」と言ってもらえることが多くて。アルバムの中でもかなりいいアクセントになってると思います。

 

ーーあの拡声器によるアジテーションといいますか、あれはちょっとパンクな感じもありますよね。この曲もハモンドオルガン系の音を主体としたヴィンテージ・ロック調と、電子音の入ったエレクトロ調とがコロコロと変わって、面白いです。では、小嶋さん。

小嶋:結構キスエクって早口の歌詞って今までも多かったんですけど、なんか今までとはまた違った感じですよね。ライヴでは、拡声器のパートではマイクと拡声器を両方持ったままパフォーマンスしなきゃいけないので、どうしようっていつも悩んでて(笑)。これから磨いていきたいなと思っています。

 

ーーあぁ、持ち替えるわけではなくて、自分の番の時は両方持ってなきゃいけないわけですね。ちなみに、3人でやられた時は3人とも拡声器のパートを歌っていましたが、5人になったら5人皆さんに拡声器のパートはあるんですかね?

一色:それがないんですよ…。拡声器は元々割り振られた3人でやってます。

 

ーーあぁ、これは萌さん、りんさん、るりさんの特権なわけですね。では、もう一人の拡声器担当・浅水さん。いかがですか?

浅水:拡声器を持って歌ってみるとか、そういう叫ぶ感じの曲とか、以前からやってみたいなという思いがあったので、この曲のデモを聴いた時に「あ、こういうのやりたかった!」って嬉しかったのを覚えています。実際ライヴでやってみて、お客さんもすごく盛り上がってくれますし、今のような声が出せない状況でも、サビとかお客さんが簡単に真似できる振りなので、一緒に盛り上がれる曲で、ライヴではすごく楽しいと思います。声出せるようになったり、暴れられるようになったら、みんなで叫びたいです。

 

ーー浅水さんはパンキッシュというか過激な部分を秘めてますもんね。

浅水:はい、パンクなんで(笑)。

 

ーー真城さんはいかがですか?

真城:私が加入した時は3人でやっていた曲で、それを観て「私も参加したいな」とずっと思ってました。で、瞳々ちゃんの加入をきっかけに私も曲に入れていただいたんですが、やっぱり最初の拡声器パートがすごく印象的でカッコいいなと思いますね。歌詞も感情を解放する感じで、3人ともガーッてやってるのでカッコいいなって。まぁ、私は拡声器やらせてもらえないんですけど(笑)。

 

ーー(笑)。瞳々さんはいかがですか?

星野:お披露目の時に3曲参加した中の1曲なので、すごく覚えてて。拡声器とかって新鮮なものじゃないですか。あまり見たことがなかったので、すごいなって。アハハ(笑)。

 

ーーまぁ日常的にはあまり使わないですもんね。でも、昔は学校で使われてたんですけど…。

星野:あ、でも先生がたまに使ってます。

 

ーーあぁ、そうなんですね(笑)。では、続きまして「Do rats desert a sinking ship?」組曲「ねずみは沈む船を見捨てるか?」。これはもう、アイドル界では皆さんでないとできない曲ですよね。

星野:私はこの曲には参加してないんですけど、ディズニーみたいな雰囲気があって好きです。これステージ袖で見てるんですけど、すごく長いので、見てる方も楽しくて、次の曲で出ていく時にちょっとドキドキします(笑)。

真城:アルバムの中ではこの曲が一番好きかもしれないですね。長い曲ではありますが、幾つものパートに分かれていて、それぞれ展開が違って、一つの物語みたいになっていて。もともと演劇やミュージカルが好きなので、そうした曲をアイドルとしてやれるのがすごく楽しいです。観てるお客さんも長いけど飽きないような曲になっていると思います。

浅水:これまでにあった10分超えの曲「悪魔の子守唄」は物語性をそれほど前面に出した曲ではなくて、「なんだったんだろう?」ってお客さんを困惑させるようなタイプの曲だと思うんですが、この「ねずみ」も困惑はするとは思いますが、聴く人によってはそれぞれの情景が浮かぶ曲かなって思います。なので、私はネズミになり切って「ここはこういう気持ちかな」って思いながら演じているんですが、今までにそういう曲がなかったので、やってすごく新鮮ですし、お客さんも楽しんでくださってるようなので、これからどんどんやっていきたいですね。

