Last Update 2023.12.27

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台風クラブによる京都レコード・ショップ案内 / 第1回

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『100000tアローントコ』『WORKSHOP records』が入店しているモーリス・ビルの前で

 

取材/文:岡村詩野

 

昨年秋、雷音レコードからリリースされた7インチ・シングル「ずる休み」が大好評だった“日本語ロックの西日”こと京都の3ピース・バンド、台風クラブ。そんな彼らも、普段は自転車を転がしてライヴ・ハウスにフラリと遊びに行ったり、コンビニに寄ってカップ酒飲んだりする京都の町の愛すべき住民。あくまで京都の中で音楽を楽しみながら気ままに生活することを謳歌しています。

 そんな台風クラブの連中はとにかくレコードが大好物。特に石塚のヴァイナル・ジャンキーぶりはただごとではなく、近隣の他府県に新しいレコード店が出来たらわざわざ電車に乗って買いに行くというほど。去年も2枚の7インチ・シングルを発表した彼らは、まもなくやってくる今年2017年のレコード・ストア・デイ(4月22日)にも待望の新曲を収録した7インチ・シングル「相棒~ちょっと長い関係のブルース/飛・び・た・い」をリリースすることになっています。

台風クラブ『相棒 -ちょっと長い関係のブルース-』(監督はメンバーの山本啓太さん)

 そこで台風クラブの3人と京都のレコード店を回ってみたら楽しいかも、ということで企画しました、題して《台風クラブによる京都レコード・ショップ案内》。今回はその第1回目。まずは京都の音楽好きにはお馴染み、京都市役所横にあるこちらのビル前で集合です。

 待ち合わせたのは京都市中京区、市内でもど真ん中に位置する寺町御池上る西側のモーリス・ビル。寺町通沿い、京都市役所の真横で、京都市営地下鉄東西線『京都市役所前』駅を地上に出たすぐのところにあるレトロ・モダンなビルです。ここに入っている2軒の中古レコード・ショップ『100000tアローントコ』さんと『WORKSHOP records』さん。この2軒をお訪ねしてみることにしました。

 

■『100000tアローントコ』

ビルに足を踏み入れるとゆるやかに二階へと上がる階段があります。おそるおそる高い吹き抜けの天井のあるこのロビーの階段を上っていくと、すぐさま何やら楽しげな雰囲気が。そして、店へ誘導してくれるように雑然と並べられた古い文庫本のヤマやチラシ、フライヤー置き場を通過すると、正面に大きな窓ガラスが見える明るい店内が見えてきます。


手書きの文字が暖かい木の看板が目印

 


ビルに入るとレトロ・モダンな階段にいざなわれます

 


階段を昇り切るとワクワクするような『100000tアローントコ』の入り口が!

 

入ってすぐ左手にレジ。名物店主のカジタケシさんが今日も穏やかな笑顔で迎えてくれます。「いらっしゃぁい……あれ、台風クラブの石塚くんやん。今日はどうしたん?」。いやいや、実はこれこれこういう理由でお店取材をさせてもらいたくて…と説明するが早いか、「取材? 写真? なんでも好きにやってや」。誰にでも気軽に話しかけ、すぐ友達になっちゃうカジさんのこの大らかな人柄が多くのお客さんの心の拠り所になっている、そんなお店なのです。

 


レコードを中心に古着や本、CDがゴチャゴチャっと詰め込まれてる店内

 

するとまず石塚くんがレジで持参した袋を何やらガサゴソ。「カジさん、これ買ってほしいんですけど」。『100000tアローントコ』さんはお金のない音楽ファンの強い味方、持ち込んだ中古レコや古書をその場ですぐさまお金にしてくれます。しかも買い取り価格が良心的! 石塚くんも学生時代からよく利用していたそうで、今日もしっかり持ってきました。と言って取り出したのは、鷺巣詩郎・ウィズ・サムシング・スペシャルの『EYES』の帯つきレコード! 昨今では『エヴァンゲリオン』劇場版や『シン・ゴジラ』などの音楽も担当してるそんな音楽家・鷺巣の79年に発表されたこの初のソロ作品です。もちろん現在は入手困難で、中古市場では万のケタにもなるほどのレア盤。しかも帯までちゃんとキレイに残っていて状態も良好です。でも石塚くんは某所で僅か500円で買ったというこのアルバムを、「誰か探している人に聴いてほしくて」と売ることを決心。受け取ったカジさんもその心意気に応えるかのように5000円を石塚くんに渡します。「今日はこれを軍資金にして買いまくりますよ!」。

 


石塚くん、まずは鷺巣詩郎の貴重なレコードを買ってもらいました。買い取り価格5000円!

 

さっそく石塚くん、山本くん、伊奈くんの3人は売り場へ。中古盤好きには“エサ箱”とも呼ばれる陳列ケースをサクサクと繰る手つきも慣れたもの。日本のロック、ブルーズやソウルなどのブラック・ミュージック、ワールド・ミュージックからパンク、ニュー・ウェイヴまで狭い店内にギュウギュウに並べられたコーナーをくまなくサクサクします。もちろん、名物(?)である足下の200円レコード・コーナーも見逃しません。3人も狭い通路にしゃがみこんで背中を丸めながらパタパタと200円レコを繰り、興味のあるものをスッスッと抜いていきます。3人とも楽しそう!

 


石塚くん、まずは日本のロックのコーナーへ

 


山本くんは70年代の西海岸モノが好物

 


伊奈くんは迷わずジャズのコーナーで物色

 


足下は200円レコの住処。大量にある中にはあっと驚くお宝も

 

窓際には自由に試聴できるターンテーブルも設置。200円レコだって試聴出来ちゃいます。7インチ・コーナーも充実しているし、地元関西のインディー・バンドの自主制作盤も多数揃ったCDコーナー、哲学書、音楽書やデザイン、アート関係の本が揃った古書コーナーも人気です。古着やトートバッグ、雑貨やZINEもあって、さながらおもちゃ箱のような店内は、いつも人がいっぱい。いつまでもいたくなる、特に欲しいものがなくてもなんとなく行きたくなる、友達がいなくてもそこにいれば誰かと知り合えるような、音楽好きには夢のような空間です。

 


誰でも利用できる試聴コーナーも。窓の外には京都市役所が!

 


古書の中でも音楽関係本はさすがに充実しています

 


この3月で京都を離れたHi,how are you?の原田晃行くんのサインも

 

約1時間程度たっぷり楽しんだ石塚くん、山本くん、伊奈くんの3名はそれぞれレジに集結。さて、どんなお買い物をしたのかはのちほど報告してもらうとして、お客さんたちの落書きでいっぱいの“エサ箱”に台風クラブとしてもサインを残し、さあ、次のお店へ。「カジさん、どうもありがとうございました!」。

 


台風クラブも訪れた証をサインで残そうと、石塚画伯

 


最後にステッカーを貼って完成。石塚くんの名前の右横に小さく伊奈くん、山本くんのサインもあります

 


店主・カジタケシさんと戦利品も一緒にパチリ

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