Last Update 2018.1.17

Interview

曽我部恵一(サニーデイ・サービス)インタヴュー
「『Popcorn Ballads』はバンドが崩壊しかけた時のひとつの在り方。これがその最終期、ここから先はないよ、って感じ」

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気分はサイバーパンク

 

――『Popcorn Ballads』ってみんなが好きなサニーデイっぽい感じの曲もいくつか散りばめられているけど、サウンド的にここまでファンク色が強いアルバムは今までになかったよね?

曽我部 なかったかもしれない。他のメンバーがほとんど不参加っていうのが、大きいんだと思う。

 

――ほとんど一人で作ったから、良い意味でタガが外れたところがあるんだろうね。サニーデイ名義なんだから本当はメンバー3人でアルバムを作りたい想いは持っていたはずだけど、そういうものが作れないってことで吹っ切れた感もありそうだね。

曽我部 そうですね……まあ消去法ではなく、必然的にこうなったというか。ライヴ用にアレンジしているとディープ・ファンクみたいな感じにできるから、バンドで演るのにも意外といいですよ。

 

――バンド編成のライヴにも対応できているんだ。

曽我部 本当は廃工場みたいなところを借りて、石井聰亙が監督した(アインシュテュルツェンデ・)ノイバウテンのライヴみたいな感じの(注:映画『ノイバウテン 半分人間』1986年)『Popcorn Ballads』をメインにしたライヴをやりたいんですよ。

 

――ああいうインダストリアルな感じって、まさしくサイバーパンク的な世界観を感じるね。

曽我部 そう、やっぱりサイバーパンクなんだよ。『ブレードランナー』の新作も公開されたし。

 

――『ブレードランナー2049』は観た?

曽我部 予告編に惹かれて絶対に観ようと思ったけど、まだ観れてなくて。

 

――テッド・チャンというSF作家の映画化不可能と言われた傑作短篇『あなたの人生の物語』を原作にして撮った『メッセージ』(2016年)という映画が大評判になって抜擢されたドゥニ・ヴィルヌーヴというカナダ人の監督が、実存に対する疑問とか「自分探し」といった彼が一貫して追求しているテーマを『ブレードランナー』の設定を借りて大胆に展開している。曽我部くんが触発される部分はあると思うな。

曽我部 そうなんだ。(「Record People Magazine」担当者に向かって)こんな風に、今日は話題が全部ズレていきます(笑)。でも、大丈夫。みんな『Popcorn Ballads』周辺の話だから。

 

『Popcorn Ballads』が最終地点

 

――最終的な選曲って、すごく考えた?

曽我部 ううん、そうでもない。

 

――サニーデイ・サービスとして2枚組のアルバムは『24時』以来になるのかな。

曽我部 『24時』は1曲入りの8センチCDが付いていただけなんで、1.2枚組みたいなものかな。アナログ盤は2枚組でしたけど。

 

――そうか、正式な2枚組ではないんだ。じゃあ本格的な2枚組って、今回が初めてなのか。配信だけだった時と、フィジカルになってからだと、曽我部くんの中ではどう違うの?

曽我部 分かんない。どうなんだろう……今までで一番よく分からないな。

 

――スケールが大きすぎて、ぼくもまだ的確に判断できない。こういうアルバムって、日本語のポップ・ミュージックでは聴いたことないな。超大作といえば七尾旅人『911FANTASIA』(2007年)も3枚組171分という破格のロックオペラだけど、反戦歌集だからむしろ分かりやすいんだ。『Popcorn Ballads』の方がつかみどころがない。でも誰にも解釈できないような突き放し方はしてないし、全体の流れはあるけどね。ところで『Popcorn Ballads』というタイトルの由来は?

曽我部 色々迷っていたんですけど、なんか思い付いて。『Popcorn Ballads』の響きが自虐的でいいかなって。

 

――軽いってこと?

曽我部 Bムーヴィーな感じ。ポップコーンくらいの価値のものっていうか。

 

――タランティーノの『デス・プルーフ』(2007年)みたいな感覚、ロードサイドのグラインドハウスでB級ホラー映画を二、三本立てで観るような感じだね。

曽我部 そうそう。

 

――『Popcorn Ballads』は中心に向かってギュッと求心力が働いているというよりも、むしろ遠心力が働いているアルバムという感じがする。

曽我部 確かにそうですね。

 

――実はこういうものをずっと作りたかった?