小嶋:私はこの曲を聴いて、一瞬で「好きだな」って思いました。昨年のワンマンでお披露目したんですが、壮大な雰囲気もあって、自分の中では集大成的なものとして捉えていますね。長い曲なのでなかなか披露できる機会がないんですが、これから沢山やっていきたいと思います。

一色:みんなが言ってくれたように演劇っぽい、ミュージカルっぽい曲で、展開もいっぱいあって、一曲の中にいろんな要素が入っている楽しい曲だなって思います。展開がいっぱいあるので、それぞれお気に入りのパートとか全然違うんじゃないかなって。いろんな人にどこがお気に入りか訊いてみたいですね。ちなみに私は「溺れるネズミ」が好きです。なんか、あまり今までやったことがない感じの曲調というか、ちょっとオーバーに芝居がかった歌い方をしてみたりとか踊ってみたりとかしていて…。奈央子ちゃんとハモリで追っかけっこしているみたいなパートもあって、それってグループじゃないと絶対できないじゃないですか。そういうところがお気に入りですね。

 

ーー萌さんが「お気に入り」とおっしゃった「溺れるネズミ」なんて、ちょっと昭和歌謡っぽい雰囲気がありますよね。ちょっと「タッチ」を思わせるようなメロディもあったりして。アルバム全体にも随所に日本情緒を感じさせる部分もあって面白いです。あと、先ほどおっしゃった「違う歌詞」を二人が同時に歌う部分などもあります。

一色:ライヴでやると釣られそうになっちゃうんですけどね(笑)。難しいんですよ(笑)。

 

ーー続きまして「えれFUNと“女子”TALK~笑う夜には象来る~(2021 Ver.)」。これはもうかなり以前から歌われてきた曲です。

星野:めっちゃ可愛らしくて明るくて、サビもキャッチーでとても歌いやすいですし、振り付けも可愛いので、とても好きです。

 

ーーキング・クリムゾンという小難しいバンドがかつてこの曲のモチーフとなる曲をやっていたんですが、瞳々さん世代はこれを「可愛い」と思うわけですね?

星野:はい。可愛い(笑)。

 

ーー真城さんはいかがですか?

真城:これも瞳々ちゃんが入っててきてから復活した曲で、私としては瞳々ちゃんが入ってくれたおかげてこの曲ができるようになったのかな、と思っていて…。歌詞とかすごく女子っぽい感じで、瞳々ちゃんも言ってましたが、可愛い感じの雰囲気なので、瞳々ちゃんが入ってくれたことですごくしっくり来る曲になったな、って。

 

ーー“女子TALK”がさらに賑やかになった、というわけですね(笑)。では浅水さん。

浅水:この曲はプログレが好きな人には「あ、プログレだ」ってなる曲だと思うし、瞳々ちゃんのように「可愛い」っていう印象を持つような人もいたりして、どの人が聴いてもそれぞれの印象を持つんじゃないかと思います。キスエクの中では比較的分かりやすい曲というか、サビらしいサビもありますし。だから馴染みやすい曲かなと思います。あと、やってて、普段日常でむちゃくちゃ笑顔になるることがあまりないので、ステージ上でこれを歌っているとなんか新鮮な自分になれる感じがします(笑)。

 

ーー日常ではあまり笑顔にならないんですか???

浅水:まぁ、たまに笑ってますけど(笑)。

 

ーーある意味、これは「プログレは可愛い」ということを証明する曲でもあるわけですね?

