Last Update 2023.12.27

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台風クラブによる京都レコード・ショップ案内 / 第1回

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――今日はおつかれさまでした。

石塚「いやあ、久しぶりに楽しかった! 最近なかなかこうやって集中して行く時間もとれなかったから…」

伊奈「僕は実はレコード好きって名乗れるほどではなかったんですけど、今日お店を訪ねて、遅まきながらハマりそうで恐いです(笑)」

山本「店に行くとついつい買っちゃいますよね。僕も石塚ほどじゃないけどレコードはずっと好きです。京都に引っ越してきたのが最近なので、まだあまりお店には行けてないんですけど、今日行った『100000tアローントコ』は最初石塚が連れていってくれましたね」

石塚「レコード売りに行く時についてきてくれた(笑)。やっぱ『100000tアローントコ』はほんま置いてるものがおもろそうなんが多い。ジャンル横断的に見られるし本も色々ある。買い取りが高くて売っている価格が安い良心的な店だし」

山本「うん、ここ一軒でもうゆっくり楽しめる」

石塚「『WORKSHOP records』は“町のレコード屋さん”って感じ。まず“新入荷”のコーナーを見て、気になるコーナーに移って。売り場もキレイに並んでて見やすくて。商品見てても指が真っ黒にならへん(笑)。移転前の木屋町にあった時代は本当によう行ってました」

山本「『WORKSHOP records』って結構思い出深い店というか。しばらく石塚たちと離れてて、8年ぶりくらいに会って(注:このあたりのいきさつはこちらのインタビューで)」

石塚「そうやったね! 『六曜社』(河原町三条にある老舗喫茶店)で会ったな。ヤマさんが失踪してて、失踪8年目に連絡とって久々に会って…」

山本「で、その時に『WORKSHOP records』に行った」

石塚「懐かしいな! WORKSHOP records』といえば、村八分のLPを買ったんだった。3800円で。エレック盤じゃないヤツだけど」

 

――これまでに中古レコ1枚に投じた最高額は?

石塚「8800円です。実は今日、鷺巣詩郎と一緒に売ろうと思って持ってくるの忘れたんですけど、東京ロッカーズの頃のスピードってバンドのレコードを高円寺の『珍屋』(高円寺店は2010年に閉店。現在は国分寺などに4店舗がある)で買いました。そもそも1枚に5000円以上出したのはそれしかないですね」

山本「僕は柳田ヒロがやってたサンズ・オブ・サンでボーカルやってたMAOの7インチですね。7~8000円くらいしたんやなかったかな」

石塚「ヤバいやん!」

山本「ギャラが入って、何に使おうか?って考えて」

石塚「俺、貧乏性やから7インチ買わへんな~」

 

――では、相場では高額の盤をうまく安く買ったという経験は?

石塚「やっぱり今日売った鷺巣詩郎ですね。500円で買って5000円になったという(笑)」

山本「僕はあんまり売らないんですよね~」

石塚「売るのも体力要るもんな。“レコード裁判”(売るか残すかを事前に熟考すること)せなあかんし(笑)」

 

――“レコード裁判”の末に、結局全部置いておく、というのが漫画『レコスケ』のオチでしたが。

山本「そうなりがちですよね。で、結局全部聴いてしまうという(笑)」

伊奈「僕はさっきも話したように石塚たちほど今まであまり中古レコード屋さんに行くことはなかったんですけど、最近ハマリ出して。だからまだこれといったエピソードはないんです」

 

――伊奈くんは今日はハービー・マンやロイ・エアーズとかを買いましたが、普段からジャズが好きなのですか?

伊奈「いろいろ聴くんですけど、レコードで聴くならジャズかな…という感じですね」

石塚「そういうのあるよね。やっぱり新譜をレコードで買うようなことはせえへんもんな……って、今、めっちゃ自分たちの首を絞めるようなこと言ってる気がしますけども(笑)」

 

――台風クラブも多く7インチ・シングルをリリースしているのに。

石塚「ねえ……あ、でも、片想いの7インチとかは買いました。あれ、900円台とかで買いやすかったし。再発の7インチで1500円とか2000円とかって……ちょっと手が出ないですね。特に再発盤だったらやっぱり買いやすい価格であってほしいですよね。今日は行けなかったけど、寺町三条の『HAPPY JACK』ってお店ではガレージとかビート系の再発盤LPを1500円とかで売ってて良心的やなあって、大学の頃買いまくってました」

伊奈「今日、僕が買ったロイ・エアーズは2500円だったよ」

石塚「お、カッコええ! そういう決め打ちみたいな買い方もいいよね。安いのたくさん買うんじゃなくて、コレというのをバンと1枚だけ買うって。俺が好きな買い方は、昔ようやってたんやけど、1万円持って日本橋(大阪)に行く、1万でどんなけ買えるか、みたいな。で、5枚以上、10枚までみたいな感じでした。今はもうそういう買い方は全くできなくなりましたけど、代りにツアー先のレコード屋さんを見る楽しみができましたね。高松の『マッシュルームレコード』とか最高の店ですよ」

