古市コータロー(THE COLLECTORS)
自分にとってレコードって大事な趣味でもあるんですよ。
数を制限しながら集めていくっていう
――今あるレコードは、アナログ熱が再燃してから集めたものですか?
古市 そうですね、ここ5年くらいで集めたものですね。
――とくにこだわって集めているジャンルはありますか?
古市 アナログを再び買うようになって、まずやらなきゃならなかったことはザ・ゴールデン・カップスを全部手元に集めることでしたね。これは僕の自慢の1枚(『ブルース・メッセージ』)。すごく売れたアルバムで枚数は割と出てるんですけど、帯付きがけっこうなくて。で、ある時レコード屋に帯があるのとないのと2枚あったんだよね。雨の日でしたよ。で、帯なしが安かったの。5、6千円。この帯付きは2万いくらして。とりあえず一回、家に帰ったんですよ。でもやっぱり買わなきゃだめだなと思って、またお店に戻って買いました。
――帯付きはマストですか?
古市 あるなしで言ったら、2万円の差まではやっぱ帯付きですよ。
――他に苦労して集めたものや、こだわって集めたものはありますか?
古市 やっぱりAORかな。僕、AOR博士なんですよ。このエアプレイとか探すと全然なくて。たぶん興味ない人はしょっちゅう見てる。そういうものなんだよね。で、やっと手に入ったら安いし、その後はよく見かけるようになっちゃった(笑)。
――それはよくありますね(笑)。
古市 最近買ったのはカーティス・メイフィールド(『スーパフライ』)。これはあってもすぐに売れちゃうみたいで、(行きつけの)ココナッツディスク池袋店の店頭写真をインスタグラムで見て、自転車で猛ダッシュして買いに行きました(笑)。USオリジナルなんだよね。
――例えば同じものがあった時、選ぶチェックポイントはありますか?
古市 ジャケットの色調ですかね? あとは帯付きとか初回盤とか。
――検盤はしますか?
古市 しないね。ジャケットがすごい良かったら内容がクソでも全然いい。
――でも本当にAORのレコードが多いですが、コレクターズの音楽とは違いますよね。
古市 AORは大好きなんですよ。ギターの影響とはまた違う世界なので、それがいいんですよ。ライブ終わった後に聴く時も、できればギターが入ってないレコードを聴いたりしますね。
平間 気分転換に近いんですね。
古市 そうですね。あと酒飲んで聴くのに気分いいんですよ。世代だと思う。
平間 余計なことを考えさせない音楽ですよね。
古市 そうそう、そうです。まさにそうです。
平間 でも、何枚かある中から選ぶ時に、盤で選ぶのではなくジャケットの色で選ぶというのは面白いですね。CDではあり得ない買い方ですよね。完全にアナログの買い方というか。
古市 少なくとも、音だけのものではないですよね。ただ、自分にとってレコードって大事な趣味でもあるんですよ。数を制限しながら集めていくっていう。
平間 どんどん増やすコレクタータイプではないってことですね。
古市 欲しいのはいっぱいあるけどキリがないですからね。決めた量以上は増やさないようにと思ってます。でも、好きなレコードが重量盤で出たりすると買っちゃうんだよね。さっき、音とか気にしないって言ったわりには「やっぱ重量盤いいよね」って(笑)。
――コレクションは床に直置きしていますが、コータローさん流の収納ルールを教えてください。
古市 左から、和モノ、ロック&ポップス、AORとシンガー・ソングライター、右の2列はVIPモノ。それぞれ面出しするのも楽しいよ。集めていい数は、このカーペットの手前のラインまでだね。
――そこが境界線ですか? 和モノはあともう少しでリミットですが。
古市 和モノ、けっこう多いよね。あと15枚くらいは増やせるかな。
――どうしても手に入らないレコードもありますか?
古市 いや、ないかな。ものすごく高いレコードは最初からあきらめてるし。けっこう、欲しいものは集まってますね。ウッチャン(内海利勝)の『DaDa』も見つけたし。このゴールデン・カップスの最後のシングル(『人生は気まぐれ』)は死ぬまで手に入らないと思っていたけれど、プレゼントしてもらいました。あ、欲しいものといえばバリー・ホワイトが欲しいね。
――普段、レコードは毎日聴きますか?
古市 聴きますよ。毎日この部屋でひとりで聴いてます。朝起きてまずパソコン作業しながらとか。夜は酔っ払って帰ってきて、寝っ転がりながら聴くのが最高ですね。
――オーディオ機器云々とか、サウンド云々ではなく、レコードが鳴っている空間がいいんでしょうね。
古市 うん。それが大事だね。でも、自分では意識してなくても、やっぱり音にも惹かれてるんだと思うよ。パソコンでそういう聴き方はしないもんね。どこか心地よさがあるというか、子供の頃から馴染んだものだしさ、体が覚えているはずだから。いいもんですよ、レコードが回ってるのって。
(レコードをかけながら)
・ザ・ローリング・ストーンズ『スルー・ザ・パスト・ダークリー (ビッグ・ヒッツ Vol.2)』
・ディープ・パープル『ライヴ・イン・ジャパン』
平間 やっぱり音に勢いがありますね。
古市 かっこいいですね。これ1972年って、みんなびっくりしたでしょうね。《つづく》