浅水:そうですね(笑)。

 

ーーでは続きまして、小嶋さん。

小嶋:キスエクは“プログレ・アイドル”と名乗ってずっと活動してきましたが、みんなが言ってるように、プログレが好きな人にも楽しんでもらえますし、アイドルが好きな人にも楽しいって思ってもらえる曲なので、プログレとアイドルの架け橋になる曲かなって思います。

 

ーーでは、萌さん。

一色:りんりんや私はこの曲が初めてお披露目された時も知ってますし、ホントに最初の頃、まだレパートリーが少ない頃に生まれた曲なので、ライヴでかなりの回数やってたんですよ。キスエクって今はありがたいことに曲が結構いっぱいあって、最初の方に披露した曲はだんだんライヴでやる機会が少なくなってしまっていて…。その中でこの曲が今の5人体制になったことで復活して、アルバムにも収録されることになって、本当に嬉しいなと思いました。たしかこの曲こそ、アルバムの発売が延びに延びたことで入った曲だったと思います。「キスエクに動物テーマの曲、他にもあったかな」って私も個人的に考えた時、「あ、象あるな」みたいな(笑)。これ、他のインタビューで話した時に大嶋さんに「違う」って言われたんですけど(笑)、この曲は「象」がテーマですが、これをお披露目したぐらいに大嶋さんから『アニマルズ』のことを聞いてるんですよね。「ピンク・フロイドに『アニマルズ』っていうアルバムがあって…」みたいな。で、「いつか動物のアルバムを作ることがあったら入れたいんだ」みたいなことを言ってたと思うんですよ。

 

ーーおぉおお。その時から火種はあったのかもしれないですね。

大嶋プロデューサー:考えてたかもしれないですね。

一色:なので、動物のアルバムができるってなって、私はこの曲が入るだろうなと思ってましたし、結果的に入ってよかったなって思います。

 

私が歌い出すまでに5分ぐらいあるんです(真城奈央子)

 

ーー続きまして「十影」(Lizard)。これもキング・クリムゾン的角度から攻めてきますが(笑)。瞳々さん、いかがですか?こういう曲は。

星野:私は参加してないんですけど…。

 

ーー聴いてみていかがですか?これも可愛いですか???(笑)

星野:可愛いとは思わないです。

 

ーー(笑)。まぁ可愛くはないですよね。好きですか?それともイマイチですか?

一色:正直に言っていいと思うよ(笑)。

星野:カッコいい曲とか暗めな曲とかも馴染めるように……なんだろう……できたらいいな、って思ってます(笑)。

 

ーーまだちょっと馴染んでないって感じですかね??? では、真城さん。

真城:この曲は、今歌詞カードを目の前にして改めて思ったんですが、曲の長さに対して歌詞が少なすぎるな、って(笑)。ほぼ“音”なんですよ。我々の歌っていうよりも、バンドの音を聴いてくれ、っていう曲になっていて、これもキスエクじゃないとできない曲なのかなって。間奏もすごく長くて、私が歌い出すまでに5分ぐらいあるんです。5分ぐらい私、歌わずにボーッとしてるんですよ(笑)。

 

ーーアハハ(笑)。

真城:そういうのもアイドルさんには絶対ないと思うんですよね。これはプログレ好きの方が聴くとすごく刺さるんじゃないかと思います。

 

ーーまさにそうですね。いろんな変化球のあるアルバムですが、プログレ好きにとっては一番心が落ち着く曲かもしれません。

浅水:この曲は、音や歌詞が重たい感じの曲で、まだ振りは付いていないんですが、今後振りが付くようになったら、またどういう表情の曲になるのかなっていうのが気になっています。あと、バンドでやっているとホントに聴き惚れてしまうような曲だと思います。ぜひ生バンドのライヴの時にやれたらいいですね。

小嶋:「十影」って書いて「トカゲ」じゃないですか。私の中では、トカゲってすばしっこいイメージとか、なんか闘っているイメージがあるんですよ。なので、「あ、トカゲなのにこういう曲なんだ」っていう意外性があって最初聴いた時にびっくりしました。で、本当にプログレな曲で、この曲を聴いた時に、シルバーエレファントで初めて日本のプログレ・バンドさんたちを観た時の記憶が蘇りましたね。「あ、こういう曲をやってたな」って。なので、この曲では「あ、私たち今プログレやってる」って思える曲です。

 

