古市コータロー(THE COLLECTORS)
撮影:平間至
取材/文:秋元美乃(DONUT)
音楽を作るのが仕事であるアーティストたちが、普段どんな環境でアナログレコードを聴いているのか、どんなオーディオをチョイスしているのかなど、ミュージシャンのご自宅やプライベートスタジオへの訪問インタビューをお届けする読み切り連載企画『Listning Room』。今回のゲストには、3月1日(水)に30周年記念の日本武道館公演を控えるTHE COLLECTORSのギタリスト、古市コータローが登場。一度はレコードを全て手放したという彼が、アナログに回帰したきっかけとは? こだわりの収納ルールや愛用のプレーヤーは? あわせて、名盤『UFO CLUV』のアナログ化、最新アルバム『Roll Up The Collectors』、開催間近の武道館公演についてまで、たっぷりお話を伺った。
かけているレコードのジャケットをぱっと飾る。
鉄則ですよ
――CDが見当たりませんが、CDはどちらに?
古市 うち、CDはもう出入り禁止です。(笑)
――出入り禁止?
古市 極端なので、CDはパソコンに取り込んだらもう、息子にあげたり。どうしても捨てられないCDは200枚くらいはありますけど。でも基本的には家ではレコードかパソコンですね。
――いわゆる「マイ・ファーストLP」はなんですか?
古市 ビートルズなんですけど、それは今は持ってないんです。なぜかというと、前に引越しする時に一度全部売ったんですよ。「これからはデジタルで生きて行こう」と思って。もちろんアナログは好きだったんだけど、置ききれないし引越しの時にキツいなと思って。ちょうどステレオも壊れたし、これをきっかけに諦めようと(笑)。それで売っちゃったんです。2000年くらいですね。
――けっこうな数を手放したんじゃないかと思うのですが。
古市 そうですね。何十万かになったもんね、まだアナログが見直される前だったけど。
――そこからまたアナログライフに戻るきっかけは何かあったんでしょうか?
古市 割と最近なんですよ。(ザ・コレクターズの他に)ビザールメン(KOTARO AND THE BIZZARE MEN)というバンドをやっていて、アナログを出したんですよ(2012年『エレキの若旦那』)。やっぱり聴きたいじゃない? それでポータブルプレーヤーを買ったの。それで聴いたら「シビれる!」と思って、すぐレコード屋さんに行ってレコードを何枚か買って。そうしたら、レコードで聴くビートルズの初期とかもう、死ぬほど良くてさ。ポータブルプレーヤーで聴く『ミート・ザ・ビートルズ!』、神だよ! いいセットで聴くよりいいと思う。もうぶっ飛んでさ。で、「やっぱりアナログじゃないか」と思って。
――その一聴で?
古市 そう。その後すぐ、これ(SL−1200)をヤフオクで買ったね。で、最初は卓を用意してでかいスピーカーも買って、酔いしれて聴いてたんだけど、埃がたまるし不愉快な思いをしたんですよ(笑)。で、1年くらいした頃に、あるバーでこのスピーカー(Zeppelin Air)を見かけてすごい良くて。で、買いました。
――見かけもかわいいですね。
古市 そう、かわいいし、これなら(部屋に)あってもいいなと思って。
――イコライザーを使う感じですか?
古市 そうです、フォノイコライザーを通してますね。これで十分ですよ。音はいいに越したことはないけど、最低限のことをクリアしていれば「レコードを聴いてる」ってことが自分の感覚的には重要なんだよね。かけてるレコードのジャケットをぱっと飾って、それだけで大満足です。
――ジャケットを飾るというのは、こだわりなんですか?
古市 鉄則ですよ。
――その鉄則はいつから?
古市 最初はプレーヤーの後ろに立てかける程度だったんだよね。でもこの場所の設置上、後ろに置くと見えないんですよ。いやでしょ? で、これ(ジャケットを飾る台)を導入したんですよ。
――この台、いいですね。
古市 いいでしょ? たぶんレコード用じゃないんだけど。
――このプレーヤーを選んだのは何か理由がありますか?
古市 これはクラブDJも使っている、一番丈夫と言われる有名なやつですね。オートリターンじゃないけど、いちいち変えるのがまたいいんだよね。運動にもなるし。
――レコードの音については、どんなところに惹かれますか?
古市 みなさんが言うように低音がどうとか、音があったかいとか、そういうのはあまり気にしないな。なんとなく丸いっていう印象かな? 塊になってる感はありますね。
――先ほど言っていたポータブルプレーヤーで聴いたビートルズは、パンチがあったということですよね?
古市 そうですね。あとは時としてノイズとかもいい。《つづく》