Last Update 2017.11.22

Interview

蓮沼執太 『メロディーズ』インタビュー

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まずはここまでの歩みをざっと振り返ってみよう。2015年、長期滞在先のニューヨークから帰ってきた蓮沼執太は、帰国後初の大きな取り組みとして、ある公演を行っている。ビルボードライブ東京にて開催された公演のタイトルは『蓮沼執太のメロディーズ』。当初は“蓮沼執太フィル”としてオファーされていたにも関わらず、「もっと新しいことがやりたい」という思いを強くしていた蓮沼は、この日のために楽曲を書き下ろし、すべて新曲による実験的なライヴを敢行したのだ。

このライヴから手応えを掴んだ蓮沼は、そのままアルバムの制作に突入。さらには「自分自身の声から楽曲をつくっていく」という制作上のルールを設け、ついに一枚のアルバムを完成させる。2016年2月にリリースされたこの作品のタイトルは、『メロディーズ』。蓮沼といえば、現代美術やサウンド・インスタレーション、あるいは電子音楽など、じつに様々な表情をもつ音楽家だが、アルバムの収録曲すべてを蓮沼自身のヴォーカルによってつくったのは、これが初めてのことだ。結果として、『メロディーズ』はこれまで以上に人懐っこさを感じさせる作品となり、いわゆるポップ・リスナーにも彼の存在をひろく知らせることにもなった。「蓮沼のこういう作品をずっと待っていた!」。そう感じたファンもきっと少なくないはずだ。

そんな蓮沼の最新作『メロディーズ』が、このたびアナログ・レコードとしてリリースされる運びとなった。そこで今回はアルバム制作当時のことを改めて蓮沼にうかがいつつ、このアナログ・レコード化にあてた取り組みと、そこにかける思いを存分に語ってもらった。

 

取材/文:渡辺裕也

撮影:豊島望

 

ーー僕はこの『メロディーズ』というアルバムを、「蓮沼執太がはじめて意識的にポップスの形式と方法論を取り入れた作品」として捉えているんですけど、実際はいかがだったんでしょうか。

 

たしかに方法論はそうですね。しっかりとしたバッキングのオケがあって、主旋律がはっきりとしていて、構成も「Aメロ→サビ→間奏→サビ→サビ2」のような様式にほぼ則っています。ポップミュージックのコンテクストを否定せず、自分なりに楽しんでアプローチした作品でした。それこそ「ラジオでかけてもらえるような大衆的な音楽になっていればいいな」みたいなことは思っていました。とは言っても、やっぱり僕はポップス専門の音楽家ではないんですよね。だから、一聴したらさらっと聴けるかもしれないけど、何度も繰り返してもらうと、じつは結構なことをやってるんで(笑)。そういう違いはあるかなと思います。

 

ーーたしかに、作曲家としての蓮沼さんには様々な側面がありますよね。でも、一方でそんな蓮沼さんのことをポップスの文脈で捉えてきたリスナーは、前々から少なくなかったと思うんです。

 

そうですね。確かにそういう方もいると思います。

 

ーーそこで気になるのが、蓮沼さん自身はポップスをどういう音楽として捉えているのかってことで。

 

非常に難しい質問ですね。それはもう、現代の大衆音楽としてそこにあるわけだし…。かといって、自分がこのアルバムで大衆音楽を大々的にやりたかったのかといえば、そうでもないんです。むしろ、そこに本気で向き合い勝負をしていたら、この作品の仕上がりはもっと違ったものになっていたと思う。だから…ポップスは海みたいな感じですね。自分の現在地の視野からではどこからどこまでがなのか、結局は把握できないものっていうか。なんか、ぜんぜんうまいこと言えてないけど(笑)。

 

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ーー一方、ディテールをひとつひとつ見ていくと、『メロディーズ』はいわゆるポップスと一線を画した作品でもあると思います。

 

結局はけっこうオルタナティヴな活動をしている演奏陣でつくってますからね。それこそ徳澤青弦さんに弦のアレンジを2曲お願いしていたり、参加してくれたメンバーもほぼ蓮沼フィルのメンバーなので、やっぱりそういう要素は大衆的な要素というよりも、いつもの僕の周辺な雰囲気が滲み出ていると思う。

 

ーーでは、そんな『メロディーズ』のリリースから半年以上が経ったいま、蓮沼さんはこの作品にどんな手応えを感じていますか。

 

「まだまだこの方向性の楽曲は作りたいな」とは思いました。それこそ次は今回の「すべて自分の声からつくっていく」みたいな縛りをなくして、より一般的な作り方で歌モノをやってみたいなと。

 

ーー普通の作り方というと?

 

たとえば、フィーチャリングでゲストに参加していただくとか。あるいは「このアルバムはある強いコンセプトを元にして作りました」のようにアルバムのテーマを設定して作ったりとか。そういう、本当によくあるような作り方ですね。それでアルバムを作ってみたら、また何か新しい発見があるんじゃないかなと思ってます。《つづく》

 

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