ーーりんさんのプログレ初期体験を思い出させる曲なわけですね。では、萌さん。

一色:「十影」は、今までのキスエクに何曲か作ってくださってる林隆史さんに手掛けていただいた曲ですが、林さんの曲って、QuiさんやAlsciaukatさんといったバンドとの共演でやらせていただく機会が多くて、そのたびにバンドの醍醐味も感じられるというか、プログレッシヴ・ロックの味わいを強く感じることができるなと思ってたんですが、「十影」はその出力がとても高いというか…。奈央子ちゃんも言ってたように、歌う部分が少ないんですよ。まだワンマンでしかやってないんですが、ライヴでは、ステージにいるのにかなり長い時間歌わない動かないっていう演出をしたんですよ。なので、曲の長さは感じたとは思うんですが、でもずっと聴いてられるというか。それがプログレの一つの味わい方なのかなって思いますね。

 

ーーこういう言い方をすると語弊があるかもしれないですが…。キスエクって、もちろん皆さんのパフォーマンスやルックスも含めて素晴らしいグループだと思いますが、音源だけでも楽しめる数少ないアイドルかな、と思うんですよね。そういう意味では、この曲などはその典型なのかなって。では、続きまして「羊たちの進撃~The assault of the Lambs~」(2021 Ver.)。

星野:好きな曲です。ライヴの時とか、明るい曲の次にこの曲がくるとちょっと嬉しいです。フフ。なんか落差が生まれて楽しいなって思います。お客さんが驚いてる表情とかを見るのが好きです。

 

ーーミステリアスなイントロから始まって、ダークな雰囲気の漂う曲。途中からハードになります。真城さん、いかがですか?

真城:はい。最初から不穏な音が鳴ってて、インパクトあるな~って感じなんですが、キスエクの世界観がしっかりと出ていると思います。やってる側もその世界観に入り込めるし、聴いてる人もこういう世界観がしっかりとある曲って、聴くことに没頭できるというか…。展開もすごく面白くて、ちょっとゆっくりなペースで始まって、怪しい感じになりつつ、途中からアップテンポで攻撃的な感じになったりとか。先日、この曲をテーマに朗読劇をやらせていただいたんですが、歌詞からいろいろと物語が想像できる部分もあって、そういうところも楽しめるかなと思います。

浅水:この曲はものすごく感情を込めて歌っている曲で、世界観とか雰囲気とかすごく好きだなって思います。振り付けがどこを切り取ってもすごく絵になるような感じで、実際お客さんが撮ってくださる写真でも、ちょっと絵画みたいな感じがあって…。みんなが十字架に貼り付けられてたりとか、みんなで切り合ったりとかする振り付けがあって、そういうのも含めてすごく世界観とか物語性があって、いい曲だなと思います。

 

ーー振り付けも、みなさんのは、もちろんアイドルっぽいものもありますが、ちょっと芝居がかったものもあって、倒れ込んだりとかする場面もありますよね。

小嶋:この曲はイントロの鐘のような音もそうなんですが、ホラー感がある曲で、他の曲に比べても特に世界観の強めな曲だと思います。ライヴでやる時に、歌い方とかいつもどおりだとちょっと違うなって感じがあって、表現がちょっと強めな感じ、立ってるだけで存在感があるような感じ、を出せるように頑張っています。

 

ーー“圧”を出さなければいけないわけですね。

一色:私、この曲は曲調も好きですし、この曲の生まれた経緯とかいろんなことを考えても、すごく大事な曲だと思っていて…。このアルバムの中でも特にお気に入りの一曲です。この曲のオリジナルver.は、CDにはボーナストラックとして収録されているんですが、その初出しが、なりすレコードさんとSUNDAY GIRLSの関美彦さんによる神保町試聴室のドネーションCD『STAY OPEN ~潰れないで 不滅の試聴室に捧ぐ名曲集~』だったんです。当時前グループを脱退されたばかりだった柿崎李咲さんと今泉怜さん、みしぇるさんの3人に参加していただいて、一緒に歌って作ったんですよ。当時は私たちも3人で活動していて、ずーっと新メンバーを募集してたんですが、なかなか決まらなくて…。3人体制に不安があったわけではないんですが、いつ「明日新メンバーが来るよ」って言われてもおかしくないような状態でほぼ一年やってたんですよね。そういう状況もあったし、柿崎さんたちがフリーであるっていう状況でもあったし、コロナの期間に突入して神保町試聴室もドネーションを募ることになったし、っていういろんな状況が重なって…。でも、その時にあった空気感みたいなものをこの曲が表しているような気がして、当時も「今歌うのにしっくり来る曲だな」と思ってレコーディングに臨みました。でも、奈央子ちゃんと瞳々ちゃんが入った今のキスエクにもやる意味が十分あるし、動物をテーマにしたこのアルバムにも入る意味があるし…。何重にも意味とストーリーのある曲だなと思っています。