曽我部 そうでもないかな。もちろん毎回、作りたいものを作っていますけど。今はもう次に向かっていて……フィジカル盤が完成したのは最近ですけど、これを作っていたのってだいぶ前ですからね。今回は、ひとつの区切りとしてはいいなと思っています。『DANCE TO YOU』からの流れで、バンドが崩壊しかけた時のひとつの在り方。これがその最終期っていうか、ここから先はないよって感じ。外伝があるにしろないにしろ、ここが最終地点、という想いはどこかに持っていて。この先こういう音楽性を求められても……もうそういう感じではない。拡散していって、ワケが分からなくなっていって、パーツだけになってどこかに浮かんでいるようなイメージ。

 

――みんな好きに組み立ててください、という感じなんだ。

曽我部 そうそう。1曲なくても2曲なくても、逆にいうと2、3曲増えていても、意味の差はたいしてないんですよね。写真集とかって、100枚くらいの写真をばーっと見るじゃないですか。でも音楽のアルバムって、10曲とかの濃縮された世界観で語ってしまいますよね。音楽でもプレイリストだとそうでもなくて、何十曲もあるのが基本だから。

 

――なるほど、プレイリスト感覚なんだ。そう言われるとすごく腑に落ちる。

曽我部 ドレイクが自分の作品をアルバムじゃなくてプレイリストだと言っていて、まあそういう感じもありだなって。

 

――プレイリストってシャッフルもできるんだっけ?

曽我部 シャッフルはわりと前提に考えている気がする。

 

――じゃあ『Popcorn Ballads』もそうやって聴いてください、ということでもあるんだ。

曽我部 それでもいいし、なんでもいい。

 

――全然まとまらないけど……なんか不思議なアルバムってことで、あとは各自妄想を逞しくすればいいのかもしれない。バンドのキャリアの中で、そういうアルバムが1枚あるのも面白いよね。『ブラック・アルバム』にならずに、完成はしているし。

曽我部 『ブラック・アルバム』は次ですね。次はそういうのが作りたい。

 

――でも、完成しないとまずいよ(笑)。ちゃんと完成した『ブラック・アルバム』、それだったらヤバい。次の作品がますます読めなくなってきた。歌に特化した作品と言われても……謎が深まるね。

曽我部 歌のアレンジがどうとか、そういうことはもういいかなってことがそもそもあって。

 

――歌の力、言葉の力、メロディーの力、ただそれだけがあるという。

曽我部 そう、次はそれをちょっとやってみます。

 

■作品情報


『Popcorn Ballads』
フォーマット:CD(2 枚組 ) /アナログ盤 (2 枚組 ) /ストリーミング配信/ DL 販売
品番:CD:ROSE 214 | アナログ盤:ROSE214X
価格:CD:¥2,500 + 税 | アナログ盤:¥3,700 + 税
発売日:2017年12月25日(月)

 


『クリスマス -white falcon & blue christmas- remixed by 小西康陽』
フォーマット:アナログ7inchシングル
品番:ROSE 216
価格:¥1,500 + 税
発売日:2017年12月13日(水)

 


サニーデイ・サービス/北沢夏音『青春狂走曲』
サニーデイ・サービス、結成 25 年の総決算、初の単行本をついに刊行
発売日:2017年8月30日
価格:本体 ¥2,300 + 税
発行:スタンド・ブックス

 

■アーティストプロフィール

サニーデイ・サービス

曽我部恵一(Vo,Gt)、田中貴(Ba)、丸山晴茂(Dr)からなるロックバンド。1994年メジャーデビュー。1995年に1stアルバム『若者たち』、翌年2ndアルバム『東京』をリリース。「街」という地平を舞台に、そこに佇む恋人たちや若者たちの物語を透明なメロディーで鮮やかに描きだし、多くのリスナーを魅了し続けている。2016年8月には通算10枚目のアルバム『DANCE TO YOU』を発売し、現在もロングセラー。2017年6月、事前告知なしでニューアルバム『Popcorn Ballads』をApple Music、Spotify限定で配信リリースし、J-POPチャート1位を記録するなど多くのリスナーから支持された。12月25日にはディレクターズカット完全版と言える状態で、待望のCD・アナログ両フォーマットのフィジカルがリリース。12月13日には、小西康陽氏がREMIXを手がけた7インチチングル『クリスマス』のリリースも。結成25周年の総決算として、サニーデイ・サービスと北沢夏音の共著『青春狂走曲』がスタンド・ブックスより発売中。

 

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曽我部恵一
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