 

――実は今日、石塚くんはこれまでに行ったレコード店のショッパーズ(袋)のコレクションを持ってきてくれているのですが、ちゃんとこうして残しているのがすごいですね。

石塚「高校の頃とかによう買いに行った大阪の店のが多いけど、結構いろんなところに行ったので東京、名古屋、金沢、横浜とかのもありますね。でもね、今でこそ大事にとっておいてますけど、高校の時とかはイキッて体操服とかをこういうレコード袋に入れてたんで把手が伸びたりボロボロになったりしてました(笑)。大学の時もこれに教科書入れて通ってたしなあ」

山本「カバン代りや!」

石塚「そう。把手がちぎれたらまた次の袋、みたいなね。だいぶそれで消費しましたね。思い出の店はやっぱり移転前の『TIME BOMB』です。あそこは本当によく行きました」


石塚コレクション。レコード愛があふれています

 

――わざわざ電車に乗ってレコードを買いに遠征したこともあるそうだけど?

石塚「ありますあります。『100000tアローントコ』にチラシが置いてあるのを見て新しいお店がオープンするっていうから彦根の『初恋レコード』まで。あの時は、前から聴きたくて気になってた“都会の村人”のアルバム『退屈しのぎ』を割と安くで買えて嬉しかったですね。帰って聴いたらもう一つでしたけど(笑)。『レコードマップ』片手に青春18きっぷで名古屋まで行って、『バナナレコード』とかいろいろ回って、関西本線で奈良まで戻ってきて『ジャンゴレコード』に寄る、という。『ジャンゴレコード』の店主にアズテック・カメラを教えてもらったんですよ」

 

――石塚くんにはこれまで買った思い出のレコードもたくさん持ってきてもらいました。京都のバンドの先輩格にあたる“ちぇるしぃ”のファーストもありますね。

石塚「今僕が仕事をしているレンタル・サイクル店『えむじか』の社長の留さん(柴山留佑さん)って、以前、このちぇるしぃのメンバーだったんですけど、ずっとファーストがあるあるって言われてても見たことがなかったんで信じてなかったんですよ(笑)。だから見つけた時は本当に感動しましたね。ちなみに中に歌詞カードがないのは最初からの仕様だそうです。あと、ルースターズのこれも京都の某店で完品800円でした。ありえない金額でしょ? その店の人はこういうのが好きじゃないんだなって思いましたね(笑)。旅の思い出としては、東京の『COCONUTS DISK』に行った時にかかってたJohn Bromleyを聴いてすっごいいいなって思ってメモらせてもらって、その後に青春18きっぷで金沢まで行って、『EXILE RECORDS』でその話をしたら、別のレコードを勧めてくれて。それがPete Dello&Friendsのこれ(『Into Your Ears』)ですね。ブリティッシュ・トラッド系のシンガー・ソングライター。ハニーバスのメンバーだった人ですね」

 

――いいエピソード! お店に行けばこそ出会えるレコードってありますよね。

石塚「お店の方と話したり、そこでかかっているのが気になったり……そういう出会いっていいですよね。京都の『Meditations』で見つけて買ったこれ(『六曜社』店主のオクノ修さんの作品なども出していたHimicoレコードからリリースされていたPaul Adolphusの『The Dawn Wind』の再発盤)とかも、当時は全然知らずに買ったんですけど、アシッド・フォークですごくいいんですよね…。僕らのレコードもそうやって店先で見つけて買って欲しいなって思いますね」


こちらも石塚コレクション。どの作品にもそれを買ったお店、入手したいきさつなどの心温まるエピソードが

 

――さて、その台風クラブのニュー・シングル「相棒~ちょっと長い関係のブルース」が今年のレコード・ストア・デイにリリースされます。台風クラブとしては本当に久々の新曲、新録作品になるのですが、これはいつ頃に作られた曲なのですか。

石塚「この「相棒」と、ちょっと前にリリースされたレンタサイクル店『えむじか』の自転車コンピCD『CYCLE AND MUSIC 3』に収録された「春は昔」って曲が全くの新曲でライヴでもやったことのない曲なんです。「相棒」は去年12月くらいからネタをずっと考えていたんですけどなかなかまとまらなくて今年2月にようやく完成して。もともとはドゥービー・ブラザーズの「What A Fool Believes」を聴いたのがきっかけなんです。ドゥービーってもっと土臭いバンドかなって思っていたんですけど、何年か前にSugar’s Campaignのライヴを見に行ったら、「ネトカノ」の前にこの曲がかかって。「マジか!」ってなったんです。ああいう土臭いバンドがAOR~ブルーアイド・ソウルに接近するのもアリなんか!ってなって、それで僕らもやってみようかなって果敢に挑戦した曲なんですよ(笑)。そういうドゥービーとSugar’s Campaignとのミッシング・リンクみたいなのにハッとさせられて曲を作るきっかけになるんで、自分でも計算ができないんですよね」