 

ーーなるほど。リアルなキスエクの中にもいろんな物語があって、その中には、この曲を本アルバムに導き入れるストーリーがあるわけですね。

一色:そうですね。そこには暗さだけじゃなくて、力強さもちゃんとあって。

 

ーー歌詞にもありますが、逆境の中でも爪を研いだり牙を剥いたり、と。では、続いて「Hibernation」(冬の眠り)。

星野:これは私は参加してなくて…。なので、あんまり聴いたことがなくて…(笑)。

 

ーーでは、次に行った方がいいですかね(笑)。真城さん助けてください。

真城:助けられるかな…(笑)。これもワンマンの時にしかやってない曲で、私もワンマンの日とこの音源で聴くことしかしてないんですけど、とにかくこの曲調と萌さんの声がすごく合ってるなぁと。萌さんのパートが沢山あるんですが、それがすごく馴染むというか、響くというか。それに色を添えるような感じで私は歌っています。テーマとしては、亡き人を想う、という悲しい雰囲気のもので、ちょっと歌謡曲っぽい感じもあるので、私が歌うところも感情を入れやすいというか…。レコーデイングの時もすごく感情を込めて歌えたかなって思っています。

浅水:アルバムではこの曲がもしかしたら一番好きかも、って思います。テーマとして人の死っていうものがあって、メロディも綺麗ですし、聴いてて思い浮かぶ情景とか、全てが美しい曲だなと思っています。

小嶋:この曲はワンマンの時は振り付けがなかったので、スタンドマイクでやったんですけど、振り付けをつけてもっと世界観を確立してできたらさらにいいものになると思います。せっかく金属恵比須の高木大地さんに書いていただいた曲なので、これからライヴでどんどんやっていきたいです。

一色:この曲もワンマンでしかやっていないので、アルバムが出てから感想を聞くことが増えた曲で、なんか早くライヴでやって欲しいと言う声をたくさんもらっています。私はパートを多めにいただいている曲なんですけど、作曲していただいた金属恵比須の高木さんも「昭和歌謡曲みたいな」「プログレ歌謡みたいな」っておっしゃっていて、歌謡曲は個人的にも好きですし歌いやすいので、歌っててすごくしっくりくるなって思いました。ワンマンの時もスタンドマイクて歌って、もうほんとに昭和のアイドルになった気分で(笑)。

 

ーーいや、萌さんの声、ホント昭和歌謡に合いますよね。

一色:歌い方がちょっと古いんですよね(笑)。

 

ーーアハハ。いえ、一周回って新しいというか。先ほど少し言った「日本っぽいもの」「日本情緒」みたいなものがアルバムに散りばめられている感があって、これなんか本当にそういう曲かな、って思います。フルートの音がちょっと控えめながらも寄り添っていて、それがなんとも言えない郷愁感を醸し出していますよね。

一色:なんか優しいんですよね。メロディが、というか、曲全体の雰囲気が。これは唯一動物の名前が明確には入ってないんですが、「冬の眠り」で「冬眠」ということで「熊」なんですよ。これも早くやりたいですね。金属恵比須さんと共演する時にぜひ。

 

「フェニキスの涙」はキラキラしているというか、ゴージャスな感じがしますね(星野瞳々)

 

ーー続きまして「Ride a Tiger」(虎とアリス)。これは、cali≠gariの村井研次郎さんが作曲されたものです。

星野:この曲は、プログレなんですけど、あまりプログレとかを知らなかった私でもすぐ馴染むというか、聴きやすかったですね。サビもキャッチーでとても楽しいし、1番と2番とかあるからすごい馴染みました(笑)。落ちサビもあって…。

 

 

ーーなるほど。「JKにも馴染みやすいプログレ」ということですね!

真城:これは今のキスエクのキラーチューンというか、ライブでも欠かせない曲になってますし、お客さんからの評判もすごくよくて。さっき瞳々ちゃんも馴染みやすいと言っていたように、既存のアイドル・ファンの方っていうか、もともとアイドル文化に詳しい方、落ちサビでケチャをしたいような方にも楽しんでもらえるような曲ですし、でも、音はすごくかっこよくて、音楽好きの人でも楽しんでもらえるような曲ですし、なんか「プログレアイドル」、今の我々を象徴しているような曲なんじゃないかなと思ってます。

浅水:サビの時にフォーメーションみたいな感じで全体で一つの形というか、みんなで一つの動きを作っているのがよく見える曲です。そういうのもあってサビがより壮大になっていて、やっていて体力はすごく使うんですけど、終わったあとのやり切った感がありますね。「あ、ライヴした」っていう感じ。お客さんも盛り上がってくれて、きっと同じような気持ちになってくれていると思うので、この曲が今のキスエクにあってよかったなと思います。

小嶋:先ほどおっしゃっていただきましたが、cali≠gariの村井さんが作ってくださった曲で、「村井さんに書いていただいて、こんなアイドル曲が完成するんだ!」ってことに驚きました。で、音はゴリゴリなのに曲は楽しくてしかも可愛い。で、盛り上がれる。声出しできるようになってお客さんのコールとかが入ったら超楽しいだろうなと思うので、早くそういう状況になるといいなと思います。

 

ーーこれ、りんさんが以前お好きだとおっしゃってたフォーカスの「悪魔の呪文」を思わせるフレーズが入ってますよね?

小嶋:入ってますよね。「これは!」って思いました。

 

ーーこれは、りんさんのために作ったんですよね、きっと。

小嶋:いや、それはないと思います(笑)。

 

ーーでは、萌さん。

一色:この曲は、村井さんに作っていただいて、それだけでもすごい豪華なんですけど、Plastic Treeのナカヤマアキラさんにギターを弾いていただいて、ミックスをNARASAKIさんにやっていただいて、もうめちゃめちゃ豪華というか、制作陣を見ただけでも「オォオオ!」ってなるような曲で、間違いなくこのアルバムの目玉の一つだと思うんですが、みんなも言ってくれたように「さらっと聴きやすい」「楽しい」って誰でも思える曲だと思うので、この曲が入ってくれたことによって、このアルバムがすごくまとまりのいいものになったと思いますね。ライブでももちろん盛り上がりますし、今のキスエクのライヴで盛り上がる曲はどれですか?って言われたら、この曲だなと思います。テンポが速いじゃないですか。「オタクはBPM速いのが好き」説ありますけど(笑)、キスエクはゆったりした曲も割と果敢に挑戦していくタイプなので、ゆっくりな曲ばっかりになっちゃった時とかでも、この曲があると盛り上がれるんじゃないですかね(笑)。

 

ーー僕みたいな“プログレオタク”は「十影」で落ち着くんですが、アイドルオタクの方々は「Ride a Tiger」で落ち着く、というか盛り上がるわけですね?

一色:そうですね。今はコロナで難しいんですけど、動いたり声を出したりできるようになった時に、さらに新しい景色が見える曲だと思ってるので、コロナが収束して、この曲の真価が打ち出せる日まで歌い続けます!

 

ーー日常が戻った時には爆発したいですね。では最後に「フェニキスの涙」(The Tears Of Phoenix)(2021 Ver.)。これは瞳々さんも歌ってるんですよね?

星野:はい。「フェニキスの涙」はキラキラしているというか、ゴージャスな感じがしますね。「まだいけるでしょ」みたいな、アルバムの最後に相応しい歌詞とかもいいなと思います。

 

ーーたしかにキラキラ感がありますよね。

真城:これも、ずっと3人でやっているのを見ていたので、参加したいなと思ってた曲で、瞳々ちゃんと同じタイミングで参加させていただくようになりました。宮野さんが作ってくださったんですが、いろんな音が入っていてすごく面白いですよね。裏で鳴っているカンカンカンカンっていう音とか、その刻んでいる音がすごく私は好きで。我々の歌も聴いて欲しいんですけど、そういう音的なところも聴いて欲しいです。あと、最後の曲なので「不死鳥として蘇って終わり」みたいな形になっているのも、アルバムの終わりとしてすごくカッコいいなと思います。