山本「でも、石塚が持ってきた時……まあ、毎度なんですけど、コードがわからなくて(笑)。というか、当日その場で聴かされてその日のうちに録音するんですよ」

石塚「ホンマひどいよね。歌詞とかで頭がいっぱいになってて…もう毎回迷惑をかけてますね。でも、自分でもわからないんですよ。作った本人でもコードがわからないという(笑)。いつもそういう中でレコーディングするんです。この時は、昼の12時に3人でスタジオに入って、その後9時間くらい練習して、その後夜9時から録音しましたね(笑)」

 

――カップリング曲は既にライヴでもお馴染みの「飛・び・た・い」。こちらは『えむじか』のコンピCDの第2弾に石塚くんのソロ名義で収録されていた曲でもありますね。

石塚「あの時は、『えむじか』の留さんがミックス作業をやってる時にホントにたまたま居合わせて。なんか歌ってみたいに言われてその場で弾き語りしたのがあのヴァージョンなんです。その時はまだ台風クラブの影も形もなかったんですけど、今回ちゃんとスタジオでバンドとしてレコーディングできてよかったですね」

 

――では、タイトル曲「相棒」の“相棒”というのは石塚くんにとって何の象徴でしょうか? しかもサブ・タイトルは浅川マキのアルバム名ですね。

石塚「僕にとっての“相棒”はチャリでもギターでもって感じですね。実際にその2つは今の自分の生活には欠かせない相棒なんで。ちなみに、浅川マキさんのタイトルを拝借したのもそうですけど、もう一つオマージュみたいなのがあって。実はこのジャケットの文字の黄色、これ、カラーピッカーの最初の一滴はムッシュかまやつさんの「どうにかなるさ」の7インチ・シングルの黄色からとったんです。で、ジャケを完成させて入稿した翌朝にかまやつさんの訃報が届いて……そんな思いもこの7インチに込められているんです」

 

――さて、今年はいよいよフル・アルバムがリリースされる予定だそうですね。

石塚「そうです。なんとか今年の夏…終わりまでにはリリースしたいと思ってます。その時にはまたこのレコ屋巡り、やらせてください!(笑)」

 

■石塚さん戦利品

  • Nikki Dudden『Back To The Coast』(『100000tアローントコ』で1400円で購入)

■山本さん戦利品

  • Dave Mason『It's Like You Never Left』(『100000tアローントコ』で600円で購入)

■伊奈さん戦利品

  • Herbie Mann『The Inspiration I Feel』(『100000tアローントコ』で1500円で購入)

 

 

■取材店舗情報

『100000tアローントコ』(じゅうまんとんあろーんとこ)
http://100000t.com/
604-0925 京都市中京区寺町御池上る上本能寺前町485 モーリスビル2階
090-9877-7384(加地)
RPM内「Our Favorite Shop」でも紹介中!→https://r-p-m.jp/shop/100000t-alonetoco

 

『WORKSHOP records』(わーくしょっぷれこーず)
ウェブサイト制作中
604-0925 京都市中京区寺町御池上る上本能寺前町485 モーリスビル3階
075-254-6131
RPM内「Our Favorite Shop」でも紹介中!→https://r-p-m.jp/shop/workshop-records

 

■取材協力
『HiFi Cafe』(http://hifi-cafe.com/

 

■RSD2017 作品情報

台風クラブ『相棒 -ちょっと長い関係のブルース-』

レーベル:HMV record shop
商品番号:HR7S048
フォーマット:7inch
価格:1,000円(税抜)
発売日:2017年4月22日(土)
トラックリスト:
Side A
1.相棒 -ちょっと長い関係のブルース-

Side B
1.飛・び・た・い

昨年『レコードの日』に雷音レコードからリリースされた7”シングル「ずる休み」があっという間に店頭から消え、大きな話題となった台風クラブ。今度はレコードストアデイ限定盤としてリリースが決定。
新曲『相棒-ちょっと長い関係のブルース-』はバンドのオハコでもある粘りが心地良いナンバー。そしてカップリングにはライブでもお馴染みの初期の名曲『飛・び・た・い』を再録!

 

■ライブ情報

三面楚歌 ’17

出演:
台風クラブ / 本日休演 / 渚のベートーベンズ

2017年5月6日(土)
東京 下北沢THREE
18:00開場 /18:40開演
前売2,000円 /当日2,500円

2017年5月7日(日)
名古屋 金山ブラジルコーヒー
19:30開場 /19:45開演
前売2,000円 /当日2,500円

その他ライブ情報
5月6日(土)深夜 東京 新宿JAM “JAM FES 2017”
5月28日(日)京都 “第6回 いつまでも世界は…”
6月25日(日)大阪 中百舌鳥クラブマッシブ
8月26日(土)三田アスレチック 野外ステージ “ONE Music Camp 2017”

台風クラブオフィシャルサイト
http://taifuclub.com/

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