 

ーーアルバムの中には、儚さとか辛さとか苦境にある様も歌われていますが、でも最後には「不死鳥」として蘇る、と。

真城;そうですね。「まだいけるでしょ」で終わるのがすごく美しいなって思います。

 

ーー浅水さん、いかがでしょうか。

浅水:去年のちょうどコロナ真っ最中の時にできた曲で、この先のことがあまり分からないような状況の中でレコーディングして振り入れして発表して、っていう曲だったので、個人的にすごく思い入れが強くて。この曲と共に大変な期間を乗り越えてきて、そしてこうやってまたパワーアップして新しい形でこの曲をできるようになって、アルバムの締めの曲になっている、っていうのがすごくいいなと思います。それに相応しい曲だし、これからも大切にしたい曲ですね。

 

ーーでは、りんさん。

小嶋:この曲、ラッシュっていうプログレ・バンドさん?のイメージだという話を大嶋さんから聞いたんですけど、その時たまたま海外ドラマの『Chuck』っていうのを観ていて、その話の中にラッシュの曲が出てくるんですよ。なんか、アーケードゲームを攻略しなければいけないんですが、ラッシュの「トム・ソーヤ」という曲の中に攻略のヒントが隠されている、みたいな…。それがこの「フェニキスの涙」に似ていて、その曲のオマージュでこの曲を作ってるみたいで、すごい親近感が沸いた曲です。

 

ーーあぁ「トム・ソーヤ」。曲の最後にラッシュの「YYZ」っていう曲のフレーズが一瞬出てきますが…。音像といいますか、音の広がりといいますか、そういったものは「トム・ソーヤ」のイメージが確かにあるかもしれません。イントロのうねるようなシンセの音とか。ちなみに「トム・ソーヤ」が収録されている『ムーヴィング・ピクチャーズ』というアルバムに「YYZ」も入ってます。

小嶋:そうなんですね。

 

“プログレおじさん”たちが沢山レコードをくださって(笑)(一色萌)

 

ーーこのたび『Le carnaval des animaux -動物学的大幻想曲-』のアナログ盤がリリースされるわけですが、これは何か特別な仕様になっているのでしょうか?

大嶋プロデューサー:中がどうなっているかは、メンバーはまだ実際には見てないですね。

一色:そうですね。結構こだわった作りになってるみたいですが…。なんて言うんでしたっけ?

大嶋プロデューサー:E式のゲートフォールド。ジャケットには輸入盤っぽい感じでステッカーが貼られてあります。

一色:盤もカラーヴァイナルなんですよね。

 

ーー何色なんですか?

大嶋プロデューサー:見てのお楽しみです(笑)。

一色:「フェニキスの涙」もなりすレコードさんからアナログを出させていただいていて、それも“透明カラーヴァイナル”だったんですが、すごく綺麗な透明ディスクで作っていただいたので、今回も期待していただければと思います。

 

ーーA面B面ってどこで分かれるんですか?

大嶋プロデューサー:「十影」からがB面ですね。

 

ーーところで、瞳々さんなんてアナログに馴染みはありますか?

星野:私、レコードを聴いたことがないんですよ…。

 

ーーあぁ…。まぁ普通そうですよね。ということは、今回初めて聴くことになるんですか?

星野:そうです。フフフ。

 

ーーアナログプレイヤーは持ってるんですか?

星野:持ってないんですが、高校の音楽室にあるみたいで…。

 

ーーおぉ、と、いうことは…?

星野:???

 

ーーキスエクのアナログを持っていって、音楽室で大音量で流すわけですよね???

一同:アハハ(笑)。

 

ーー校内放送で流したりして。

星野:あ~でも、バレなければ別に大丈夫だと思います(笑)。

浅水:「えれFUNと“女子”TALK」とか流して欲しい。

 

ーーぜひ、音楽室にお友達を集めて試聴会をやってください。

星野:無断で(笑)。

 

ーーでも、JKの瞳々さんから見て、アナログってどうですか? そもそもアナログって見たことありますか?

星野:なんか、お父さんの部屋にはあるんですよ。

 

ーーあぁ、お父様はアナログは持ってらっしゃる、と。プレイヤーは???

星野:ないです。

 

ーー飾りとして、お洒落で持ってらっしゃるわけですね?

星野:はい。ハハ。

 

ーー見たことはあるけど、まさかあれから音が出るとは!って感じですかね?

星野:(笑)

 

ーー他のメンバーのみなさんは、もうアナログもお馴染みですよね? ファンの方からいただいたり、と萌さんおっしゃってましたよね?

一色:でも、私だけかもしれない…(笑)。

 

ーー真城さんとかどうですか?

真城:私は…いただいたことはないですね。

 

ーーあまり馴染みはないですか?

真城:あまりないです。キスエクに入って「フェニキスの涙」のアナログ盤をいただいたのが初めてでしたね。まだプレイヤーも持っていなくて。どうせ買うならいいものがいいかなぁ、とか思っています。なのでアナログは今はまだ飾りです。

 

ーー浅水さんは沢山お持ちですよね???

浅水:いえ、プレイヤーは持っていなくて、盤も完全に飾りになっています。もともとはレコードやカセットテープって、なんか可愛いなと思っていて、ファッション感覚でレコードショップに見に行ったりとかしていました。なので、自分の声がレコードになるっていうのはすごくワクワクします。

 

ーージャケットも綺麗ですから、これはプレイヤーを持っていない人もぜひ手に入れて部屋に飾って欲しいですよね?

浅水:はい。持ってるだけでそれっぽくなるので(笑)。

 

ーーりんさんはクラシックのレコードは沢山お持ちですよね???

小嶋:いえいえ、全然持ってないです(笑)。ただ、キスエクの前回のアナログ「WORKS Vinyl Edition」とか「フェニキスの涙」とか、自分たちのレコードをいただいたんですが、それを聴くものがなくて…。で、親がレコードプレイヤーを買ってました。

 

ーーあぁ、りんお嬢様の大邸宅ではアナログが聴けるわけですね?

小嶋:(笑)。でも私は触ったことがないです(笑)。

大嶋プロデューサー:アナログ限定の「WORKS Vinyl Edition」が出た時に、メンバー全員「レコードからどうやって音が出るのか」を知らなくて、ディスクユニオンさんにあったプレイヤーで「こうやって出すんだよ」って見せたら、みんな「おぉおお!」ってなってました。

 

ーーアハハ。え? 萌さんもですか?

一色:そうですね。当時はレコードを聴いたこともなくて、キスエクが出したのでプレイヤーを買ったって感じです。で、「レコードプレイヤーを買ったよ~」ってツイッターで呟いたら、“プログレおじさん”たちが沢山レコードをくださって(笑)。で、おかげさまで色々と聴かせていただいております(笑)。あとは、おじいちゃん家の蔵から古いレコードとか発掘してきました。せっかくレコードを買ったので色々聴こうかなと思って。

 

ーー何か面白いものは見つかりました?

一色:そうですね~。(イエス『こわれもの』、ソフト・マシーン『4』を手にして)これとか、これとか。

 

ーーえぇええ!お祖父様がソフト・マシーンを???

一色:あ、蔵にあったのは日本の歌謡曲とかばっかりだったんですよ。でも、こういったプログレも「何から手をつけたらいいか分からないなぁ」と思った時に、レコードででっかいのを持っていると「これを再生したいな」という気分になるので(笑)、手に入れました。

 

ーーイエスの『こわれもの』には、小さい冊子が挿入されてるんですよね。

一色:はい。アナログ盤はCDとはちょっと違う音楽体験ができると思います。キスエクのもぜひお願いいたします!

 

 

【リリース情報】


アーティスト:XOXO EXTREME
タイトル:Le carnaval des animaux -動物学的大幻想曲-
フォーマット:LPカラー盤
品番:NC-666671(NRSP-1299)
価格:4,000円(税抜)
発売元:ナリスコア・レコード
発売日:2021年7月17日(土)<RSD Drops>